二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ◇ヘタレ極彩色◇  【ヘタリア】 ( No.7 )
日時: 2010/04/24 23:42
名前: 柏木その ◆NrQDiBQfmg (ID: ZYR2ZLjZ)

【おとまりぱーてぃー Ⅱ】


プルルルル プルルルル


家の中、電話の呼出し音が響く。
日本はやっと駆ける足を止めて、廊下に設置してある黒い受話器を取った。

放って置いても良かったのだが、
居間でくつろぐあの二人が取ってしまっても面倒な事になるに決まってる。

「はい、もしもし」

「あっ、チャオ!俺だよ俺!」

受話器の向こうからは聞き慣れた声。

「…イタリア君、ですか…?」

「そーそー俺俺ー」

「ああもう代われイタリア!
 日本では電話ごしに俺を連呼するのは犯罪らしいぞ!」

受話器の向こうにはドイツもいるらしく、もどかしそうな叫びも聞こえてきた。

それはオレオレ詐欺ですよ。

突っ込む前に、バタンバタンと向こう側では受話器を奪い合う音がした。

「ぎゃあ!ちょっ、ドイツ危なっ……ねーねー日本は今何してんのー?」

ドイツの攻撃を避けつつ話しているらしい。イタリアの息は荒かった。

「はぁ…今はちょっとバタバタしてまして…。
 イタリア君達は…?」

「あ、うん。ほら今日、日本元気なかったじゃんかー。
 で、ドイツと電話掛けてみようって話になって」

「…そうだったんですか。ありがとうございます」

心配だったから電話を掛けた。

決して押し付けがましくはないけれど、気遣ってくれているのはありありと分かる、その気持ちが有り難くて、自然と笑みが零れた。

「で、これから日本とドイツと俺で励ましパーティーでもしよーかと思ったんだけど、どうー?」


…パーティー。
思わずその単語に反応してしまう。本日、トラウマになるくらいの頻度で聞いた単語だ。


「えっと、今日同じような理由で中国さんと韓国さんも来てまして」

いや、多分同じなのはパーティーという単語だけで、彼等の意図は全然違うけれど。

「うーん…じゃー俺達も遊びに行っていいかな!」

「ええ、構いませんけど…」

「分かった〜!今からドイツとそっち向かうね!」

そして、チン、と電話が切れる瞬間、


「でも二人とも日本の事よく見てるよね〜。…大事にされてるね。先越されちゃったよー」


イタリアは笑みを含んだ声でそう言った。


「…は?」


それは違う、訂正をいれようとしたが受話器からはもう、プー、という通信切断音のみが聞こえていた。

あの二人は、励ますというよりは、自分達が楽しみに来てるように思うのだけど。

はぁ、とまた溜息を一つ漏らして、日本も静かに受話器を置いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



一方、例の面倒な二人組は、

「兄貴ー、日本の奴戻って来ねぇですねー」

まだ居間を占領していた。


畳に寝そべってジャンプに目を落としている韓国が、何でもないような口調で言った。

「そうあるなー。お前が空気読まないからある。やっぱ一緒に来んじゃなかったあるなー」

対する中国の返答も、バリバリと煎餅を頬張りつつ、興味なさそうな声色だ。


「…兄貴が俺にどうしてもついて来て欲しいって言うから」

「おまっ、言ってねえ!言ってねえあるよ!妙な捏造すんなある!頬赤らめんなある!」



「「……………………」」


暫く無言で見つめ合い、はぁー、と二人の間に溜息が漏れる。


実は結構気にしていた。


「あ゛ー…うまくいかねぇあるね。やっぱこういうのは得意じゃないあるよ」

がしがし、と、中国が前髪を掻き上げた。







二人が、その日の日本の異変に気が付いたのは、会議が終わってすぐの事。

ぼんやりしてると言うか、疲れていると言うか。

案の定スイスに「自分の意見を言え」といつも通り怒鳴られ、「そうですね、早く帰ってニコニコしたいです」と答えた日本の目の死にっぷりと、周りのざわつきったらなかった。



「………………。」



何も言わず、合図もなかったが、計ったように中国と韓国が同時に目を合わせた。


「…むう、何か日本変っすね今日。普通に乳揉めましたし、20回程」

「とりあえず揉むなある。…まあでも、そうあるな」

中国は、溜息を吐きつつ袖口に手を突っ込むと、かつん、と踵を返した。
そのまま静かに会議室を後にする。

「最近あいつの家も、隣人からの弾道ミサイルやら、ハケンギリやら、上司の政権交代やら、いろいろ面倒な事になってるらしいある」


お前もついてくるあるか?
中国はそう言って、にやりと笑って見せて振り返った。

行き先も目的も一切言わなかったが、聞かなくても分かると言わんばかりに、韓国は中国と肩を並べた。


「はーぁ、兄貴も大概甘いですよね」

「馬鹿いうんじゃねぇある。失態を笑いに行ってやるだけあるよ」

「……でも、分かってます。兄貴が一番好きなのは…俺ですよね!」

中国は、しばらくげんなりとした表情で口をつぐんだ後、

「……ノーコメントある」

面倒臭いのでとりあえず1番無難な台詞を返した。


そしてそのままさっさと早足で目的地に向かう。


まぁ本人よりも早く着いてしまったのは想定外だったのだけど。