二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.41 )
- 日時: 2010/05/23 23:00
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: .SNh9hb2)
【第十二話】幕切れは嵐のように
目の前に現れた思わず見惚れてしまうような美しい色違いの双眸
しかしその瞳の奥には己だけに向けられた明らかな殺意が滲んでいて足をすくませる
刀を振り上げることなく目の前の少女は己の牙で息の根を止めようとしていた
首筋に寒気が走り息が止まる
なにも出来ないと悟るのに時間はいらない
一番嫌いな諦めという感情が胸の内に浮かんだその瞬間
「いっちー!!」
「なっ…あぁ!?」
バシンというかガツンというかドカッというか…
それらに近いとにかく痛そうな重い音ともに急に目の前に突如現れた桃色の髪
どこから来たのかも分らないがそこにいたのは紛れもない草鹿やちる———十一番隊副隊長の姿
黒猫はというと
当然のようにやちるの下敷きになっているわけで
痛みに耐えながら気丈にも呻き声すら上げず現在の己の状況を理解しようと奮闘していた
訳が分らない…意味が分らなかった
何故副隊長クラスの人間がここにいるのか
何故親しげにこの男の名前を呼ぶのか
何故自分の復讐が邪魔されるのか
そこで、ふと思い当る
この一見無邪気で無力そうでありながら莫大な能力を秘めた桃色の幼女
彼女がいるということはつまり…
「おい、やちる…勝手に出るなっつったろうが」
地面に伏したまま、なんとか顔をあげると一護の足の間から見えたのは大柄の男の姿
屈強そうな肉体は岩のようで逞しく、揺るぎない
何もしていなくても身に沁みる霊圧の圧迫感
一歩足を出すだけで周りの空気が揺れて軋む
一度瞳を見てしまえば逸らせないような強い力を秘めた鋭い双眸
容赦という言葉を知らないような傲慢とも言える雰囲気
視線一つをとっても憧れを抱かざるを得ないその強さ
一護の背後に現れたのは更木剣八———十一番隊隊長
黒猫が憧れてやまない男
強さをそのまま具現化したような
周りから化け物、獣と言われる男
更木が現れたことにより黒猫の混乱は頂点に達する
「更木、隊長…?どうして、ここ…に」
始めて間近で出会うことができた憧れの男
そんな彼に向けた切れ切れに呟くその小さな言葉は意外にも更木の耳に入ったようで
見つめられただけで身がすくみそうな視線が黒猫を射る
黒猫はさすがに一瞬息を飲み
更木は興味深そうに見下ろしていた
固く結ばれた口元が楽しげに歪むが、それもすぐに消える
黒猫からフイッと顔ごと逸らすとやちるの方を向いた
「やちる…まだ起きてるぞ」
「わかってるってー…えいっ」
ガツン
何をされたかは分らなかったが、痛みだけは感じる
それでも最後まで憎い男に無様な姿は見せまいと悲鳴を噛み殺す
困惑と激痛と意識の忘却の狭間で黒猫は見たような気がした
更木が確かに己を見つめ、心底楽しそうに笑った顔を
それを最後に黒猫の意識はしばし途絶えることになる