二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

TEARS OF SAFFLOWER 3 ( No.22 )
日時: 2010/06/03 20:02
名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: MIiIBvYo)
参照: http://almpo.blog109.fc2.com/


 3.To you whom I love... 2


十番隊舎の執務室では隊首を始め副官、席官共に業務に励んでいた。
隊首の日番谷の前のソファでは副官である松本がだらけて居るが周りの隊士たちは慣れっこらしい。
「松本副たいちょー。仕事しないと隊長にどやされますよ」
「いいのよぅ、別に。私の仕事は隊長のもんなのよ」
「何ですか其れ。おかしくないですか」
十番隊に配属されて間もない彼女と乱菊がそんな遣り取りをしていると。
「三番隊の束原っす。日番谷隊長に書類を提出に参りました。入室しても宜しいでしょうか」
「おう、入れ」
日番谷の許可が下りるとがらりと障子を開け、書類を彼の机の上に置く。
其れを手に取り書類に一通り目を通して
「珍しいな…あの市丸が真面目に仕事してんのか」
褒めて居るのか、それとも貶しているのかも分からない日番谷の言動——否確かに珍しい事なんだけれど。

「大変だろう、吉良もお前も」
「そうですね。また今年も入隊式に遅れて来ましたし…」
「相変わらずねぇ、ギンも」
ほぅっと温かいお茶を飲みながら言った乱菊だが。
「…松本。お前は人並みに仕事をしてから人の事を言え」
其れを言っちゃ御終いでしょ、と少し膨れて言う乱菊に陽樹はくすりと笑みを零す。
そして何かを思い出したように陽樹は口を開いた。
「すみません日番谷隊長。松本副隊長をしばしの間お借りしても宜しいでしょうか」
突然の其の言葉に日番谷は驚いたが——直ぐに構わん、と返答した。
有難う御座います、と深々と頭を下げずるずる乱菊を引き摺って執務室を後にした。


「すみません乱菊さん!御昼休み付き合って下さい!」
がばっと頭を下げた陽樹—意味が分からない、と乱菊は戸惑った。
「昼休み?如何したのよ、突然」
頭上げなさいよと陽樹に声を掛け。
「ああああの!市丸隊長と御昼休みに鯛焼きを御馳走する約束をしてしまって、ででも市丸隊長と二人でという訳にはいきませんので!はい!」
慌てふためき挙句の果てには頬だけでなく耳の裏まで紅潮させる彼女—先程迄冷静に十番隊の隊長と言葉を交わしていたのが嘘のようだ。
「少し落ち着けば?あんたもう…ろくに喋れて無いわよ」
「ででででもっ!」
乱菊は言葉を紡ごうとする彼女の口を無理に閉じさせると吐き出されそうだった空気が肺に押し戻った。
「はい、深呼吸〜」
鼻で深い呼吸を数度繰り返すと真っ赤だった顔が少しずつ元の色に戻り始めた。

「さっきまでウチの隊長とちゃんと喋れたのにねぇ」
「そうなんですよ…。さっき市丸隊長と…その、執務室で御話ししてからこんな感じで直ぐ焦ってしまって…」
はぁ、と溜息を吐く陽樹。
「昼休み、ねぇ…。鯛焼き奢るんでしょ?だったら恋次連れてきゃ良いじゃない」
「あ…それが良いっすよね!」
「その代りあたしも着いてくからね。あたしにも奢んなさいよ」
「…マジすか」
当り前よと乱菊に背中を叩かれた陽樹は只ならぬ不安を胸に宿した。
—有り金全部で奢らされる、と。