二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘— ( No.27 )
日時: 2010/05/19 17:31
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: MnGilHyY)

さっきも、真実が見えたから——。
あれ? でも……あの子たちの真実、見てなかったな——。
    
      第9話 「その中に見えた物」

 少女が病院を抜け出した、というのは、病院内に即伝わった。
エドワードとアルフォンスは、ガヤガヤと騒がしい人たちの中を通り抜け、外に出た。
 
 少女の姿はすでになく、手遅れ状態だった。

「あんの野郎……オレに向かって失礼な発言しやがって……。アル! とっとと探すぞぉッ!!」

「兄さん。あの女の子探す理由、ずれていってない?」

 アルフォンスはため息をつきながら、走り出したエドワードについて走り出す。
 ずっと走っていてもらちがあかないので、周りの人たちに聞き込みをしながら走る事にした。

「病院服着た女の子? あぁ、見たよ。誰もいない、あの空地方向に向かって行ったよ」

「そうですか! って兄さん!!」

 歩いていたおばさんに話を聞くと、エドワードはアルフォンスを置いて速攻で走り始めた。
 アルフォンスは顔に手を当て、ため息をつくと、おばさんにお礼を言い、エドワードを追いかけはじめた。

「兄さん! 待ってよ! やっぱり兄さん、あの子探す理由ずれてるって!!」

「しーるかぁぁぁッッ!! オレに対して失礼な事を言いやがった、刑罰しに行くんじゃーっっ!!」

「だから完璧に理由ずれてるってーっっ!!」

 先程病院で、『チビ』と言われた事に、エドワードは猛烈に腹を立てているらしい。
の為エドワードは、あの少女に殴りこみしに行く気が見えている。

「って言うか兄さん、さっきの強盗の時、兄さん助けてもらってたじゃないか!!」

「オレは助けてくれなんて言った覚えは、ねーっっ!!」

 猛烈な怒りをぶつけながらも、エドワードとアルフォンスは空き地を目指す。
 曲がり角を曲がったところで空き地が見え、エドワードはさらに走る速度<スピード>をあげた。

 そして、空き地に入ろうとした瞬間——、
「うおぉっっ!?」

 ドシーンッ、と鈍い音があたりに響いた。
エドワードが空き地に入ろうとした瞬間、巨大な石がエドワードの足元を襲ったのだ。
 その衝撃で、エドワードは馬鹿かというほどおもいっきりこけたのだった。

「だ、大丈夫兄さん!」

「って〜……。何、石を転がしてくれてんだ、てめぇ!!」

 エドワードは怒りが丸見えの声で、顔をあげて怒鳴った。
 そこには、エドワードとアルフォンスが探していた少女が立っていた。

「だって……何か来る気配がしたものですから……あまりにも小さい物だと思って、その巨大な石だったら、小さいのは即押しつぶせるだろうと思って……」

「んだとゴラァッ!!」

 またまた少女は、小さい、という言葉を口にしてしまった。
 エドワードはさらに怒ってしまい、アルフォンスがそれをなだめる。

「ったく……。おい! とっとと病院帰るぞ! お前のお母さんも待ってるぞ!」

 エドワードが言った瞬間、少女の目つきが変わった。

「……いやいや私を病院に見に来たって言うのに……?」

「……は? お前、何言ってんだ?」

 少女は俯き、拳を握りしめた。怒っているのか、体全体が震えている。
 エドワードはため息をついた。少女は顔を上げる。

「何で……ため息ついてるの……?」

「疲れたから。ったく、お前なぁ、そんな母親いると思うのか?」

 エドワードが言った瞬間、少女の目元が輝いた。
目元に描かれている錬成陣が、輝いているのだろう。

「なっ、なんだっ!?」

「……真実。あの人は……私の事が嫌いなの……。人の真実……自分の真実を、見られるからって」

 少女は、エドワードの後ろに立っているアルフォンスを見つめた。
アルフォンスは、息をのんだ。

 アルフォンスには、様々な映像が見えてくる。
世界が滅びていく映像、悪らしきものが、光を浴びて、力が上がっているらしき映像、軍人が町の住人達を、殺している映像——。

 そして、緑色の髪の少女が、周りの人たちから避けられ、ヒソヒソと何かを言われている映像——。

「なっ、なんだよ、これ……」

「? アル?」

 エドワードは不思議に思い、アルフォンスを見、そして少女を見た。
 少女はまだ、アルフォンスを見つめている。それが分かった瞬間、エドワードの目の色が変わった。

「お前、アルに何しやがった!!」

「真実を……見せただけ……」

 少女はエドワードの右腕を見つめ始めた。
エドワードははっとなり、少女を睨み返した。

「その右腕……元に戻してあげられるよ……」

 少女がポソリとつぶやいた言葉に、エドワードは息をのんだ。

「い、ま……なん、て……」

「その機械鎧<オートメイル>の右腕、元に戻してあげられるよって。生身の右腕に」

 エドワードは目を大きくして、自分の右腕と左足を見つめ、そしてアルフォンスを見つめた。
 少女も、アルフォンスを見つめ、エドワードがなぜアルフォンスを見つめているのかが読めた。

「……その鎧さんも、元に戻せるよ」

 アルフォンスとエドワードは、茫然と少女を見つめたのだった。
  〜つづく〜