二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘—  ( No.48 )
日時: 2010/05/19 17:39
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: MnGilHyY)

行かないで——。
そう思ったから、君達を止めた。

     第14話 「エドとアルと、母親と」

 レンを病室へと運び、母親のマレアがレンの服を着替えさせ、しっかりと寝かせた。
 さすがにレンはマレアに反抗したが、暴力は振るったりしなかった。

「着替え、終わったよ」

 その声が聞こえると、部屋の前で待っていたエドワードとアルフォンスは部屋に入った。
 そこには、髪をおろしてまさにマレアそっくりだと言えるレンの姿があった。

「レン。お前、本当マレアさんそっくりだな」

「……エド。もう1回言ったら、怒るよ」

 レンはそう言うと、隣にいるマレアを睨みつけた。
 マレアは弱々しく微笑んだ。エドワードも苦笑する。

「じゃあ兄さん、そろそろ帰ろうか」

「そうだな。じゃあな、レン」

 エドワードとアルフォンスはベッドを離れようとした——が、離れられなかった。
 レンが、エドワードの着ているコートの、フラメルの十字架が描かれている部分を、強く握った。

「……行かないで。……1人にしないで……」

 とてつもなく声が震えている。俯いているので表情が分からない。
 エドワードとアルフォンスは、顔を見合わせた。マレアはフゥ、とため息をつく。

「レン。だめよ。エドワード君と、アルフォンス君にも用事はあるんだから」

「うるさいうるさいうるさいっっ!! どうせ……帰っちゃうんだ……あんたも……。……お母さん……」

 レンは毛布に顔をうずめた。エドワードとアルフォンスは、レンがあんなに嫌っていたマレアの事を、お母さん、と呼んだ事に驚いた。
 それはマレアも同じらしい。それでも、レンの髪を優しくなでた。

「レン。オレ達、また来るよ。だから、マレアさんと一緒にいろよな」

「……うん。絶対に来てね……。明日、待ってるね」

 エドワードとアルフォンスは、静かに病室を出た。

そして、病室の中から、マレアとレンの笑い声が聞こえた時、エドワードとアルフォンスはもう、外に出ていた。
  〜つづく〜