二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第一章 続7 ( No.9 )
- 日時: 2010/05/07 14:31
- 名前: お⑨ (ID: a32fGRWE)
狼は冬馬をくわえたまま暫く道を走り、最初に出会った公園に着くと、その真ん中で冬馬を放した。
「いったい、何が起きてるんだよ。」
状況が全く解らないまま連れて来られた冬馬は、狼に質問する。
「恐らく、私を追ってきた者だと思います。
貴方にこれ以上迷惑はかけられない、どこかで隠れやり過ごしてください。
奴らの狙いは私だ。」
しあし、冬馬は狼が怪我をしているのを知っている、更には自分の為に更に傷を負ったのも知っている。
その状況で自分だけ逃げるなんて出来る性格はしていなかった。
「お前も、一緒に逃げるんだよ、俺だけ隠れるなんて出来るわけ無いだろう。」
「な、何を言ってるんですか、さっきも言ったでしょう、奴の狙いは私なんですよ、一緒に逃げたら貴方に危険が及ぶ。
そんな事出来る訳が無いでしょう。
それに、貴方は元々無関係なんだ、巻き込むわけにはいかない。」
狼は、冬馬の発言が信じられないと言った感じに言い放つ。
それもそうだ、誰だって自分が一番だ、自分の安全を第一に考えて動く、ごく当たり前の事だ。
だが、冬馬は『自分のことより他の者の事を優先に考える』そんな人間だ、そんな人間にそのような常識は通用しない。
そんな言い合いをしている間に,
追って来ていた影が追いつき、冬馬と狼に対峙する。
夜の闇の所為で詳細な姿は解らないが、四足歩行の獣のようだ。
「っち、貴方は馬鹿だ、今の私では貴方を守りきれるかどうか分か「うるせぇ。」。」
狼の言葉を遮る様に冬馬が言葉を放つ、そして追ってきた影に視線を向けながら続けて言う。
「さっきからうだうだと、それに無関係だあ?
お前を見つけて怪我の手当てをした俺が無関係だと?
そんな訳が有ってたまるか、死なせる為に手当てをしたんじゃないんだよ。」
冬馬の言葉に狼は返すことが出来なかった。
彼の言葉には怒りと優しさ、そして何よりも『信念』がこもっていたからだ。
これ以上は、何を言っても無駄と踏んだ狼は、冬馬との共闘を選んだ。
「分かりました、では宜しくお願いします。」
「おし、まかされた。」
二人の意思が決まったと同時に、影が襲い掛かる。
冬馬は喧嘩をした事は有ってもそれは常識の範囲での話だ。
相手には勿論言葉は通じたし、それに相手は同じ『人間』だった。
だが今はの状況は違う、言葉が通じない、そして何より決定的に違うのは、相手が四足歩行の『獣』だと言う事だ。
襲い掛かってきた影は、やはり狼に的を絞って来た。
先ず、自分は的にされないと読んでいた冬馬は、そのまま狼と距離を取ると、転がっている石を広い影に投げつける。
「があ。」
飛んできた石に気を取られた影は、狼から一瞬視線をそらした。
その一瞬の隙に狼が思いっきり体当たりを食らわせる。
「ぐるあ。」
影は、地面を転がるように吹き飛んでいく。
が次の瞬間、吹き飛びながらその影から触手の様なものが何本も襲ってきたのだ。
「うわ。」
冬馬はその場から横に飛び、かろうじで攻撃をかわす。
何で攻撃されたか見ると、鞭の様になった獣の毛が地面に2,3本刺さっている。
「危ない。」
鞭のような毛に気を取られていた冬馬は、狼の言葉で敵に眼を向ける。
すると、直ぐ目の前に青い炎の玉が迫っていたのだ。
「おいおいおいおいおいおいいいいいい。」
叫びながら、直ぐに立ち上がり全力で横に走りそれを避ける、しかし次々とその炎の玉は放たれてくる。
見ると、影が口を大きく開けて炎の玉を吐き出してる。
「何だよ、何のアニメですか〜火を吐くとか反則だろ。
ってか、毛が襲ってくる時点で何なんですか〜。」
半べそをかいて叫びながらも、見事に攻撃をかわしていく。
しかし、次の瞬間。
「私を忘れるな。」
一瞬にして間合いを詰めた狼が、体を丸めて回転しながらその牙で、影の胴体と首を切り離した。
ドンドン・・・ゴロゴロ。
勢い良く転がった胴体から先は、茂みの中へと消えていき、残った胴体は砂のように崩れ風に乗って消えていった。
「ふ〜、大丈夫ですか?」
敵の消滅を確認した狼は、冬馬の安否を確認する。
「はあ、はあ、いや、マジで死ぬかと思った。」
完全に息切れした冬馬は、両手両膝を付いて独り言をぶつぶつと呟いている。
「あの〜、大丈夫ですか?」
「ん?ああ〜だ、大丈夫。」
返事の無い冬馬の許に寄り、自ら安否を確認しに来た狼に心配をかけまいと笑顔を作るが、その笑顔は最早笑顔と呼べるものでは無く、涙と鼻水でぐちゃぐちゃに成っていた。
その表情をみた狼は、どんな言葉を掛けて言いかわからず、ただ「そ、そうですか。」と言うしか出来なかった。
冬馬は誠意いっぱいの笑顔を狼に向けるが、周りの景色が目に入った瞬間、その表情は一瞬にして凍りつく。
敵の吐いた炎は予想以上の被害をもたらしていた。
何本もの木々が焼き焦げ、倒たり、遊具の幾つかもその原型を無くしていた。