二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘— ( No.25 )
日時: 2010/05/19 17:29
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: MnGilHyY)

 誰もが、私を同じ目で見る。あの目で。
一番信頼できるはずの、母親だって、そうじゃない——?

     第8話 「逃げ出す少女」

 少女が病室へと運び込まれ、エドワードとアルフォンスも共に病室に入った。
 医者が去って行き、エドワードは近くにあった椅子に座りこんだ。

「ったく! なんでオレ達がこんな事しなきゃいけねぇんだよ! 大佐がいても良いじゃねぇかよ!!」

「大佐さんも仕事が忙しんだよ。それなのに、無理して抜けてきたんだろうね。御苦労さまだね」

 アルフォンスが尊敬する様に言うと、エドワードは舌打ちをして、眠っている少女の顔を見た。
 更に間近で見ようと、立ち上がり、少女に近づいた。

「な、何してるのさ兄さん!!」

 エドワードはアルフォンスの方を見て、少女の顔を指さした。
 アルフォンスも立ち上がり、エドワードの指の方向を見ると、小さく小さく錬成陣が描かれていた。

「これが大佐さんの言ってた、真実の錬金術師さんだよね。それにこれが錬成陣。小さく描きこまれてるね」

 エドワードは指さすのをやめ、元の椅子に戻ると、マスタングの言い様を思い出し、また不思議そうに首をかしげた。
 アルフォンスは少女にしっかりと布団をかけてあげ、席に戻った。

「……大佐さん、この子が可哀想って言ってたよね。何が可哀想なのかな……?」

「さーぁな」

 エドワードが言った時、病室のドアが勢いよく開いた。
 そこには、少女と同じ色の髪で、目は黄色、体はほっそりとしていて、若い女性だ。
 服は、胸元にレースがついていて、ボタン留めの服で、下は薄緑色のロングスカートに、青いヒールをはいた女性が、息を切らせながら立っていた。

「……レン……。あら、貴方達は……どうも、お世話になって、ありがとうございました」

 どうやら、少女の母親らしい。

「……別に……どうってことないですよ」

 エドワードがしらっというが、女性はエドワードを失礼なほどに無視して、冷たく少女を見た。
 そして、呟いた。

「そうやって……目を閉じている方がいいわよね。皆から……恐れられないのだから……。貴女は……見えてしまうものね」

 女性は、そっと少女の髪をなでた。
 エドワードとアルフォンスは、それを見つめていた。女性は悲しそうに少女を見つめる。

「貴方達も……所詮、同じでしょうね……」

「……は?」

 女性は顔をあげ、エドワードとアルフォンスを見つめた。エドワードは面倒くさそうに聞き返す。
 アルフォンスは、兄さん、と軽く注意した。

「……それ以上、言わなくていいよ」

 ポソリ、と声がした。エドワードとアルフォンス、それに女性は声のした方を見た。
 するとそこには、少女がはっきりと目を開け、女性をキッと睨むように見ていた。

「……レン……。大丈夫?」

「……何が、大丈夫、よ。本当はそんな事……そんなこと思ってもないくせに!! 自分の真実を見られませんようにって、ただただ必死なだけのくせにっ!!」

 少女は、女性をつきとばすと、ベッドを下りた。
 そしてそのまま、かけだそうとしたが、エドワードがそれを止めた。

「おい、お前何言ってんだよ! ちょっと落ちつけって!」

「離してよっ!! どうせ真実を見られない様に必死なくせに!! 必死な……くせにっ……」

 少女は泣き崩れた。エドワードは茫然と少女を見つめた。 
 女性は自分の腕を強くつかみながら、少女を見ている。

「チビは……チビなりにおとなしくしといてよっ!!」

 エドワードを強く突き飛ばすと、走って病室を出て行った。
 だが、エドワードはすでに我を半分失っていた。

「誰が……豆粒ドチビかーっ!!」

 禁句発言に強く反応していた。アルフォンスがそれを止める。
 女性は、俯いていた。

「何なんだよ、あいつ!」

「それより兄さん、あの子、追いかけなきゃ! まだ完全に体力復活してないんだよ!?」

「うおっと! そうだった!」

 エドワードとアルフォンスは、走り出す。
 しかし、アルフォンスは振り返って女性を見た。

「あの女の子のお母さん……ですよね! 少し、入院しなきゃいけないらしいから、手続きに行って下さい! あの子はボク達がなんとかしますから!」

 アルフォンスはそう言うと、扉を強く閉めた。
 後に残された女性は、その場にただただ、立ちすくんでいた。
 〜つづく〜