二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: テニプリ“You are loved”オリキャラ募集!! ( No.19 )
- 日時: 2010/05/04 15:54
- 名前: 夜琉 ◆nFgGo2zKeY (ID: CUrDDjil)
- 参照: http://d.hatena.ne.jp/my-reborn/
参話 「傷跡」
「は……? トラウマ?」(昧)
「そうは見えないでしょう?」(麗)
麗が、表情を変えず昧に言う。
昧はその後、ものを言おうとしない。
ただ、シンッと静まり返っているだけだった。
「そのトラウマが、ここに転校してきた理由も関係してるんだよ」(麗)
「何、よ。言いなさいよ」(昧)
昧が、偉そうに麗に言う。
麗は「いいよ」、とでも言うように頷いた。
そして、その“トラウマ”を話し出した。
「一週間前まではさ、テニスやってたんだよ。毎日、毎日——……」(麗)
—————麗side—————
小さい頃の私は、いつもいつもテニスをしていた。
これでもか、ってほどに。
そのおかげで、12歳以下の部門ではいつも優勝。
6連続大会優勝したことだってあった。
お母さんは、プロ中のプロで「最強の女」とまでも言われるプレイヤーだった。
お父さんは、テニス関係の仕事についていて、テニスの大会の主催者(責任者)だった。
私は、玩具なんかに興味なかったし、一番最初に渡されたってのが、“ラケット”と“テニスボール”だった。
「……どうせ、こうやってうつんでしょぉ?」(麗)
「おっ! 当たr——……」(父)
その時にはもう、高速サーブは出来るようになっていた。
“親の七光り”とか言うのかな?
元々、テニスの才能はあった。
母さんに教えてもらった技は、すぐに出来るようになった。
「まぁ、今のは関係ないかもだけど」(麗)
『続きを聞かせろよ!』
まぁ、本題が次からなわけで。
私が入ったのは、山吹中だった。
あの、恐るべし阿久津が居る。
そこで私は、必死に頑張った。
レギュラーになるために、必死に。
だけど、ある暴行事件に、私は巻き込まれた。
——————————
すると、麗が前髪をかきあげた。
隠れていた左目が、明かされる。
その左目の目蓋から、左目下にかけて一つの深い傷があった。
『え……』
「これが、トラウマ」(麗)
目にある傷が、痛々しくて目に焼きつく。
もし、自分がこんな目にあっていれば。
そんなことを考えるだけで、鳥肌が立つ。
「これは、阿久津にやられた傷。やられた理由は——……」(麗)
部員達の喉がなる。
麗は大きく深呼吸をして言った。
「“テニスの実力”。私の実力が甘かったのか、それとも良いから妬んでやったのかは知らないけど」(麗)
麗が、冷静に言う。
周りの皆は、顔を青ざめて麗の傷を見ているというのに。
そんな皆を見ていても、麗の理性は保たれたままだ。
だけど、そんな麗の表情は、穏やかではなかった。
「つまり、怖いんだよ。テニスが。テニスをやっている自分が」(麗)
麗が荷物を持って、テニスコートを出ようとする。
そんな麗の目は、弱弱しい目をしていた。
テニスをやること、テニスを見ることでさえもを、脅えてでもいるように。
その目から感じられること。
それは、たった一つのこと。
そう、テニスへの“恐怖感”だけ。
「とにかく、私にテニスを近づけないでください」(麗)
それだけ言って、テニスコートを去ろうとする。
そんな麗を、ある言葉で止めた人物が居た。
その人物というのが、越前リョーマであった。
「自分でテニス遠ざけてどうすんの? 好きなんでしょ、テニス。試合に出てるよ。好きかどうかなんて」(リョーマ)
「どうでもいいよ。そんなこと」(麗)
リョーマがまた、ふと笑う。
麗も、それを見て笑い返す。
二人の性格が、似ているからなのか。
「普通逆じゃん。“復讐のために”やりなよ。自分のために」(リョーマ)
「!……、考えた事なかったよ」(麗)
確かに、リョーマが言っていることは正しい。
その事は麗も思っていた。
“復讐のために”ということ。
でも、リョーマに言われてやっと分かったこともあるようで。
「そうだね。そのこと、考えたことあったけど。一石二鳥になるんだ。それって」(麗)
「?……どういうこと?」(リョーマ)
リョーマも、そういう意味で言ったのではないみたいだ。
しかし、麗はお構いなしに続ける。
「阿久津への復讐と同時に、それは両親への復讐にもなる……。ありがとう越前。私、入部するよ」(麗)
麗がニヤッと笑う。
その場には、その笑みだけが残った。
その日はやらないのか、麗は去っていった。