二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケモン不思議のダンジョン「虹色の守護者達」 ( No.48 )
日時: 2010/08/28 16:22
名前: みやっさん ◆E53IZBWzfE (ID: UccMOYif)

07.進歩のアテ<前編>

「で、コイツはどうすんだ?」
ピカチュウは地面を指し、地面に伏したスピアーを見る。
手針もピクリと動かない。所謂「ひんし」というものである。
「あぁ……コイツなら「おとがめ」クラウまで、ここで寝てればいいわ。しばらく目覚めそうにもないし、」
「おとがめ?」
ピカチュウは疑問符を浮かべチコリータに問いてみた。
「いや……何でもないわよ」とチコリータは軽くあしらった。
「そうか……って、お前立てるか?」
ピカチュウはまだ横になっているチコリータを気遣う。
「も、もう大丈……イタッ、」
チコリータは後ろ脚を引きづりながら、よろよろと立ちあがろうとする。
「……やっぱり……ホラ」
ピカチュウは黄色い短い手を差し出した。
チコリータは頬を赤くしプイッと横を向く。
「バッ!? アンタの手を借りなくても——!」
チコリータはくちをもごもごさせ言葉を詰まらす。
「あたし、戦士だし、その、あの、」
「……面倒くさいなぁ」
言うがままにピカチュウは両手を使い、ひょいっとチコリータを持ち上げた。
「!? !! !!」と、チコリータは驚愕を隠しきれなかった。
「言ったろ? お前には守るもんが多いんだ。だから……俺みたいな奴でも頼れって、」
「アンタ……さっきはちゃんとお礼言ったからあれだけど、」
アレがちゃんとなのかね? とピカチュウは内心思った。
と、チコリータは少し間を置き、
「バカなの? アンタが人間だったのは……納得しなきゃいけない事だと思うけど、普通、あんな状況に置かれたら、助けるなんて考え、思いつきもしないわよ」
と、溜息交じりにチコリータは言った。
「……そうだよなぁ。正直、よく分からない」
「ハァ!? やっぱりバカ? 大バカ? ……その話、嘘じゃないんだよね?」
「ああ。人間だったのは確かだ。記憶が、断片的だが、憶えている」
強く、ピカチュウは言う。
「俺は何かのきっかけに……誰に言ったのか分からないけど、守るって誓ったんだ。それは憶えててで、この世界に迷って、お前がやられて、助けていかないとって、色んな事が頭を支配してるんだ……! 許容範囲を超えて、頭がおかしくなりそうだった! でも、そんなきっかけが……お前がやられてる所から言葉が戻るようにじわじわと……それが、「守る」って言葉なんだ!!」
強く強く、ピカチュウの目はにごりなくまっすぐな目でチコリータを見つめる。
「ああ……今になって混乱してるよ! 急に先のことばっかり考えて、俺は……どうすれば……!」
「……」

チコリータはこれ以上水を差すようなことは言えなかった。
しかし、自分と出会い、きっかけを与えてしまった事がいけなかった。と、罪悪感に苛まれる。
彼は真実を知らず、まっさらなまま、この世を全うすれば、彼は幸せだったのかもしれない。
それか、『虹の守護者候補』としての、自分か、それとも、戦士という肩書でもない一般のポケモンに出会った方がよかったかもしれない。
いや、でもこのピカチュウはいずれ真実を知るかもしれない。それだったらどっちみち一緒だろう。
知っても知らなくても、幸せは訪れないのでは……。そう思ってしまった。
チコリータは痛む足からもっと痛いものを、胸から感じた。
一般ポケモン、しかも世間知らずよりタチの悪い、人間だったポケモンを自分のせいで先を見えなくさせてしまったと、負の感情が募るばかりだ。
(あたし……どうすれば……)
今の励みの言葉でも綺麗事、あるいは何の説得にも聞こえないだろう。
そう思うと、たまらなく申し訳ない気持ちを、
(なんで、あたしが、泣きそうなんだ——!!)
自分の弱さがより強くなり、チコリータの気の強さを劣等させた。
「その! ごっ、」
急いで涙をすすり、ピカチュウに何かを言おうとしたとき、
「あ! いたいた! 『虹の守護者候補』様ですね!?」
聞いたことある声、とピカチュウはふと思い、その声が近付くのを感じる。
そして草からもぞっとそれは姿を現した。