二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【3z】 刹那恋鎖。 ( No.63 )
日時: 2010/05/13 01:24
名前: 牙暁 ◆NIJKkC7BnA (ID: 3r6DhwLS)

 【青春雨模様】(後編)

大粒の雨が降り続いている。
小さな傘に私と桂さんの二人きり。

「京、」
「…何?」

「バレンタインデーとはいかなるものだ?」
「ブッ!!」
「汚いぞ!!」
「五月蝿い」

私は、冷静にツッコミを入れてくる彼に耳まで赤くしながら対抗する。
真逆、高校生にもなってバレンタインデーを知らないなんて、思ってもみなかった。

雅焔が言ってた通りに、純粋すぎだ。

「いきなり朝から女モノの様な箱を沢山女子からもらってなぁ…何なんだ此れは。爆弾か?」
「もっと普通に考えてみたらどうだ? 女子が男子に爆弾贈るか?」
「何なんだ此れは」


「はぁ」と溜め息を一つ吐いた私は、バレンタインについて、判り易く説明をした。


「…ほう…では此れは…」
「うん、多分桂さんの事好きな子達からの愛の叫びだろ」
「愛の叫び…くだらん。別にバレンタインデーじゃなくてもよいではないか」
「女の子はそーゆー行事が大好きなんだよ」

ふと、鞄にしまっていたチョコレートを思い出す。
桂さんに渡す為に、態々嫌いなチョコレートを作ったが、あれだけの数を貰っている。

別にあげようがあげまいが桂さんにとっては同じ事なのだろうと、鞄にしまっておく事にした。


勿 論 、 彼 の 事 を 好 き な の だ け れ ど 


「貴様はもう誰かにやったのか?」
「あ、いや別に」
「作っていないのか?」
「いや、有るけど…やめた」
「では、其のチョコレート、俺にくれぬか?」
「別にいいよ」
「なんか他のより大きそうだ「理由は言わない方がよかったんでないの? 桂さん」
「冗談だ」

顔では平然を装っていても内心ドキドキな私は、ほんの少し震える手で桂さんにチョコを手渡す。
其の時、彼は見た事もないような笑顔で受け取ってくれた。

私は、自分の顔がどんどん火照っていくのがわかる。「じゃぁな」と、思いっきり土砂降りの中を飛び出た。

此れが此れからの二人の切欠になるなんて事は、まだまだ幼い二人には知らない話。

  
  end...