二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘— ( No.6 )
日時: 2010/06/11 16:30
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: pibIqQxN)

 軍の狗は、狗。錬金術師は、錬金術師。一般人は、一般人。
人、それぞれなんだよ——。

       第2話 「少女」

「そ、その子供<ガキ>、潰せ!!」

 強盗たちの中の、リーダーらしき人物が、周りの男達に命令した。エドワードは頭をかく。

「どうするの兄さん。ここでは、錬金術使っちゃだめだよ?」

「わかってるっての。オレも悩んでるんだよ」

「……右に一歩」

 エドワードとアルフォンスが話していると、横からポソリと声が聞こえてきた。エドワードは、横を見る。

 そこには、緑髪の横結びの髪に黄色い目の少女がいた。
黒いシャツを着て、その上に白いカーディガンを羽織って、青い長めのズボンをはいている。
 エドワードと同じように食事を続けていた。そして、エドワードの視線に気づき、エドワードの顔を見た。

「……右に一歩、左に二歩」

「? なんだよ、それ」

 エドワードが不思議そうな顔をして聞くと、少女はニコッと微笑んだ。そしてエドワードは気づく。
 その少女の両目の目元に、よく見なければわからないほどの大きさで、見た事のない錬成陣が描かれていた。

「おい、お前の目元に描かれているの——」

「私が言ったとおりに、動いてください。ほら、来ますよ」

 少女が言った瞬間、パンッと銃がうたれる音がした。エドワードは男達の方を向き、少女に言われたとおりに、素早く右に一歩動いた。
 すると、どうだろう。あっさりと弾をよけられた。続けて撃ってきたとき、エドワードは左に二歩動いた。
 また、あっさりとよけられた。

「クソ! なんでだ! 撃て撃て撃て! あの子供<ガキ>を休ませるな!」

 弾が次々と撃たれてくる。また、少女の声。

「下にしゃがみ、手を合わせ、軽く錬成。槍を錬成し、それで強盗に立ち向かう」

「なっ! てめぇ、なんでオレが手を合わせるだけの錬成だとか、錬金術がつかえるって、知ってんだ!?」

「いいから行ってください。さもないと、あたりますよ?」

 少女が言った瞬間、エドワードの頬にチリッと掠り傷が出来た。弾が軽く、頬に当たったのだ。

「ちっ……後で、教えてもらうからな!」

 エドワードはそう言うと、下にしゃがみ、手を合わせ、槍を錬成した。立ち上がりながら、それをひっぱりあげる。
 後ろでは、アルフォンスがため息をついているのがエドワードの耳に聞こえた。

「クソッ! 錬金術を使いやがって! 動くな! この女、撃つぞ!!」

 男が、人質にとられている女性の頭に、強く銃口を突き付けた。

「おいてめぇ! 逆効果じゃねぇか!!」

「……あの人は、撃てない。あの女の人を……。だって、それが真実なんだもん……」

「……は?」

 エドワードが聞き返した瞬間、少女がたちあがった。男の体がビクッとなる。その姿を見て、だ。

「お、お前は……!」

「それ以上は、言わなくてもいいですよ。分かりますから。それに……貴方はその人を撃てない。だって、もともと人を撃った事、ないんですよね?」

 少女が笑って言った瞬間、男の顔が青ざめた。

「だけど……少し、やりすぎですよね」

 少女は笑うと、エドワードの持っていた槍を奪い取り、そのまま男に向かって歩いて行く。

「く、くるな……っ! 撃つぞ! くるなーっ!!」

 パーンッッ、という銃声が、店の外まで聞こえていた。
  〜つづく〜