二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ◇ヘタレ色模様◇  【ヘタリア】 ( No.17 )
日時: 2010/05/05 23:02
名前: 柏木その ◆NrQDiBQfmg (ID: ZYR2ZLjZ)

【アイツじゃないと Ⅱ】


ぜはぜはと息を切らす中国を落ち着かせ、とりあえず会議再開。

もはやアメリカはいないものとして、会議再開。



と、そっ、とアメリカが鼻の頭に指を持って行った。


「……………」

そして複雑な表情を浮かべると、そのまま静かに膝に手を下ろす。


(あいつはもういないのに。俺はまた……)

そんな心の声が聞こえて来るようだった。




「……………」

口の端からよだれか何か出そうなくらい、脱力してそれを見やる連合国の視線は、
気づかないのかあえて無視なのかは知らんがとりあえずスルーである。

それがアメリカクオリティ。




「アメリカ君」

「いい、ロシア、もういい。何も言うな」


口を開きかけたロシアをイギリスが制する。



二の舞だ。
これじゃあさっきまでの二回の二の舞だ。

ツッコミたい気持ちは分かるがここは無視が一番無難である。

とりあえず会議を進めるべきだ。




「でもあのさー」

「ロシア」

イギリスが冷静にロシアを遮る。



「いいじゃないか、ロシアにも喋らせてやれよイギリスー」


「うっさい馬鹿。お前は今俺の中では不在設定だ」


「空気読めよイギリスー」

「まさかお前にその台詞を言われる日が来るとは思わなかったな」



あくまでイギリスは冷静に対処。



「そういえばこの前君んち行った時すごくマニアックなエロ本見つけたよ。ベッドの下で。流石に俺もあれは引い」


「人んちで勝手に何しとんじゃコルアアァァ!」


———しきれなかった。




そして、苛立ったイギリスがバン!と立ち上がった拍子に、机の上の紅茶がカップごと中国めがけて飛んだ。

「あっちーある!!」


そして反射的に中国が跳ね返したカップは綺麗な弧を描いて、


ガツン、とフランスの額に収まった。


「ぐはっ!いってえ!何でお兄さんがこんな目に!?」

「ははー日頃の行いじゃね!?」


「お前には言われたくねーよ馬鹿眉毛!」


「うわ、カップはやめろ!危ないだろそれは!」


「あいやー、我の一張羅がびしょびしょあるよ!」


「ちょ、痛い!誰か俺の足踏んでるだろう!」



がしゃんがしゃんと割れる食器に、

飛び散る紅茶の飛沫と罵声に悲鳴。



激しい取っ組み合いに、

舞い散るスコーン。





混沌。





そして


バキッ


一際大きく響いた何かが割れる……というか潰れる音。


ぱっと全員がそちらを振り向けば。




うふふ、と苛立ったように微笑むロシアと、

その手の中に、無残にひしゃげた眼鏡。




「———え、あれ!?それ!それって俺の眼鏡じゃ…!?」


唖然とした空気の中、アメリカがロシアの手の内のものを指さした。


「うん?そうだよ?」

「そうだよって君!」

「昨日見つけて保管して置いたんだけど。でもさ、しょうがないよね?」


そう言って、ロシアはにっこりと笑った。



「誰も僕の話、ちゃんと最後まで聞かないからいけないんだよ?」


ひゅう、と背中が冷えるような視線で言った。


彼の背後に冬将軍か何かがいた。ように見えた。



確かに

この会議中。


あの時も、あの時も、あの時もあの時もあの時も。

ロシアの台詞はいつも途中でぶった切られていた。

ていうか、

ぶったぎっていた。




「「「「な、なんか……」」」」



残りの四人は気をつけの姿勢のまま制止した。



「「「「…すいませんでした」」」」



一番怒らせちゃいけないのは、


アメリカでも、

イギリスでも、

フランスでも、

中国でも、

冬将軍でも何でもなくて、


ロ シ ア だ っ た。




背中を寒くし、顔を蒼くし、身を持って再度それを認識した連合軍。


ロシアは満足げに頷くとそのまま着席した。









ちなみにアメリカは、


後日眼鏡屋に行きました。


(いくら大事なメガネと言っても命には代えられないからさ☆)

一つまた成長したアメリカであった。



*end*