二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  - 悪 ノ 王 国 -  ( No.1 )
日時: 2010/05/17 18:29
名前: あめ ◆GJolKKvjNA (ID: 34QCmT3k)
参照: —君を悪だというのならば、僕だって同じ、血が流れてる—


光が溢れる教会の午後。
二つの産声が、教会一杯に響き渡った。

「女王様、おめでとうございます!」
「男の子と、女の子だわ!」
人々が、異口同音に祝福の言葉を言う。
二人の赤子は、幸せそうな顔をしていた。

「女王様、この二人の名前は決めておられるのですか?」
「———そうね、名前——」
女王は少し考えてから、思いついたようにぱっと顔を輝かせる。
「女の子は、リン。男の子は、レンがいいわ!」

さっそく、人々が喜びの声を上げる。
「リン様に、レン様!良いお名前だ!」
「元気に育ちそうね!」

周りが皆、楽しそうにしている中で、
ただ一人、悩ましそうに顔を曇らせている者がいた。

女王に仕えている、大臣だ。
大臣は、女王に静かに近づくと、
誰にともなく問いかけるような声で言った。

「女王様、お体の方は大丈夫なのですか?先のことを考えると、もう、ここで次に政権を担うのをどちらにするか決めた方がよろしいのでは———」

すると、女王は一瞬にして表情を引き締め、
大臣に向かってきっぱりと言い放った。

「この国は、代々女に王権を持たせているわ。貴方ももうお分かりでしょう?次に私の後を継ぐのは、リンよ。」

あまりにも強い言い方に、大臣が一瞬たじろぐ。
「———そ、そうでございますか。これは失礼を・・・」
「分かればいいわ。お下がりなさい」
「はっ」

女王の急な言動の変化ぶりに、大臣だけでなく、周りの者も圧倒されて、言葉を発せないでいた。
女王は溜息をつき、教会の者全員に向かって言った。

「聞いていたと思うけど、次の王座はリンのものよ。これは私が決めたから、逆らわないで頂戴。そしてレンは、リンに仕えさせる。召使いよ。」
「———召使いだと!?」
「それはいくらなんでも、あんまりだ!」
「女王様、考え直してください!」

「———静まれ!やかましいっ!!」
教会中が、水を打ったように静まる。
女王は乱れた髪を整えると、大臣に向かって言った。


「レンが召使いになるための教育は、大臣、貴方に任せるわ。知識の教養、社交マナー、政治についてなど、徹底的に教育して」
「・・・かしこまりました、女王様」

女王は満足そうに頷くと、
カツカツと教会から出て行った。

———しかし、皆は知らない。
女王をリンに継がせることによって、
最終的には、この黄の国全体を、

破滅の方向へ導いてしまう運命にあることに。