二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【デュ.ラ】池袋浪漫【ララ!!】—1章《3》更新— ( No.19 )
- 日時: 2010/05/30 10:55
- 名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: CROAJ4XF)
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————————そこで、男達には見覚えのある、大きなシャベルが姿を現した。
シャベルは失速せずに、振り下ろそうとされていたパイプと男の額を強かに打ちつけ————そこでようやく失速し、硬質な音を奏でて地面へと落下した。
「……ってぇ……! って、さっきのシャベルっ!? ということは……さっきのガキも……」
「ガキガキ煩いですけどね。自分はこれでも高校生ですが何か」
「テメェ!」
硬直したままの帝人が微かに視線をコンビニの後ろへとずらすと、そこには帝人の肩ほどの身長の少年が立っていた。右目を隠す顎まで伸びた前髪が、少年を幽霊のように捉えさせる。しかし、前髪に隠された無表情の顔は、恐ろしく綺麗であった。まるで、全てが作り物のような。そんな美しさだ。
「……あ、さっきのヤンキーたちじゃないですか? 何ですか、また脅迫中ですか。今度は男ですか。そっちの趣味ですか。まぁ良いんじゃないですか。世の中には女の首しか愛せない男もいれば、人間という種族そのものを愛すど変態もいますから。だから例え貴方たちがそっちの方で今からその童顔男子高校生を何かしようとしても——————自分は、日常の断片として見ることが可能で」
「うっせええええええ!! てか違えええええ!! 何だこのく.そガキっ、ぶっ殺.してやるっ」
「…………あ、れ? 怒っちゃった、な。褒めてるつもりだったんだけど」
首を傾げた少年に、どこが褒めてるんだと突っ込みたくなったのは、決して帝人だけじゃあるまい。……まぁ結局、少年に突っかかっていった男は、ものの3秒後には相手のシャベルによって地に伏せさせられていたのだが。
「……よいっ、ほっ、せっ、やあっ」
覇気のない掛け声と共に、どんどん倒していく少年。その姿はまるで、ドミノ倒しを行っていく者のよう。ヤンキーたちに萎縮していた帝人は多少気が緩んだ。
が——————最後の1人、となったところで——————ヤンキーの1人は、窮鼠猫を噛むという名言を、見事こなした。
「あっ危ないっ!」
「……え?」
帝人が切羽詰った声をあげた時、少年はゆるりと敗者を背に振り返り————そこで目の前に銀色の何かを捕らえた。
そして、よくその光景を見て、少年は理解する。
男が落ち着かない足取りで、がむしゃらという風に手にしたサバイバルナイフを一心不乱に振り回しながら、少年にかかっていったということを。
「うわあっ!?」
「…………ってっ……」
彼の手に弱弱しく握られているサバイバルナイフは—————手元を離れ、奪い屋である少年の腕を深く切り裂いた。
ぽたぽたと赤い雫が地面を濡らす。じわじわと赤に染まっていくパーカーを虚ろな瞳で見つつ、少年は切り裂かれた腕を気にせず、シャベルを振るった。
がしゃり。
そんな呆気ない音と共に、同じ人物に2回倒されたヤンキーたち。ヤンキーたちはコンビニの前で仲良く意識をなくして昏倒した。
「……血が、抜けてる……」
「えっあっあのっ大丈夫君!?」
ぼたぼたと腕から出血している少年に駆け寄る帝人。少年は滴る血をぼーっと眺めている。どうやら血が頭に巡らないらしい。
「あ、あの、良かったら僕のうちにでも!」
「んーいやー別に結構……うおっ」
帝人が寄ってきたのを遮って歩みだそうとすると、少年はふらりと前かがみにうずくまってしまった。うずくまった少年の体を抱いて、帝人は命令口調で厳しく言った。
「駄目だよっ! こんな血が出てたら家に帰ってる間に倒れちゃうだろ! 貧血どころじゃすまないよ!? 僕のうちはすぐそこだから、黙って来て。手当てぐらいは僕も出来るから」
「うぃ? あー……うん……ありがとございます……てて……」
こうして、帝人と《奪い屋》である少年は、何の縁かは知らないが、出会ってしまった訳で。
……この出会いは、これから始まる池袋のとある物語に、大きく関わっていくこととなる—————