二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【3z】 刹那恋鎖。 ( No.82 )
日時: 2010/05/15 10:30
名前: 牙暁 ◆NIJKkC7BnA (ID: 3r6DhwLS)

 【4月1日】

「銀八先生、少し良いですか?」
「おー、如何した?」
「大事な話があるんです」

何時も通りの放課後。
職員室に訪ねてきた僕を、だら─っとジャンプを読みふけっていた銀時が振り返る。

相変わらず仕事が無い時のだらだらっぷりはイラッとする程のものだ。

周りを見渡して、僕と銀八しか居ない事に、安堵を吐く。
此処までは計画通りだ。

僕は小さく溜め息を吐いて、銀八の隣の椅子に座った。

銀八が目を丸くする。

「……雅焔ちゃん、今日ご機嫌なの?」
「ん? んー、別に?」
「いやいや、ご機嫌だよね? 何? 何か有ったの?」
「!!??」
「………え、はい」

判りやすすぎだ。

肩を揺らした僕の頭をぽんぽんと軽く撫でてから、銀八は楽しそうに其れを見る。

「…ま、気を取り直して」
「おぅ」
「えっとね、先生」
「ん?」



「僕、転校する事に為ったんです」



「……………………え?」

予想より大分吃驚な内容だった。

「今まで有難う御座いました。フランスに行きます」
「イヤちょ……え? 何? ………転校?」
「はい」
「え………」
「…………」

予想以上の面白い反応に、僕はにやにやと唇を吊り上げる。
何時もは銀八にしてやられているから、にやにやは3割り増しだ。

僕は頭を抱える銀八を横目で見ながら、壁にかかったカレンダーを見やる。

……あ、まだ3月の侭じゃん。
だからじゃん。

「……あー、先生?」

そろそろカミングアウトしてあげようかと思った時───

「…………へ、?」
「駄目─── !!」
「うわっ!!??」

────押し倒された。

冷たい床の上でマジな表情で駄目駄目と繰り返す銀八に、僕はあまりの必死さに軽く引いた。
悪いが引いてしまった。

ヤダーと言って力加減無しにぎゅうぅと抱き締めてくる銀八に戸惑いながら「い、いやあの」と言い掛ける。

が、半パニック状態の銀八が聞いている筈もない。

首筋に銀八の息と髪がふわふわとかかってくすぐったい。

「………あの、」
「御免、此の際だから言うわ」
「は、はい? てか聞い……」
「俺実は雅焔の事スゲー好き。だから行かないで」

「……………」
「てか行っちゃ駄目だから。行かせないから」

あんな野蛮な場所に行かせません、と、照れ隠しなのか顔を上げずふざけた調子で言う銀八。

「…………ぶ」

吹き出した僕に、銀八はきょとんとした顔をやっと上げる。

予想通り、真っ赤だった。

僕は堪え切れず爆笑しながら、起き上がってカレンダーを指差す。

「あれ、捲ってないですよ」
「い、イヤ今そんな…」
「捲ってみて下さい」
「や、」
「捲って」
「………」

立ち上がった銀八が、べり、と一枚めくって、

─────目を剥いた。

僕は其の表情にも又笑いを零す。

「……『エイプリルフール』って知ってます?」
「………雅焔」
「くくっ……」

僕はにやにやと言う。
銀八を追い詰めるなんて、中々機会が有るものではない。

楽し過ぎる。

「……で、何でしたっけ?」
「………」
「僕の事、何だっけ?」
「……………////」

赤い顔で歩いてきて、僕の隣に銀八が沈み込む。

「………好きです」
「さっき聞きましたー」

ふふっと笑って、僕は銀時に抱きついた。

「……転校しないよね? 転校しないよね?」
「しませんよ」
「………じ、じゃあ、」
「ん?」
「……返事は? 返事は?」

何故繰り返すんだろう。

「………はい」
「…………良かったー////」

呟いて、銀八が抱きついてくる。



「…………お待たせしました」
「……本当に」

くすりと笑い合って、手を繋ぐ。

繋いだ手が、凄く温かかった。


  end...