二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 戯言使いと鮮血の居候 ( No.1 )
日時: 2010/05/17 22:34
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: rzQvcE0M)

【序章】

『よぉ、欠陥製品……こいつ預けるわ』


それは忘れもしない土砂降りの雨の日の夜中
いきなり尋ねてきたのは鏡の向こうの自分

久しぶりに顔を合わせたはずなのに、ずぶ濡れのアイツはまるでそう感じさせなかった
昨日も会ったかのような錯覚を覚えさせる

長めの脱色された色素の薄い髪から大粒の雫を垂らしながらもいつもの笑みは変わらない
人を見下しているかのような、世界を甘く見ているかのような余裕の笑み

嫌な笑みだと、初めて会った時から思う

ちょっとお使いを頼むような
何かを持ってくるのを頼むような軽い口調で頼まれたのは預かり者

物ではなく、それは確かに者だった


『え…何?コレ』


『何コレって……人間だよ、人間…ちょっと訳ありでな』


まさか殺人鬼が人を助けるとは思ってもいなかった
人間失格の傍らに佇む小柄な少女

ずぶ濡れの漆黒の髪は無理矢理斬られたかのように肩口でバラバラで
大きな二重の瞳は闇を切り取ったかのように何処までも深い
雪のように色白な肌に堅く結ばれた紅い唇が映えていた
身につけているのは浅黄色の薄い浴衣
袖や裾がボロボロだ

そして、その少女の全身が深紅に染まっていた

土砂降りの雨に流されることなく染みついた濃い赤色は鮮やかに少女を彩る

訳ありなんて言葉で済まされないような状況の少女を見て驚愕している僕と
何でもない日常の中にいるような人間失格

結局最後までへらへらと笑い続けていた人間失格は少女を僕の部屋の玄関に勝手に入れて、勝手に去っていった
別れの言葉もありゃしない
そもそも最初からアイツからのそんな言葉は望んでいないけど

仕方なく、所在なさげにというか自分がどこにいるのかも分かっていないような
全ての機能が停止してしまっているかのような少女に問いかけた

目線を合わせるようにしゃがんで、闇色の瞳を見つめる
その瞳を綺麗だと感じる僕は相当歪んでいるのだろう


『キミ…名前は?』


我ながら呆れるほどどうでもいい質問
意外なことに少女はその問いに答えてくれた
堅く結ばれた唇を薄く開いてか細く息を吸い込む


『ボクの名前は、匂宮…匂宮 崩歌や』


匂宮、か…どうやらこの鮮血の居候は出夢くんの親戚らしい
零崎の奴も面倒なことに巻き込んでくれた


とりあえず、みいこさんに相談しよう