二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.441 )
日時: 2011/08/23 11:01
名前: 李逗 ◆8JInDfkKEU (ID: r9bFnsPr)

第二十五訓   夏休みに街中で同級生に会うと何か妙に緊張するよね


ぼたり、と夢幻の右足から赤い血が流れる。
どうやら当たり所が悪かったらしく、傷自体はあまり深くは無いのに出血が多い。

「今のは結構深かったと思ったんだけど、なぁ」

夢幻にその傷をつけた本人である無黯も、右手に刀傷を負っていた。そこから流れ出る血もけして少ない量では無い。
二人が戦う事により、この部屋の中は既に壁が崩れたり、亀裂が走ったりとぼろぼろだ。それと比例する様に二人の傷も多くなってゆく。
無黯はとん、と傘を肩に担ぐと、夢幻を真っ直ぐ見据えた。

「ねぇ、ずっと思ってたんだけどね。君って、もしかして玄武族……それか青龍族だったりする?」

ぴく、と夢幻の肩が揺れた。

「でもそれじゃ足りない、かなぁ。自分的には朱雀と白虎も混ざってる様に見えるんだけど」

確かに夢幻にはその全ての血が流れていた。両親から受け継いだ四つの種族の血。
混血で若干薄れているとは言え、高い戦闘能力を持つ青龍の血があるから夜兎の無黯と対等に戦えて、鋼の肉体を持つ玄武の血を持つから致命傷となる傷を受ける事は無かった。おまけに高い治癒能力の白虎の血もあるから、かすり傷程度の傷は少しずつ治っていっている。

「貴女にっ……答える義理は、無い」
「そっか」

はなから答えてもらえるとは思ってなかったのか、瞬間無黯は床を蹴り、一気に夢幻との間合いを詰めた。
右手の傘が真っ直ぐに夢幻目掛けて突っ込んできて、夢幻は上半身を捻り、ぎりぎりでそれを避ける。
握った剣で反撃に転じようとした瞬間、夢幻は腹部に強烈な衝撃を受けてそのまま後方に吹っ飛び、壁にぶつかった。

「っ……げほっ」

無黯の左の蹴りだった。
それをまともに受けたせいで全身に激痛が走り、息をすることもままならなず夢幻はげほげほと咳き込んだ。

「——っつ!」

しかし、攻撃を受けたのは夢幻だけでは無く、無黯もその場にがくんと膝を着いた。
蹴り飛ばされた瞬間、夢幻も無黯の左足に一太刀入れていたのだ。それも浅くはない傷を。

二人はよろめきながら立ち上がり、再び正面から対峙した。瞬きすら命取りになる重苦しい雰囲気の中、二人はいつ攻撃に入るかと時期を伺う。じりじりと少しずつ間合いを詰めあい、二人の距離が徐々に近付いてゆく。

先に動いたのは夢幻だった。
夢幻は床を蹴り、無黯の懐に飛び込み剣を薙ぐ。びゅ、と空を斬る音が響くが、無黯は紙一重でそれを避けた。
瞬間、無黯は左の拳を夢幻目掛けて繰り出す。これを避ければさっきと同じ様に蹴りを受ける。瞬時にそう判断した夢幻は後ろに飛びのき、着地と同時にもう一度床を蹴った。

ガキィィン、と二つの物がぶつかり合う音が響く。
夢幻は左肩から、無黯は左脇腹からだらりと血が流れた。
と、その時。無黯の紺碧の瞳がぎょっと見開かれる。

「……かぐ、ら……」
「え?」

ぽつりと無黯が神楽の名前を呼んだ。
それに続いて、夢幻の後方、桂達が去った通路からばたばたと数人で走ってくる音。
思わず振り返った夢幻の眼にうつったものは、暗がりのなかこちらへ向かって来る、桂、神楽の姿だった。かろうじて桂に背負われた朱音の姿も見て取れる。

良かった、無事だった。

安堵した夢幻は、無黯の方を向き直る。

「……どういう、こと」

そこには無黯の姿は無く。その更に奥にある通路から、かすかに誰かが走り去る音が聞こえてきた。

「夢幻んんん!! 無事だったアルか!?」

考える間も無くどん、と後ろから神楽に飛びつかれてよろめく夢幻。そちらを見やれば、確かに桂と桂に背負われた朱音がいた。

「夢幻、無事……では無いな」
「こたろ……」

桂は傷ついた夢幻を見て、申し訳無さそうな顔をした。そしてぽんと夢幻の髪に手を置く。

「夢幻、あいつどこ行ったネ? ここには居ない様に見えるけど」
「こたろ達が……来た時、に……逃げて行っちゃ、た」

私に恐れをなして逃げたアルか、と自慢げな神楽を見て、夢幻は笑った。そんな二人を見て、桂は口の端に笑みを浮かべ、言う。

「夢幻、次元爆弾をここに来るまでに設置した。急いでここから出るぞ」
「銀さん達、は? それに……」
「銀ちゃん達なら大丈夫アル。ちょっとやそっとじゃくたばらないネ」

言いかけた夢幻を遮って、神楽が言う。夢幻は桂を見やるが、桂も大丈夫だと言わんばかりに頷いた。

「行くぞ、夢幻。走れるか?」
「うん。だいじょう、ぶ」

夢幻の了承を聞いたあと、三人と負ぶわれた朱音は出口を目指して走り出した。

残り時間は後三十分になろうとしている。