二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 暴・走! D灰学園 職員募集! ( No.52 )
- 日時: 2011/02/20 20:37
- 名前: クロウ (ID: PJWa8O3u)
第10話『バレンタイン。博愛主義者の暴走の日』
さて、監禁してから三日経ったが、あの人たちはちゃんとおとなしくしているだろうか。
……まさかとは思うけど、要君のクッキーに手ぇつけて泡吹いてはいないよね?
ともかく、昼休みになったら強制的に教室に放り込むんだし、別にいいか。
「……あ、要君。おはよ」
「ん、おはよーさん。で、あいつらの様子どうだったよ?」
「君は見てきてないのか……。じゃあ、龍麻にも聞いてみるか」
僕は腕を組み、少しだけ唸った。
それを見て、要君も僕が彼らの事なんぞ知った事ではないということが解ったらしい。
「……あ、そうだ。要君、これ」
「……これ、なんっていうか、お前、作りすぎじゃねぇ?」
僕が渡した紙袋の中身を見て、要君はため息をついた。
紙袋の中には、ホワイトチョコレートのタルト、たまごボーロ、生チョコレート。
うん、全部自分で作って、それを入れる袋も自分で買ったからね。今月のこづかい大幅につかったさ。
……あれを見たら、当分甘いものは食べたくなくなるだろう。
「お前、これ、誰に配る気だよ」
「全生徒」
「全生徒!? 全生徒にこれ配るのかよ」
「神田君とアレン君にも、昼休みにあげるつもりだよ。この学校、僕が校長だからバレンタインとホワイトデーのお菓子の持ち込みありだし」
僕の言葉を聞き、要君は頭を抱え、深いため息をついた。
「じゃあ、僕はこれ配りに行ってくるから、ね! バーイ」
片手をあげて、全速力で走り去る僕を止めるような声が聞こえたような気がするが、僕はその声を思いっきり無視して、職員室から出て行った。
要君はがっくりとうなだれながら、今日三度目のため息をついた。
しかし、朝から学校を歩きまわる教師って一体どんなのだろうか。
教師は大体固定の教室にいるからわかるとして、ね。
アリス先生は理科実験室にいるし。
フレア先生は教材室にいるし。
魅夜緋先生は……確か、教員が使ってる第二教材室にいるはずだよな。あそこ、武器庫だった気がするけどね。
李先生は生徒会室で仕事してるし、野稚枝先生は家庭科室でチョコレート作ってるし……。
あと、真琴先生は保健室のベッドで丸まってるし。
……でも、龍麻ってどこにいるんだか。
まぁ、解らない奴のことを気にしていても仕方がないか。
とっとと、理科室から保健室まで回ってみますか!
さて、理科室着いたー……けどねぇ。
階段登るときから甘い香りがしたと思ったら、これですか、アリス先生。
「アリス先生、そのビーカーちゃんと薬品使ってないのですよね?」
「うん。いくら私だって、そんな物使わないよぉ!」
「あぁ、それはいいですけど、ね。そのブランデーの瓶ってなんのためにあるんですか?」
「チョコレートを作るためだよ? ほら、お酒の入ったチョコレートってあるでしょ?」
……否定はしませんけどねー。
とりあえず、紙袋渡してさっさと二階に行こう。あの甘い香りで、むなやけが起きそうだし。
神田君、お酒のチョコレート渡されるんだねー……。
「……うっわー……」
第二教材室にて。なんか酷い有様じゃない? なにこれ、要君の使ってるハサミがいっぱい置いてある。
しかも、刀に赤っぽいさびがあるんですが。軽くホラー的なんですが。
「おっ、クロウ……もとい、校長」
「いや、クロウでいいけど……。ところで、ね。君のその手に乗ってるのはなに?」
「なにって、銃ではないのか?」
「いや、違わないけどね。それ、龍麻が時々ぶっ放してるタクティカル何とかだよねー……?」
「悪いか?」
いや、悪くはないけどね?
……とりあえず、危険人物もとい歴史教師の頭に紙袋乗っけてきた。あの人、いつクビになってもおかしくない。そう信じてる。
さて、教材室に着きましたが……。
フレア先生、いた。でも、なんでかわからないけど寝てた。背中に毛布掛けてあった。
おい、昨日からそこで寝てたとかじゃないよな!?
とりあえず、話しかけられる気がしなかったので、フレア先生の突っ伏してる机に紙袋置いてきた。
……起きたら、甘いでも嗅いでむなやけ起こせ。
家庭科室。なんかガスの臭いがした。
ドア開けたら、紫色の煙が漏れた。うん、何これ。
「あ、クロウ……さん……」
いや、その可愛らしい挨拶しながら作ってるもんなんですか? 要君のよかいいですけど、それ食べたらヤバげな香りがする。きな臭い。
……まぁ、この人のことだから、作り終えたらみためなんてどうにでもなるだろうけど。
とりあえず、この部屋に長居したくなかったから、できるだけ早く紙袋渡して帰りました。もう、ドアを壊す勢いで。
……廊下の空気、うめぇ。
「……なんか、あなた、相当疲れてません?」
「ははは、わかるかい? 李先生、この世には、嗅いだだけで疲れるにおいってもんがあるんですよ」
「……はぁ」
李先生は少しワケが解らなそうな顔をして、また仕事に取り掛かった。
僕はゼイゼイと息を切らし、胸に手をあてた。
「あ、そうだ……。李先生、これ、バレンタインのチョコレート。疲れを取るために……」
「あの、それよりあなたの疲れを取った方が……」
先生の言葉は最後まで聞かずに、保健室まで歩いて行った。
李先生はいいねぇ、問題さえ起こさなければちゃんと普通に対応してくれるから。
……ここにはまともって言えない人がいっぱいいるからね。
「……先生、冬眠してはいないよね」
そうつぶやくと、保健室のベッドの上の、白い饅頭みたいなのがぶるぶると小刻みに震えた。
このまんじゅうみたいなのが、真琴先生だろうね。なにこれ、布団がまんじゅうのお餅みたいなんですけど。
「……あの、チョコレート、ここに置いておきますよ?」
僕がそう言ってベッドの上に紙袋を置くと、真琴先生は素早く手を伸ばし、紙袋を掴んだ。
うわぁ、残像しか見えない。めっさ怖い。
……なんか、まだ朝なのに、ものすごく疲れた。
多分、あの甘いにおいと紫の煙のせいだ。そうにきまってる。
「……僕も、少しベッド借りて行きますね」
僕はそう言って、ベッドの隣にある本棚に残りの紙袋を置いて、白い布団の中にもぐりこんだ。