二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ◇ヘタレ色模様◇ 【ヘタリア】 ( No.25 )
- 日時: 2010/05/11 21:53
- 名前: 柏木その ◆NrQDiBQfmg (ID: ZYR2ZLjZ)
【大嫌いな神様に Ⅰ】
いつの間にかあいつは自分の足で歩いていけるようになってて。
いつの間にかあいつの背中は俺よりでかくなってて。
それが
寂しいだなんて
女々しすぎるだろうが、俺。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
妖精やユニコーンがいるのだから、「それ」も存在するのかも知れないが、
見た人なんていないし、神話やお伽噺でしかその存在を聞いたことがない。
俺達みたいな小さな生命体が泣こうが喚こうが祈ろうが何もしてくれやしねぇ。
そんな、
大嫌いな神様。
アンタに一つだけ頼みがある。
俺をこんだけ苦しめたんだ。
この一つくらい、叶えてくれたっていいだろ?
頼むから、もう一度——————
「何でお前がうちにいるんだよ」
イギリスはうんざりした表情で眼前のアメリカに視線を投げた。
「会議の帰りにわざわざ寄ってやったんだぞ。
…というかイギリス、何でそんなにイライラしてるんだい?」
「寄ってくれとか頼んでねーし。つーか誰のせいだよ。刺繍の邪魔だ。帰れ」
ソファに腰掛け、睨みつけてくるイギリスを意に介した様子もなく、
アメリカはうろうろと家の中を歩き回る。
「相変わらず冷たいなー君はー」
言いつつ、勝手知ったる様子で、ガコン、と冷蔵庫を開けて物色し始めるアメリカ。
「勝手に人んちの冷蔵庫開けてんじゃねぇぇぇぇぇ!」
「あ、何だアイスあるじゃないかアイスー。君もたまには気が利くな!」
「だから勝手に食ってんじゃねぇよ!人の話聞いてるか!?」
分かった分かった、と適当な相槌で、アメリカは幸せそうにアイスを頬張った。
本当に、誰だこいつは。
こんなクソ生意気な奴、俺知らない。
あの時「いぎりしゅー」とか「わぁ、また来てくれたんだ!」とか「もう帰っちゃうの?」とか!
可愛い事ばかり言って俺の心を鷲掴みにしていたアメリカは一体何処に行った!?
かむばっく俺の天使!
恨みがましいイギリスの視線は、黙々とアイスを味わうアメリカには届くはずもなく。
「かむばっく俺の天使……」
「あ。そういえばさイギリスー」
イギリスの呟きをさらりと流して、アメリカはくるりと首だけをそちらに向ける。
必然的に、「何だよ!」と口調を荒くしたイギリスの目を見ずに、
さらりとアメリカは言った。
「そういえば俺、今ゴタゴタしてる主導権争い、下りる事にしたんだぞ」
「…………っ」
一瞬、息が止まった。ような気がした。
主導権争い。
今世界規模で問題になってたからそれの事だろう。
それはいい。
アメリカが決めたんならもう何も言う事はない。
ただ、
「そんなの俺、聞いてねぇぞ…?」
初耳だ。
いつ決まったんだよ。
ていうか、相談一つされてねぇ。
「ああ、まだどこにも発表してないからな。不覚にもイギリスが1番最初だぞ」
ははっ、とアメリカが笑う。
しかし、イギリスは、床の一点を見つめたまま顔を上げなかった。
「……イギリス?」
不安げにイギリスを覗き込んだ刹那、
「喰らえブリタニアステッキ!」
バッとイギリスが顔を上げたかと思えば、
次の瞬間、先っちょに星が付いた非常に不愉快な装飾のステッキが、
アメリカの頬すれすれを通り抜けていった。
アメリカの髪が何本かパラリと落ちる。
「……。……は!?ちょ、君何を」
一瞬ポケモン全滅したかというくらい目の前が真っ白になった。
次の一瞬で意識が覚醒した時には、イギリスは非常に素敵な笑顔を浮かべていて。
「うるさい黙れ。イギリス様は今ちょーーっとお怒りだぜ?」
「訳分かんない!いつにも増して訳が分かんないぞイギリス!」
「黙れ馬鹿。お前はいつからそんなんなっちゃったんだ。
自分の足でスタスタ歩いていくようになっちまって!」
「だから!訳が分かんないよ!心底!酒かい?酒でも飲んだのかい!?」
「だから、俺決めた」
「?」
ことごとく人の話を聞かない(アメリカが言えた事じゃないが)イギリスに、
もうアメリカは頭にクエスチョンマークを浮かべるしかない。
「お前をブリタニアマジックで昔のように戻してやる」
それはそれは素敵な笑顔だった。
さっきのなんて非じゃない。
これがかの有名な100万ドルの笑顔ってやつですか?
それはもう背中がぞくぞくする位。目が笑ってないもの。据わってるもの。
その眉毛とのマッチが何とも言えずチャーミングだね、ははっ。
たらり、とアメリカの顔に汗が伝った。