二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ【花曇編】 ( No.259 )
- 日時: 2011/01/16 19:16
- 名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: TV9sr51/)
第十二訓 曲がり角には要注意
「全っ然出て来ねーよォォォ!!」
効果音が付くとしたら「どかーん」、だろう。
藍色の髪の少女——氷室寥は、つい先程まで自分が手にしていた大量の資料を床にぶちまけた。床に散乱した資料には、全て大きく『五十鈴眞前・晃己行方不明事件調査書』と書かれている。
「もぉヤダ。面倒臭い。大体さァウチ参謀なんだよ? 何でこんなの調べなきゃいけないのォォォ」
五十鈴朱音とその親戚が二人の捜索を依頼して来たのは二ヶ月程前。土方は一度其れは真選組の仕事じゃないと断ったというのに、同情した近藤が捜索を引き受けてしまった。
丁度大きな事件が無かったという事もあり、山崎ら密偵総動員で捜索を開始したのだが。
(こんなに資料あるのに、書いてある事殆ど同じじゃん……)
五十枚はあろうかという調査資料。それら全て二人が江戸へ到着し二日が経った頃から先の記述が無いのだ。
山崎曰く「どれ程探してもこれ以上先の事が分からない」と言うことらしい。まぁその話をしたのも三日前だから、少しは進展しているかもしれないが。因みに土方が寥に「暇そーだから調査しとけ」と言ってこの書類を渡したのが四日前だ。
寥はあーあ、と呟くと、畳の上に突っ伏した。
「めんどくせーよ土方コノヤロー。あれ絶対自分がやりたくなかったからだよ土方コンチクショー」
寥は元々こういった細々とした仕事が大嫌いな極度の面倒臭がりだ。其れを四日間続けているという事もあって、彼女のイライラはピークに達していた。
「りょーう。いるー?」
と、その時。
スーッと軽い音を立て、部屋の襖が開いた。聞き慣れた声に、寥はむくりと起き上がる。
「あ、アリス」
アリスと呼ばれた茶髪の少女は、にこりと笑うと寥の隣に腰掛けた。アリスは寥が入るほんの少し前に入隊している。真選組で女なのは此の二人だけなので、直ぐに仲良くなった。
「どぉ? 何か分かった?」
「全然。もーウチ駄目だわ。気付いた時には土方抹殺してるかもしれない」
「抹殺するなら総悟にしてよ」
その時どこぞのマヨラーとドSが同時にくしゃみをした事を、二人は知る由も無い。
暫く他愛も無い会話をし、ケラケラ笑い合った後、ふとアリスが立ち上がった。
「ね、寥。外行こうよ外。息抜きになるでしょ」
そう言えば、昨日レストランに行ったきり何処にも行っていない。
仕事を放り出して、勝手に外へ行けば土方に怒られるかもしれないが、二人にとってはそんな事屁でもなかった。
隣で行こうよ行こうよを連呼するアリスの手を取り立ち上がると、二人は屯所を後にした。
—————
「何処だっけ、真選組屯所」
和月は「大江戸スーパー」と書かれたレジ袋片手に、路地をうろうろと歩き回っていた。
朱音は事件解決まで万事屋に居候する事になり、その為足りなくなった食材を買いに行っていたのだ。
帰る途中、真選組が何か情報を入れているかもしれないと思い立ち、こうして屯所へ向かっているものの、同じ道を五回は通らないと覚えられないプリン脳みその和月は、案の定道に迷っていた。
因みに第一訓と似てね?という質問はスルーの方向で。
「……駄目だ。うん。此れ以上歩き回ったら帰れなくなるね。帰ろうかな——って……」
何かが視界の隅に入った気がして、ぴたりと和月の足が止まった。くるりと振り返り、一度通り過ぎた曲がり角へ戻って行く。
そして其処を曲がろうとした時——
茶色の瞳と、眼が合った。
瞬間、和月の眼に映ったのは藍色の短い髪と茶色い長髪の少女二人。茶髪の少女は知らないが、藍色の方はぼんやりとだが記憶に残っている。それもつい最近。
「あっ……」
藍色と茶髪の少女の着ている、真選組幹部クラスの者の隊服を見て、靄が掛かっていた記憶がすぅっと晴れた。
そうだ、この人は確か。
「やたら面倒臭い連呼してたシケた面した真選組参謀!!」
「銀メダルみたいな頭した帯刀女!!」
相手が発した自分を差す言葉に、和月と寥、二人の眉間に皺が寄った。