二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.22 )
- 日時: 2010/05/02 15:44
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: QYDGIf3B)
【第十話】獣帝妖獅子
「咬み千切れ『獣帝妖獅子』」
その言葉が聞こえたとほぼ同時に一護は驚愕に目を見開いた
「何だよ…お前」
思わず口から言葉が滑り落ちる
今さっきまで周りを巻き込んで押し潰し、破壊してしまいそうだった黒猫の霊圧
同じほどの量でもその密度が暗く重かった
それが、解号を口にした途端一転する
"どこかで感じたことがあるような"慣れ親しんだような霊圧に変わっていた
一瞬誰のものと似ているのかと考えて辿りついた答えに言葉も出ない
どこかで感じたのではなく、"どちらの側にあるのが己の霊圧か分からない"ほどに一護とそっくりの霊圧に変化していたのだ
刀や彼女自身の見た目には何の変化もないが
霊圧だけがまるで一護の霊圧を分け与えたかのように瓜二つ
本人が分からなくなるほどだから無理もない
驚きの表情を浮かべて固まっている一護に黒猫は冷たい刃物のような、獣じみた笑みを向けた
「ほら———ぼぅっとしてると、危ない、危ない」
ハッと一護が我に返った時
黒猫は既に一護の目の前にいた
壁からの一息の跳躍
先程は市丸が止めたが今の彼女を制御できる者はいない
一瞬、手が咬み千切られたかと思った
刀を持っていた方の手首にはしる激痛
声を上げる間もなく
反射で避ける間もなく、小さな人影は離れていく
己の手を見て驚いた
危うく刀を取り落としそうになる
手はなくなってはいなかった
傷一つなく今までと変わらない
刀が変わっていた
気づく間もなく斬月がいなくなっていた
手に持っていたのはどこかで見たことのある刀
顔を上げればさっきと寸分違わぬ位置に黒猫が悠々と立っている
その手に握られているのは黒い刀——『斬月』
それをまるで己の刀であるかのような気楽さで握っている
斬月の方も持ち主が変わったことを気にしてはいないようで——否、"持ち主が変わったことに気づいていない"
「お、お前…斬月に何をした!?」
瞳を怒りに燃やして上にいる少女を睨む
涼しい顔で少女はその視線を受け止めて刀を肩に乗せる
斬月の反応はない、まるですべてを受け入れているようだった
「何をした?簡単なことだ…ただ、刀の持ち主を入れ替えただけ」
フッと微笑を浮かべるその表情は幼女のそれではない
完璧な大人の女の妖しい表情
「今の俺とお前の霊圧は"同一"だ…本物のお前が気づかぬほどに」
言われた言葉に返す言葉がなくて一護は口を堅く噤む
確かに、今現在自分の霊圧と黒猫の霊圧の境界線が分かっていなかった
何処までが自分で、何処までが少女なのか
その疑問を浮かべた頃を見計らったように黒猫は言葉を開始する
「本体のお前が気づかぬことを、刀が気づくはずがあるまい——今のお前のこの刀は、俺をお前だと思っている」
その驚きの言葉に口が開いたまま閉まらない
霊圧とは死神やその他の実態を持たぬ霊において気配そのもの
指紋、声紋などとは比べ物にならぬほどその個人を示すもの
それが一寸の狂いもなく完璧にコピーされてしまったとしたら?
誰も、偽物と本物を暴くことはできない
唖然とする一護を見下ろしながら、黒猫は斬月を一護の前にかざした
「ようするに…俺の刀の能力は鬼道系なのだ——まぁ、俺自身は根っからの直接攻撃型なのだがな」
冷たい嘲笑を浮かべたまま黒猫は斬月を振り上げた
疑問符を浮かべる一護に向けて挑発的な笑みを向ける
「お前の刀は今現在完璧に俺のもの…だからこんなこともできるのさ」
刀を振り上げたままの姿勢でそう思わせぶりな言葉を告げて
振り下ろす一瞬に一言高らかに言い放つ
『月牙天衝』
漆黒の斬撃が一護に迷いなく向かってきた