二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 東方 『神身伝』 ( No.14 )
日時: 2010/05/08 10:01
名前: お⑨ (ID: NzSRvas.)

<第二章  日常の終わり・非日常の始まり>

目を覚ますと、そこは病院の一室だった。
医者から話を聞くと、酷い怪我で病院に運ばれてきたそうだが、奇跡的にも命に別状は無く、千切れていた腕も後遺症も無く回復に向かっているそうだ。
人並み外れた回復力の賜物だそうだ。

医者から、日頃の食生活や身体の事を事細かに聞かれたが、それよりも大変だったのが、泣きじゃくる琴美を落ち着かせる事だった。
俺の顔を見るなり大声で泣き出してしまい、それを落ち着かせるのに結構な時間が掛かった。
その後にも、親族やバイト先の店長達が見舞いに来てくれて、自分が周りに心配をかけた申し訳なさと、自分の恵まれた人間関係の嬉しさ再認識した。

しかし、それ以上に頭の中を支配する物が有った。
確かに、おれはあの公園で腕が吹き飛んで、体が穴だらけに成った筈だ・・・・・・・。
今思い出しただけでも体が恐怖に震える。

琴美から聞いた話だと、自分の家は、ドアが強引に突き破られるような形で完全に壊れていて、窓ガラスも粉々になっていたそうだ。
更に、俺が発見された公園は、テロにでも有ったかのように壊滅していたらしく、そのことで警察が何度か事情聴取にも来ていた。

「夢じゃ無いんだよな・・・・・・・。」

その言葉と共に頭に浮かぶのは、一匹の狼だ。
そう、全てはあの狼と出会った事で起きた事。
しかし、誰に聞いても狼の行方は解らなかった、唯一姿を見た事の有る琴美も、あれ以降は狼の姿を見ていないと言っていた。
薄れ行く意識の中で、追っ手と対峙していた狼。
常識的に考えて死ぬ筈の自分が生きている事実。
全てが全て、頭の中で混乱を招く。

「だああああああ、もう何なんだよ・・・・・・何処に行ったんだよ。
意味わかんね〜よ。」

自然と愚痴にもにた言葉が口から出てくる。
言っても仕方が無いことは十二分に承知している、しかし、口に出さないと不安と恐怖で押し潰されそうになる。
数多くの不安や謎は、一つも解決する事無く無残にも時間だけは過ぎていった。

それから1週間もしないうちに、身体も大分と回復して腕も完全に繋がり、医者からも明日か明後日には退院できると告げられた。
そんなある日の夜の事だった。
病院で目が覚めてからの数日間、色んな事を頭の中で考えていて、まともに睡眠を取れていなかったのだが、今日は珍しく寝つきが良かった。

そして、夢の中にあの狼が出てきたんだ。