二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 東方 『神身伝』 ( No.17 )
- 日時: 2010/05/08 13:23
- 名前: お⑨ (ID: NzSRvas.)
第二章 続3
そして、ある程度まで近づいたところで、月明かりが彼女の姿を映し出す。
白いドレスに、赤く大きなリボンの付いた変わった帽子、不思議な模様の入った紫色の前掛けをしていて、綺麗な顔立ちにブロンドの髪。
一言で言うと『綺麗』その言葉しか出てこない。
だが、状況が状況なだけに、恐怖の対象以外の何物でもない。
そして、次に発した彼女の言葉が冬馬の全ての理性を吹き飛ばす。
「でも、だからといって貴方に逃げ道がありまして?」
この女、不味い。
直感だった。
そして、そう思った瞬間には窓から外に飛び出していた。
『逃げ道がありまして?』言い換えれば『逃がさない』と言う事だ、言葉が通じるから大丈夫かも知れない、甘すぎる自分の考えに恥ずかしさを覚えながらも、それ以上に飛び降りた事の方が問題だった。
「まてまてまてまて、無理無理無理。」
地面が近づいてくる、当然の結果だ。
解ってはいても、それ以外に策が思いつかなかった冬馬には何とかするしかない。
「しっかりとなさい、大丈夫、しっかりとタイミングを合わせて膝で衝撃を和らげるのよ。」
直ぐ横でアドバイスが聞こえる、誰の物かなんて構っている余裕も無い。
言われたとおりに咄嗟では有るが、膝で衝撃を吸収する事を意識した。
そして、次の瞬間。
ストッ
信じられ無い事に、彼は病院の3階辺りから飛び降りて、見事に着地して見せたのだ。
冬馬は、余りの事に時が止まったかのように着地したままの姿勢で止まる。
「ほら、出来たでしょう。」
後ろから、聞いたことのある声が聞こえる、そう病室にいた女性の声だ。
「っく。」
振り向くことも無く、そのまま距離を取ろうと地面を蹴る。
すると、冬馬の身体は羽のように何メートルもの高さまで浮いてしまったのだ。
「な、何だよこれ。」
今までなら、飛べて1メートルちょいだったのに、難なく10メートルは跳ね上がった自分の身体能力に、混乱する。
「こらこら、話を聞きなさい。本当に最近の子は話を聞かないんだから。」
ふと声のする方を見ると、先程の女性が自分と同じ高さの所を飛んでいたのだ。
「うわ、グムムムム。」
驚きの余り、思わず大きな声をあげそうに成った冬馬の口を、誰かの手が押さえ込む。
その手に目をやると、その腕は得体の知れない黒い亀裂のような物から生えている。
今までに無かった身体能力に得体の知れない女性、更には亀裂から生えている腕。
最早、冬馬の混乱と緊張はピークに達した、その場でもがく様にして暴れると、体勢を崩して真っ逆さまに落ちていく。
再び迫り来る地面、これで何度目だろうか。
今度こそ覚悟を決めて目を瞑る。