二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 東方 『神身伝』 ( No.18 )
日時: 2010/05/08 13:24
名前: お⑨ (ID: NzSRvas.)

第二章 続4

しかし、何時までたっても地面に衝突する衝撃は来ない。
恐る恐る目を開くと、冬馬の身体は、空中で静止していたのだ。
意味が解らず、自分の身体を見ると、逆さまの状態のまま、自分の下半身が先程見た黒い亀裂に飲み込まれていたのだ。

「な、なんじゃムググググググ。」

「はいはい、お決まりの台詞はいりませんわよ、まったく、よく叫ぶ子ね。」

再び、直ぐ傍で女性の声が聞こえる。
見ると、驚くことに女性は空中に浮いたまま静止していたのだ。

「はあ〜、男の子が情けない。少しは落ち着いたらどうです?」

そう言って、呆れた様な視線をこちらに向ける。
『いやいや、無理だろ。』そこは頭の中で冷静に突っ込みを入れ、暫くもがいてみたが、一向に開放される様子も無い。
この状況で何をどうしても無意味な事を理解すると、諦めの極地から来る冷静さが芽生えてきた。

女性も、暫く冬馬のもがく姿を眺めていて、落ち着きを取り戻し始めたのを見計らい話しかける。

「どうです?少しは落ち着きまして?」

冬馬は、逆さまのままコクコクと頷き、女性の言葉に返事をする。

「では、話を聞いていただけますわね?」

再びコクコクと頷くと、口を押さえつけていた手がひょいっと亀裂の中に消え、その亀裂も消えてしまった。
よく見ると、女性の腕にも全く同じ亀裂があり、その亀裂の中に腕を突っ込んでいる。
そう、亀裂から生えていたのは女性の腕だったのだ。
どう言ったマジックなのかは解らないが、テレビに出た瞬間に話題になる事間違い無しだと思う。
そんな仕様も無いことを考えている冬馬に、女性が話しかけてくる。

「さてと、貴方は水上冬馬で間違いありませんわね?」

「どうして、俺の名前を。」
 
「そんな事はどうでもいい事ですわ。」

冬馬の言葉をあっさりと片付けて、会話を続ける。

「っで、信じられない事かも知れませんが、貴方は最早人間と呼べる存在では無くなっています。」

「・・・・・。」

その言葉に、何も返すことが出来ない。
否定したい気持ちはある。
しかし、病院から逃げ出してからのほんの5分ぐらいの出来事で、身を持ってそれを体験してしまったからだ。
 
「っで、この世界では最早貴方はイレギュラー、存在してはいけない者に成ってしまっています。」

「ど、どうして。」

言葉を口にしたはいいが、その理由は容易に想像が付く。

「言わなければ解りませんか?」

「・・・・・・・いえ。」

10メートルも飛び上がりそして見事に着地する。
それだけで、どれだけの混乱を世界に招くかは用意に想像が出来る。
何よりも、自分の周りの人間に迷惑をかける可能性すら出てきてしまう、そんな事が有っては成らない。
だが、それ同時にショックも大きい。
『存在してはいけない者』それは、自分の存在を完全に否定される事に他ならないからだ。