二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘—  ( No.54 )
日時: 2010/05/19 21:08
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: .Yxnjz12)

 そんな存在だから認めたのかもしれないよ。
そんな事をまっすぐに言ってくれる、2人だから。

      第16話 「信じる」

「そんなを君達は言うからこそ、彼女は君達を信じたのかもしれないな」

 ロイが少しため息交じりに言う。エドワードとアルフォンスは、え、と言った。
 その時部屋の扉が開き、ホークアイがエドワード用のオレンジジュースを持って、入ってきた。
それを机の上に静かに置くと、そそくさと立ち去って行く。

「彼女は、マレアにこう言ったそうだよ。もう1度信じてみるよ。エドとアルを、とね。マレアも驚いたらしいがね。君達も、彼女を信じるのか?」

 エドワードとアルフォンスは、顔を見合わせた。
そして、首を縦に思いっきりおろし、大きくうなずいた。

「当たり前だ」

「……彼女は、優しいだろう?」

 いきなりのしつもんにエドワードとアルフォンスは驚く。
 だが、それは一瞬の出来事だ。エドワードはケッ、と言った。

「優しくねぇ奴なんて、この世にいないんじゃないのか?」

「……そうかもな。彼女は、君達の過去を見たが、何も言わなかったのだろう?」

 そういえば、とエドワードとアルフォンスは思い返した。
 逆に謝られたのだ。勝手に過去を見て悪い、と。

「あぁ……何も、言ってこなかった」

 エドワードはかすかに微笑んだ。ロイも鼻で笑った。

「そういえば聞きたいんだけど。レンとマレアさんの父親は……?」

「……イシュヴァールの内乱で……逝ってしまったらしい……」

 その場の空気が重くなり、長い沈黙が続く。それを切ったのは、アルフォンスだ。

「巻き込まれてしまったんですね……。それとも、軍人だったんですか?」

「あぁ、そうだ。国家錬金術師で、内乱に参加していた。戦死した、と言った方が良かったか? 彼の錬金術は、娘と同じで、真実だった。能力も高く、かなり周りから期待されていたんだがね……」

「レンと、父親の二つ名は同じなのか」

「あぁ。彼、ディズ・アードは、私達にとても親切にしてくれたよ。人の真実を見たりして、その後の予言などもしてくれたしね」

 ロイは目を細め、遠くを見るような眼差しで宙を見た。その顔は笑顔がこぼれていた。
 
「って事は……マレアさん、不倫?」

「おいおい。言っただろう? マレアは私を好いてくれなかった、とね。あの人を裏切る事は出来ないと言って、断られたのさ」

 大きくため息をついてロイが言うと、エドワードはニヤリと無気味に笑った。
 アルフォンスがその笑顔を見て、うわ〜、と呟いた。

「おっと。私はこれから仕事があるのでね。君達も早く戻りたまえ」

 ロイは立ち上がり、扉の方へと歩く。エドワードとアルフォンスは、ロイを見つめていた。
 ロイは出る前に、エドワードとアルフォンスの方をもう1度振り向くと、真剣な表情で言った。

「君達に限ってそんな事はないと思うがね……彼女の力を使って、元の体に戻ろう、と考えた事はないだろうね」

 そう言うと扉を開け、静かに閉めて出て行った。
しばらくの間、部屋には沈黙があった。そこをエドワードとアルフォンスは考えていたのだ。

「アル。……お前は……」

「兄さん。僕は、人を犠牲にしてまで元の体に戻りたくないよ。そんなの、人を犠牲にして作った賢者の石を利用しているのと同じような物だから。僕は、これから先の旅を信じて行く」

 アルフォンスは力強く言った。エドワードも安心したようで、大きくうなずいた。

「さてとアル。帰るか」

「うん」

 〜つづく〜