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Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編—【第九訓up】 ( No.143 )
日時: 2010/11/06 14:44
名前: 李逗 ◆Dy9pHDxQUs (ID: MQ1NqBYl)

〈特別編〉
       居待月(前編)


(何故俺があんな餓鬼の面倒見てやらないとならねェ)

高杉は不機嫌であった。
もの凄く不機嫌であった。
彼の周りの空気だけがどす黒く見える位不機嫌であった。
その理由は、10分前に遡る。

—————

「ギャアァァァッ!! 折れたァァァ、俺の刀折れたァ!!」

他の者よりも少し遅く朝餉を食べていた高杉の耳に、銀時の耳障りな声が聞こえてきた。
じろりと銀時を見やると、真ん中から真っ二つに折れた刀を手に、桂にぎゃあぎゃあと何やら叫んでいるようだった。

「ヅラァァ、てめーの所為だぞ! てめーが行き成り驚かすもんだから、折っちまったじゃねーかァァ!!」

「何を言っている銀時、其の刀は昨日の戦で既にヒビが入っていただろう。断じて俺の所為では無い。折れるべくして折れたのだ」

「てめーの其の頭を折ってやろうかァァ!!」

どうやら、銀時が元々ヒビが入っていた刀を見ていた時、桂が驚かして来て真っ二つに折れてしまったらしい。
筋金入りの怖がりである銀時の事だ、必要以上に驚いたのだろう。
高杉はイラつきながらも、二人の喧嘩は何時もの事だと完全無視を決め込んでいた。

「ありえねーよ。ホントッ、ありえねーよ。オイヅラ、確か辰馬が今日鍛冶屋に行くっつってたよな。頼んでくるか」

「ヅラじゃない桂だ。坂本はもうとっくの昔に出発したぞ。時既に遅しだ」

まじでか、と呟くと、銀時はヒョイと空を見た。
太陽は西の空に昇っている。

「ちょっくら行ってくるか。もう行かねーと遅くなるしな。おいヅラ、お前和月起こして来いよ」

高杉の脳裏に、和月が浮かぶ。
二日前にやって来た、銀髪の少女。

「そうしたいのはやまやまなんだがな。俺も刀が折れているんだ」

「はぁぁ!? ヅラ、てめーまさか道連れにするつもりで折ったんじゃなーよな!! そーだよな!!」

「ヅラじゃない桂だ。うむ、一人で行くのは心細いではないか」

「死ねやァァァ!!」

また始まる言い合い。
高杉のイライラは頂点に達していた。

「ヅラふざけんじゃね……」

銀時が言いかけた、その刹那。
びゅんと銀時、桂の鼻面をかすめて、銀色の何かが飛んでいった。庭にぼとりと落ちた、其れは。

「ふ、懐刀……」

銀に煌く懐刀だった。
二人の顔が蒼白になる。いや、白いってもんじゃ無い。真っ青だ。

「起こして行きゃあ良いじゃねェか。さっさと失せろ白髪天パに万年ヅラ野郎」

場の空気が一瞬で凍りついたようだった。
高杉は無表情のまま、ただじっと、微動だにせず二人を見下ろしている。

「あ、じ、じゃあ和月の事宜しくな、チビ……高杉?」

「起こしておいてくれよ、ひくす……高杉」

二人の台詞の為か、高杉の眉間に皺が寄る。

「あァ? 何で俺がしないとならねェ。お前らが……」

しかし、高杉が言い終える前に、二人はびゅーっと走り去っていた。任せたぞと叫びながら。

—————

そして今に至る訳だ。
元々高杉は女子供が苦手だ。苦手というより嫌いだ。
二日前に和月の刀を拾ってきてやったのも、後で騒がれたら面倒だと思ったから。
昨日何度か和月に話しかけられたが、全て返事は一言二言で返していた。

(あんな餓鬼をこんな戦場に連れて来るのが間違いだろうが)

自分達が戦場に赴く時、きっと騒ぐに違いない。
そう思って、昨日は皆より早く此処を出た。帰りも皆より遅れて、しかも裏から帰って来た。

(面倒臭ェ)

考えているうちに、何時の間にか和月が寝ている部屋の前に来ていた。
チッ、と舌打ちし、戸に手を掛ける。
半ば八つ当たりに近い感じに、すぱぁんと大きく音をたてて戸を開けた。