二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂。・銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ・。—白銀の鬼姫— ( No.15 )
日時: 2010/07/17 16:12
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: z52uP7fi)


第一訓   引っ越して半年も経つと方言移るからねマジで。


「……此処どこ?」

最悪だ。完ッ全に道に迷った。
あの人に急に会いたくなって、先週九州を出て、はるばる江戸までやってきたものの。
住所も電話番号も分かんない事が祟って、道に迷った。

「最悪」

いや、そもそも名前とかぶき町に居るってしか分からないのに一人で来たあたしが最悪なんだけども。
何で急に会いたくなったのか、自分でも分からない。
生きているのかさえ分からないのに、気付いたら江戸へ向かってた。

「どうしよう……」

かなり恥ずかしいけど、交番か何かに駆け込んで、助けを求めてみようかな。
今ほんと泣きそうだよ。泣こうと思えば泣けるよ本当に。
そんな事考えて、大きな武家屋敷の前を通りかかった。

「オーイ、そこの笠かぶった女止まれィ、銃刀法違反だコノヤロー」

急に後ろから呼び止められた。
笠かぶった女って、あたしじゃん!
銃刀法違反って、あぁ、腰に刀差してるから?
あたしは、声のする方にゆっくり振り返った。顔は見られない方がいいのかな。
振り返る瞬間、視界の隅に入った武家屋敷。
それの門に、「真選組屯所」って書かれているのが見えた。

「ちょっくら屯所まで同行してもらいまさァ。……すぐそこだけど」

あたしの後ろに立ってたのは、琥珀色の髪をした、3つくらい年上の男。黒い制服で、腰には刀。
廃刀令のご時勢に、堂々と刀差してるってことは。

「……真選組……?」

最悪だァァ!!
神様、あたし何か悪い事したっけ?
電車賃ごまかしたぐらいしか記憶に無いんだけど!
此処で捕まったら困るよ。
調べたらあたしの過去とか、たぶん分かっちゃうからね。

「えっと、今あたし急いでるんやけど……後でや駄目? つーか見逃してよ」

うん、九州で移った方言が出ちゃったね。
そしたらその男、どっから出したんだって感じのバズーカを構えた。
まあ、狙いはあたしだね。

「無理でさァ、大人しく来ないってんなら——」

何か目つき変わってるよ、狩人の目だよ。

「ぐっばい」

何その幼稚園レベルの英語力!?
とかツッ込んだ瞬間、そいつが引き金を引いた。
爆音と一緒に、玉があたし目がけて飛んでくる。
そしたら、あたしの体は自然に動いていた。
ほんの少し膝を曲げて、道沿いにあった家の屋根にジャンプ。
ちょとキツかったけど、何とか着地できた。
着地した時、かぶってた笠がひゅうって落ちていく。
男も、さすがに驚いたみたいにあたしを見上げてた。
顔……は、この距離じゃ見えてない、と思う。

「待ちやがれィ、銀メダル!」

「誰が待つかバーカ! あ—ばよっ」

そんであたしは屋根伝いに走り出す。
この時ばっかりは、あたしの髪が銀じゃなかったら良いのにって思った。
真選組に目つけられちゃったよ、どうしよう。
でも、誰に何と言われようが、刀を差す事をやめるつもりは無いんだけどね。

走りながら見上げた空は、九州と同じように青く高く澄んでいた。