二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】 黒猫闇幻想。 07up ( No.44 )
- 日時: 2010/06/13 17:23
- 名前: 煌謎 ◆vBOFA0jTOg (ID: eHFPH3xo)
- 参照: 春の陽射しに、麦わら帽子
▼story08 「Straw hat」
「あっつーい……」
物干し場で洗濯済みの衣類を干す手をつい止める。
暇な時はこうして、土方さんの書類整理の手伝い、女中さんの手伝い等をしていたりする。
そして今、洗濯物を干すという手伝いをしていた。
今の季節は春。
しかし、今日はまるで夏の様な暑い空気が充満している。
「暑い。暑過ぎる」
其の所為か、湟謎は今日で数十回目の此の台詞を発する。
一応長年の付き合いの為、短気である彼の対応には大分慣れてしまっている。
縁側に腰かけ、其の横で蹲っている湟謎を横目に、僕は問う。
「水浴びでもする?」
「猫は水が苦手って事を知らんのか」
「元は人間じゃん」
僕はそう言うと、湟謎はチッと舌打ちをしてから僕を睨んだ。
「もう良い。俺は寝る」
そう言い捨てて、いそいそと部屋へ逃げる彼を見送り、僕は又休憩に戻った。
夏の太陽に似た、春の強い陽射しが後頭部に直で当たり、クラクラする。
少しは空気読んで、涼しくして欲しい位だ。
そう思うが、太陽は嘲笑う様に僕を照らし続ける。
額から顎に、顎から首に滑り落ちる汗。
「あたっ!」
突如額に走った衝撃に、つい声を上げてしまった。
多少驚いたが、痛みは然程無い。
衝撃の発信源は……ミントンの……
すると、向こうの方から猛ダッシュで走ってくる人物が目に入った。
砂埃を巻き上げながら止まった彼は、僕の目線まで背を屈ませた。
「ゴッゴメンね嘉神さん! 大丈夫!? 怪我は無い!?」
大層焦っているのか、アワアワと額に触れる彼。
幾ら油断していたからと言って、此れ位で怪我をする程ヤワじゃない。
其の旨を伝えると、安心した様にホッと息を吐いた。
「ホントゴメンねぇ。俺まだノーコンだから……」
「いいえ。ミントンの練習ですか? 山崎さん」
「えっ」
目を大きく開いて固まる山崎さん。
練習じゃなかったのだろうか。
「俺の名前、知ってるの?」
「はい。勿論。山崎退さん」
もしかして、そんな事で驚いていたんだろうか。
まだ新選組に入って日は浅いが、隊士達の名前は覚えつつある。
少しでも早く仲良くなりたいと思い土方さんに貰った名簿と、毎晩睨めっこしていたのだ。
まだ顔と名前が一致しない事もあるが、山崎さんの名前を間違える訳が無い。
「だって、そんなもの持ってるのって、山崎さん以外に居ないですよ」
右手に、ミントンのラケット。
クスクスと笑うと、彼は後ろ手に其れを隠してしまった。
「すみません。変な意味じゃないんです」
「ううん。でも嬉しいよ。名前、覚えててくれて」
ヘラリ、と笑う山崎さん。
其の無防備な笑みに釣られて僕もヘラリと笑った。
「其れにしても、あっついねー」
日射病になっちゃいますよ。
と言い空を見上げると、直視できない程の光線を飛ばす太陽があった。
ジージーと鳴き続ける蝉達。
単体なら風流だと感じる余裕も有るだろうが、こう何匹もに一度に鳴かれるとたまったもんじゃない。
長く生きられない彼等に、そんな事を思っては失礼なんだろうけれど。
「そうだ! ちょっと待ってて」
何かを思い出したのか、駆けて行った山崎さんは何処かへ行ってしまった。
暫くして、パサ…と頭に何かを被せられた。
「此れ……」
広いツバが作る、濃い影。
「麦わら帽子。頭守っておかないと、本当に日射病になっちゃうよ」
「有難う御座います! 凄く助かります」
其の効果は、見た目の華奢さを裏切りかなり絶大で。
憎き光線から、僕を守ってくれている。
「大切に、大切にしますね」
「うん。有難う……雅焔ちゃん」
「…………はい。退さん」
クスクスト笑イ合ウ僕達ニ、
夏ノ風ガ一陣吹ク_
_麦ワラ帽子ノリボンガ、少シダケ、揺レタ_