二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【3z】 刹那恋鎖。 ( No.6 )
日時: 2010/05/09 11:51
名前: 牙暁 ◆NIJKkC7BnA (ID: 3r6DhwLS)

 【夜道】(後編)

あれは、真冬の寒い午後の事。


「───うわ─ …」

僕は真っ暗な窓の外を見下ろして、大きな溜め息を吐く。

判らない処を勉強していたら、何時の間にか7時を過ぎていた。
空には星が瞬き始めている。

恨めしげに外を睨み付け、僕はぱたっと机に突っ伏す。
多分、学校には僕以外誰も居ないのだろう。

肌寒い教室の真ん中の席で顔を伏せていると、突然肩をゆるく揺さぶられた。
ゆっくりと顔を上げて見ると、担任・坂田銀八がちょっと眉根を寄せて僕を見ていた。

「……先生?」

不思議そうに銀八を見上げる僕の頬に、スッと大きい手が添えられる。

─────か、近っ!?

頬がかあっと熱くなる。

──────こつん。

唐突で何が起きているのか全く判らず赤くなった侭固まる僕を見て、銀八はこつんと額を当てた。

「───よし、熱はねぇな」
「……はい……?//」
「てっきり熱でもあるんじゃね─かって」
「熱なんて有りません。至って健康です//」

言うと、何故か銀八が僕の机の上に散らばっていたペンやらノートをてきぱきと片付け出す。
全部鞄に詰め終わると、銀八が唐突にぎゅっと僕の手を握った。

「何ですか? 此の手//」
「あのアレ…やっぱさァ、女の子が一人で帰るってアレじゃん、駄目じゃん」
「はぁ…//」

……気のせいか、銀八の手に力が入る。
駄目なのは、貴方の方では?

吹き出して爆笑したいのを必死でこらえる。
ばつの悪そうな表情で僕を覗き込む銀八。

僕は銀八の手を軽く握り返して「じゃ、お願いします」と言った。


外は教室と違って、冬の外気が随分厳しく感じられる。
僕達は並んで、夜道を歩いていた。
やけに空気が澄んでるなと思いきや、空から雪が舞い落ちてくるのが目に止まる。

「あ! 雪ですよ、初雪」
「餓鬼だな─、お前」
「ハハ。いい歳した人が幽霊駄目の方が余程餓鬼っぽいですよ」
「はぁ!? 俺べ、別に怖くねェシ!?」

図星を指されて、目を泳がせる銀八が可愛く見えて、僕はくすっと笑う。

そんな彼を見てると、胸がキュンとした。



───彼の事だから、あの日の事を覚えているかは判らない。

でも、僕が気付かない内に『好意』を抱いていた銀八を『好き』に為るには十分過ぎる理由だったのだ。