二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘—  オリキャラ募集中! ( No.88 )
日時: 2010/06/09 20:54
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: g2/uP3Bc)

 ——無理しなくていい。全部吐き出せばいい。
そんな悲しい事を、たった1人だけで背負っていかなくてもいいから——。

      第24話 「雫」

「……マレアさん。ちょっと、勝手にレンの部屋行ってもいいかな」

「……えぇ。いいわよ」

 エドワードはうなずくと、部屋を出た。そして、レンの部屋の前に立つ。すると、レンの声が聞こえてきた。

「……私は……もう、1人なのかな……。お父さん……っ?」

 エドワードはその呟きを聞いて一瞬ためらったが、しっかりと扉をたたいた。すると、レンの明るい声が返ってきた。
 エドワードはゆっくりと扉を開け、中に入る。そこには、目が真っ赤に腫れたレンがいた。泣いてはいない。慌てて涙をぬぐったのだろう。

「ど、どうしたの、エド……?」

「……なんで、他人を頼らないんだ?」

 エドワードの言葉に、レンは目を見開く。そして、微かに身体を震わせた。

「そんな事ないよっ! 私はエドの事頼っているし——」

「なんで全部自分で抱えてんだよ! 泣くのも自分の部屋で、オレ達には一切涙を見せねぇ! 母親にだって! 自分だけで抱え込んでんじゃねぇよっ!」

 レンの言葉が終わる前に、少し怒声のまじった声でエドワードが言うと、レンは顔をゆがませた。
 エドワードの顔は、せつなさに満ちあふれていた。レンの苦しみ。悲しみ。それを1人で抱え込んでしまうレンは、どこかで見た姿を思い浮かばせたのだ。

「だって! だってお父さんもいなくなって……お母さんも私から離れた! そんな時……そんな時、私は誰に頼ればよかったの……? お父さんがっ! お父さんがっ……! お父さんがいたら、きっと私を励ましてくれた! 私だって頼れた! でも……何もない」

 レンは自分の両手を見つめながら言った。エドワードはベッドに座りこんでいるレンに近づくと、レンの手を優しく掴んだ。レンは顔を上げる。
 エドワードは、俯きながら言った。

「今は……オレ達がいる……。1人じゃねぇ……。レン、大丈夫だ……。オレやアル、マレアさんは……一生お前から逃げていかない……。だから……信じてくれ……。お前の親父さんのようには、死なない。お前は、親父さんの分まで、生きればいいんじゃないのか……?」

「っ……! お父さん……お父さんっ……! お父さぁぁぁんっっ! うわぁぁぁぁっ!!」

 レンは泣き叫んだ。今まで誰にもこの気持ちをさらけ出すことができなくて、苦しんでいたレン。エドワードは、なぜ自分がこんなにも柄にない事をしているのか、分からなかった。
 だが、今分かった。幼馴染の、ウィンリィに似ている。父をうしない、母もいなくなった。1人でそれをためこんで、今、泣き叫んでいる。

 幼馴染のウィンリィも、同じような事があった。
 レンは、エドワードのコートに顔をうずめながら、泣き叫んでいる。ウィンリィと同じだ。

「……お前は、何も悪くないんだ。だから、頼む……。人を頼って……自分だけで、抱え込まないでくれ……」

「うわぁぁぁぁっっ!! っく……ひっ……」

「お前のその目は……人々に絶望を与える目なんかじゃない。使い方……いや、お前の能力は、人々に希望を……光を与える目なんだ」

 エドワードは、レンの涙が枯れるまでそばにいてやった。
 ——優しいまなざしで、レンを見つめながら——。

   〜つづく〜