二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.45 )
日時: 2010/05/25 22:28
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: HDdiVM53)

【第十三話】幕切れの後日談


「え…えぇー」

完全に地面に伏してしまった黒猫を見下ろしながら一護は思わず呟きを洩らす
その上に何の気負いもなく乗っているやちるに対してのものだった

あんまりだ、それに加えて一体何が起こったんだ

そんな疑問と共に背後の更木を振り向く

「よぉ、一護…なんとか間に合ったみてぇだな」

たった今自分が下した命令に対してなんとも思っていないような
そのことすら忘れているような気軽さで振り向いた一護に声をかける

相変わらずの野獣のような雰囲気に身が竦まずにはいられない
何でこんな奴を倒せたのかいまだに理解に苦しむ
やはり二人で戦っていたからだろうと納得していた

「剣八…何でここに」

振り返ってみれば更木の姿は悲惨なそれ
脇腹や肩など様々なところに傷を負い、羽織も裂けている
それが東仙の卍解とやり合った末の事だとは一護は知らない

一護からの問いに首をかしげながら更木は近づいてきた

「あぁ?何だか知らねーが、お前がやられそうになってたみてぇだからな」

つまりは珍しく周りの霊圧を感じ取り
その中でも窮地に陥っていた一護に助太刀することにしたらしい
今でも彼を倒すのは己だと決めているのだろう

一護の横をすり抜けるとやちるに目で合図をしてその矮躯を退かせる
ひょい、というかかなり無造作に黒猫の体を拾い上げると肩に担いだ
その粗暴な扱いに中々酷い目にあったさすがの一護でも慌てた

「ちょ、剣八っお前もうちょっと丁寧に…」

しかしその言葉も更木の鋭い睨みでぶつ切れになる
眉をひそめながら更木は黒猫の体を視線で指した

「こいつはどうやら多少の事では壊れねぇ頑丈な奴みたいだからな…問題ない」

どこから来るのか分らない断言に一護は呆れかけていた
そんな一護を見て、どうやら心配なさそうだと判断したのか
更木は背中を向けてその場を去ろうとする

その行動を呼びとめたのはやちるだった

「剣ちゃーんどこ行くの?」

それは一護も言いたかった言葉
面倒そうに振り返った更木はやちるを見下ろして口を開く

「こいつを返しに」

「返しにってどこにだよ!」

思わず突っ込んでしまってから後悔する
まるで物のような扱いがよっぽど気に食わなかったのだろう

眉間にしわを寄せている一護に視線を移して更木は微笑を浮かべた
心底楽しんでいるような
狂気じみた獣のような笑みを浮かべた

「こいつは死神だ…ようは俺らがなんとかするって言ってんだよ———どうやら俺はこいつが気に入ったみたいだしな」

更木の言葉にまだ納得がいっていない一護にため息を吐くと更木は顎をしゃくった

「お前はお前のやるべきことに戻れって言ってんだよ」

言われて気づく馬鹿な事
ハッとした表情の一護は今更のように地面に落ちていた斬月を拾い上げる
何故か手放すことができずにいた黒猫の斬魄刀、妖獅子はいつの間にか元の脇差サイズに戻っていた
それを彼女の懐に戻して一護は更木を見据える



「こいつのことは頼んだぜ」



結局はお人よしな死神代行だったとさ