二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

イナズマイレブン -帝国佐久間、世宇子アフロディメイン ( No.4 )
日時: 2010/04/27 20:56
名前: くぁーつ (ID: WPWjN3c4)

敗者同士で馴れ合えってか? ふざけんな。
 (別にふざけてなんかいないさ。僕らはいたって真面目だよ)


 【 彼らの結末 】



「なんのようだエセ天使」

 目の前に自らをここに呼び出した人物を見つけ、佐久間は躊躇うことなく言葉をぶつけた。
 呼び出した人物——エセ天使もといアフロディは、こつこつと足音を響かせながら佐久間の元へと歩み寄る。
 ふんわりとした笑みを口元だけに貼り付け、金色じみたクリーム色の髪を揺らしながら、歩く。
 ゆったりとしたその歩き方には、けれどどこか不自然だった。ぎこちない、とでもいうような。

「エセ天使とは酷い言い方だね。それに僕は天使では無くて“神”だったはずだけど?」
「ハッ、地面に堕ちてのたうちまわった翼のもげた神様がよく言うぜ」

 アフロディの言葉に、明らかに不愉快な表情のまま、佐久間がぶっきらぼうに返す。
 佐久間の言葉を聞いても、アフロディが怒ろうとはしなかった。むしろ、どこか気持ちを和らげたようだった。

「地に堕ちたから天使なのかい? ……まぁ、それは別に良いよ。まだ“天使”って位にいるようだからね」

 ふふっ、と軽く笑い声を口の端から零しながら、佐久間に向けて言い放つ。
 むすっと表情を一層曇らせながら、佐久間がキッとアフロディを睨みつけた。

「……なんだい?」
「なんで俺をここに呼び出した」

 アフロディの問いかけに、佐久間が間を空けずに答える。
 どこか怒りのようなものが込められた、それでいて無感情を連想させる佐久間の声。
 
「なんでだと思う?」
「いいから答えろ」

 余裕な様子でアフロディが尋ねるが、佐久間に一蹴される。
 困ったような表情をアフロディが一瞬浮かべたのち、佐久間が力強く言い放った。


「——答えろっつってんだッ!」


 先程まで無感情だった声には、明らかに尋常でない怒りが込められていた。
 アフロディは怯んだように一瞬体を震わせたが、すぐに余裕のある笑みを顔に広げる。
 ひたすらに怒りの込めた鋭い佐久間の睨みを受け流しながら、アフロディはぽつぽつと呟くように言った。

「……答えて、君はどうするんだい?」
「……っ?」

 予想しなかったアフロディの返答に、佐久間が一瞬言葉に詰まる。 
 アフロディはその時がチャンスとでも言わんばかりに、次々と言葉を浴びせていく。

「僕が今から言おうとしていることは、きっと君にとってはとても屈辱的なことだろうね。僕にとっても、だけど」
「——」
「恐らく君は怒るか僕“ら”を嘲笑うだろう。別にそれでも良い。……答えてあげようか?」
「——……」

 あまりにも余裕な様子で淡々と語るアフロディに、佐久間は何も言わない。否、言えない。
 アフロディの目元が、歪んだ。笑った。綺麗な綺麗な笑みを浮かべて、笑った。微かに笑い声を零しながら、笑った。
 
 そして、言った。


帝国学園きみたち世宇子中ぼくらと組まないか?」


 あまりにも、自然に。淡々と、ただそれだけ告げた。
 佐久間の瞳が、見開かれる。信じられないものを見ているかのような、そんな瞳。
 佐久間の口が、ぱくぱくと動く。魚のように、ぱくぱくと。けれど、声は発されない。発せない。

「信じられないかい? それもそうだろうね。僕らは、君達をさんざん痛めつけたんだから」

 アフロディの笑みが、自虐的な笑みに変わる。
 その時、やっと出た佐久間の声はがらがらと掠れていた。


「——ふざ……けんな」


 たった、それだけ。それだけの言葉が、吐き出された。
 愛媛県の埠頭——かつて真・帝国学園があった場所に、佐久間の声は寂しく長く響き渡った。


(つづきます)