二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編—【和月・アリス誕うp】 ( No.358 )
日時: 2011/04/08 11:17
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: .qxzdl5h)

第十七訓  雨の日は外に出たくないと思うのが自然の摂理    


「ヅラてめーどうやって家入ったコラ。何人の留守中に忍び込んでんだコラ」
「仕方無いだろう銀時。其れはどうやって俺達と貴様等を出会わせるか、作者が此れくらいしか思いつかなかったからだ」
「作者今関係無ェからァァ!!」

勝手に人様の家に浸入した事を作者の所為にする桂を、銀時が再度踏み付けた。
まぁ実際桂の言うとおりなのだけれども。

「いや、言うとおりなのかいィ!!」

律儀に作者の地の文にまで突っ込みを入れる新八。
其の間に神楽は朱音を寝かせに、和月は買って来た駄菓子を直しに行く。夢幻は今だ銀時に蹴られ続ける桂を、心配そうに見ていた。

「ちょ、待て待て銀時!! 今日俺が来たのには理由が有ってだな!」
「はァ? 理由だァ?」


「朱音の親父殿と兄についての事だ」


ぴたり、と銀時の動きが止まった。傍らに居た新八も大きく眼を見開く。丁度戻って来ていた和月と神楽も、其の場に固まった。
暫くの間、重い沈黙が続く。
外の雷音がやけに大きく響く。雨も降り出したらしく、微かにではあるが、水の打ち付けられる音も聞こえた。

「……取り合えず座れや」

銀時の声に、新八が素早くお茶を取りに台所へ駆けた。
桂と夢幻の向かい側のソファーに、神楽、銀時、和月の順で座る。和月には其の時間がやけに長く感じられた。
少しして新八が戻り、人数分のお茶をそれぞれの前に並べ、和月の隣に座る。

「何が分かったアルか」

最初に口を開いたのは神楽だった。
ほんの少し前まで温かな——限りなく馬鹿らしいに近い空気に満ちていた万事屋は何処へ行ったのか。今では重く暗い空気が万事屋を覆ってしまっていた。聞こえてくる雨音と雷音が、さらにそれに拍車をかける。

「三ヶ月程前、江戸に“ある集団”が密航したらしい」
「コタ兄ィ、三ヶ月前、って——」

思わず口に出た。
恐らく和月だけでなく、其の場に居た皆が思い浮かべたであろう出来事。
三ヶ月前の一月二十八日、朱音の父と兄は此処、江戸で消息を絶った。
桂は和月の言葉にこくりと頷く。

「ヅラ、その“ある集団”ってのは何だ」

銀時が言った、その直後だったろうか。
桂の隣に座っていた夢幻の雰囲気が変わった。何が変わった、と具体的に言うには難しいが、確かに何かが変わった事に和月は気付いた。
ぎゅっと両手を膝の上で握り締め、硬く唇を結んでいる。
何かに耐えようとしている様だと気付くのに、そう時間は掛からなかった。

皆が息を詰め、桂の言葉を待つ。


「銀時、貴様もよぉく知っている組織だ」
「前置きはいい、早く言え」


雨音が少し、強くなった。



「———宇宙海賊“春雨”だ」


桂の言葉に、和月以外の三人は大きく眼を見開いた。
和月は宇宙海賊春雨なるものを知らない。和月は十四歳からついこの間の十七歳になる誕生日直前まで、九州の田舎町にいたのだ。今では当たり前に各地に建っている様な、洋式風の建物や聳え立つビルなど全く無い様なド田舎に。
ただ、その春雨なる組織がけして良い物では無い事位、皆の表情や雰囲気から読み取れた。
特に神楽と夢幻など、苦虫を噛み潰したような顔をしている。今迄見た事の無い表情だった。

「……何その春雨って」
「あー、和月は知らねぇんだったっけな。要するに宇宙で悪さばっかしてる、ガラの悪い海賊だよ」

銀時兄ィの説明は要しすぎていてよく解らない。
和月がそう言えば、良いんだよ解らなくても。そう気だるそうに答えられた。

「……いつ来たアルか。何処に居るアルか」

怒りが入り混じった様な声で神楽が言った。そんな神楽を、銀時と新八が落ち着けとたしなめる。
何故神楽がそれ程怒りを露にしているのか、和月には解らない。
桂は確かな情報では無いんだが、と前置きして言う。

「恐らく一月半ば辺りだな。潜伏しているのは港町あたりと見ている」

一月半ば。
朱音の父、そして兄が消えた日付に近い。

「で? ヅラは二人が消えた事件には春雨が関係してるって言いてぇのか」
「要するにそう言う事だ」

珍しく真面目な銀時と桂。
それは記憶の中の、遠い五年前の日の二人を思い起こさせた。やはり此の二人の根は何も変わらないのだと思う。

「銀ちゃん」

ふいに神楽が声を掛けた。
今だ不機嫌そうにはしていたが、先ほどよりは大分落ち着いたらしい。

「私朱音に布団掛けるの忘れてたネ。冷えてきたから行ってくるアル」
「おー」

そう言って、神楽は居間を出て行った。



雨はなお降り続いている。