二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- TEARS OF SAFFLOWER 5 ( No.37 )
- 日時: 2010/06/25 18:04
- 名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: MIiIBvYo)
- 参照: http://almpo.blog109.fc2.com/
5.To you whom I love... 4
陽樹に叱咤されてからギンは彼女と並んで廊下を歩いていたが何時もより陽樹の口数が少ない事に気付いた。
普段ならほんの少しの距離だけでも、何か他愛無い話に花を咲かせているというのに。
「陽樹ちゃん」
ふと横を歩く彼女の名前を呼んでみた。
「……」
黙りこくったまま。どうやらギンの声は陽樹に届かなかったらしい。
首を傾げて陽樹の横顔を覗き込んで見ると前をぐっと見据えていて、時折眉間に皺を寄せていたり——。
ちょっとした悪戯心が顔を覗かせる。ちょん、とギンは陽樹の項に冷たい手で触れてみた。
「ひぎっ!」
陽樹は背筋を反らして敏感に反応した。思っていた以上の反応にギンはくくっと笑う。
「普通、女の子はきゃあ!とか言うて吃驚するもんやで」
くすくす笑いながらギンは言う。
またやってしまった、と陽樹はしょんぼり肩を落とす。
「…別にそないに落ち込まんでもええやん。ほら、しゃんとし」
「申し訳有りません…」
陽樹はギンにふんわり微笑んで謝罪してから照れ臭そうに頭を掻いた。
ちらりと真っ赤な髪の間から見えた右手には引っ掻いたような傷が沢山刻まれていた。痛々しくうっすら血が滲んでいる。
「如何したん、是」
がしり。ギンが陽樹の腕を掴んだ。其れと粗同時に陽樹は歩みを止めた。
「え…と、その……昨日、部屋で…」
しどろもどろに話す彼女の言葉の途中でギンはぐ、と腕を握る力を強めた。
「嘘吐いたあかん。さっき執務室居った時はこんなんあらへんかったわ」
「……本当に何も、御座いません…」
先程よりも弱々しい声で話す陽樹。だがギンは。
「ホンマの事言い。隊長命令や」
「、そんな…!」
——そんなの、理不尽だ。何て、隊長であるギンに言える訳も無く。
かと言って本当の事を言いたく無い陽樹は俯いてしまう。
「そな神妙な顔せんとき。言いたく無いんやったら、やっぱり言わんでええよ」
其れより薬塗らなあかんなァ、とさらりと陽樹の右手を撫でた。
血が滲む程の傷、ぴりっと痛んで陽樹は顔を歪めた。
「痛いんやろ?ほなさっさと戻って薬塗ろ」
な?と陽樹の顔を心配そうに覗きこむ、そんなギンの表情に思わず見惚れてしまう。
もう何も考える事が出来なくなって陽樹はただこくりと首を縦に振った。