二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

TEARS OF SAFFLOWER 2 ( No.13 )
日時: 2010/05/15 17:42
名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: MIiIBvYo)
参照: http://almpo.blog109.fc2.com/


隊長が遅刻をしてしまったが無事入隊式を終え、業務に取り掛かろうと多くの隊士が持ち場へ向かう。
陽樹の本日の業務は書類提出である為、執務室の机で仕事をこなす。
何時もはギンにイヅル、上位席官が居て賑やかなのに。
今は自分一人しか居ない執務室はとても静かだと陽樹は思ったが。
「陽樹ちゃんよう頑張っとるねぇ。偉いわァ」
ぬっと陽樹の横から顔を出したギン。
彼が何時の間に執務室に入って来たのかと考える間もなく、陽樹は驚きのあまり奇声を発して椅子と共に後ろへと倒れてしまった。
ギンはそんな彼女を見て微笑みながらも大丈夫かと声を掛けてやる。


 2.To you whom I love...


「ほんっま可愛らしかったわー。みぎゃー!って叫んでなァ、後ろにひっくり返ってまうねんもん」
「わぁぁー!!もう言わないで下さい!」
床に座り込んだまま陽樹はかぁぁっと頬を朱に染めてギンを黙らせようと必死に奮闘する。
だが純粋な力の差か其れは叶わなかった。

「そう言えば何時の間に入って来られたのですか?」
一番奥にある隊首席に座り、にこにこ笑うギンに陽樹は聞いた。
倒れた椅子を戻す序でにばら撒いてしまった書類を拾いながら。
「陽樹ちゃんが入ってくる前から」
「だったら私が入って来たときに御声を掛けてくだされば良かったのに……」
たん、と拾い集めた書類を机で揃えて徐々に消入る様な声で話す。
椅子に座って仕事を再開しようとした頃「そんなことより、」とギンが話しかける。

「鯛焼き、何時奢ってくれんの」
ふと陽樹の筆が止まった。
ちらりとギンを見やれば真剣な眼差し(かは分からないが)で陽樹を見つめている。
「…今度の機会に」
「今度って、何時?」
「分からないです。其の時またお話しさせて頂きます」
無理矢理会話を終わらせ筆を動かすと。
背後に感じた気配—陽樹が気付いた途端にふわりと体が宙に浮いていた。
「あ、…あぁっ…!」
ギンに抱えあげられていると分かった頃にはもう遅い。
「今から行こ」
「だ、駄目です!行くならせめて昼休みにでも……!」
反対の声は彼には聞こえて居ないのか。
ばたばたと足掻いて下ろすように訴える。
しかしギンは陽樹を抱えたまま乱暴に足で執務室の障子を開いた。
開いた障子の先、書類を抱えたイヅルが立っている。
ギンの抱えた陽樹の様子から何時ものサボり癖が出たなと呆れるしかない。
「隊長、彼女を連れて何処へ行かれるのですか?」
「サボりに」
「そうですか…しかし、隊長には今日書き上げて頂かなければならない書類が沢山御座います。……もし書き上げる事が出来なければ、如何いった事になるのかは…御分かりですよね」
イヅルの何時もの穏やかな口振り、なのに何処か怒りを含んだ言い方で。
彼が一通り話し終えた後、ギンは観念したように陽樹を下ろした。
「助かったぁぁぁ!」
とイヅルに抱きつく陽樹。其れをよしよしと子供をあやす様に撫でる。
そんな光景を見て、ギンは悔しそうに口を尖らせたけれど。

「陽樹、昼休み一緒に行こな」
イヅルに抱き着いたままの彼女の耳元でそっと呟く。
そんなギンに陽樹は埋めていた顔を上げ、こくりと頷いた。