二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】 黒猫闇幻想。 09up ( No.93 )
日時: 2010/06/13 17:27
名前: 煌謎 ◆vBOFA0jTOg (ID: eHFPH3xo)
参照: 白い波が覗きこむ未来なら、其れでいい

▼story10 「Rabbit」

早朝、僕は足早に万事屋に向かって走った。

唯が話していた時、妙に『攘夷戦争』に引っ掛った。
以前、湟謎が入手した情報によれば、攘夷戦争には銀さんが参加している筈だ。
なら、此の同姓同名である『雅焔』の事を、知っているのではないかと思い僕は直ぐに行動に出た。


「って、こんな時に限って留守かよ……」

何度呼び鈴を鳴らしても、一向に出てくる気配は無い。
そもそも、中に人の気配が感じられない為、居留守ではない事は確かだ。

「急いで損した……」

大きな溜め息を吐き、玄関から家の前の通りを眺める。
天人が町を当たり前のように闊歩している様は未だに慣れない。

すると、道行く人の中に赤い番傘を差している人が歩いている。
今日の天気は快晴、雨なんて一粒も降っていない。こんな日に傘を差すのは夜兎であるという証拠で。
つまり其れは神楽て事だ。
銀ちゃんと新八くんが居ないのが気になったが、まぁ先に帰って来たのだろうと思い、僕は其の場から声を掛けた。

「おーい、神楽ァ! おはよォ!」

すると神楽はキョロキョロと周りを見回している。
何処から声を掛けられたのか判っていないようだ。可愛いなぁ。

「上だよ上!!」

手を大きく振りながらそう言うと、神楽は僕を見つけたようだ、此方を振り向いた。
……あれ。神楽ておさげだったっけ。て言うか、あんなに背高くないよね。

「誰だあれ」

すると其の人は此方を向いてにっこりと笑い、声を掛けて来た。

「あ、此処に居たんだ。探す手間が省けたヨ」

そう言うと彼は万事屋の階段を上り、僕の前にやってくる。
にこりと笑う此の男を、僕は観察するように見ていた。

髪と目の色、透き通るような肌の白さは神楽と同じだ。という事は神楽と血縁関係があるのだろうか。厚かましい感じも似ている。
そして何よりも此の貼り付けたような笑み。はっきり言って気に食わない。
無表情でいた方がまだましだ。

「あれ? 俺の事忘れちゃった? 神威だヨ」

彼、神威の言い方は、まるで以前僕と逢ったような言い方だ。
けれど、神威など知らない。僕にとって今日逢うのが初めてだった。

「何故僕の事を知ってんですか?」

「君……雅焔じゃないの?」

彼の言う『雅焔』は、きっと戦場に立った方の『雅焔』の事だろう。
銀さんが留守なら、此処に長居するのも時間の無駄だ。

「……貴方の言う『雅焔』は多分僕じゃないと思います。では僕は急いでいるので、又」

そう言って僕は地面を蹴り、屋根に飛び乗った。

「ヒュー」

彼が口笛を吹く姿に眉を寄せた僕だったが構ってもいられないと思い、再度背を向けた其の時だった。

「ねぇ」

「!?」

反射で右へ避け、其の勢いで又もや後ろを向く。

「ちょ、なにすんの」

「君身軽そうだったからつい足が出ちゃったヨ」

先程と変わらぬ笑顔で一歩一歩近寄ってくる神威。
其れを前にし僕は急に怖じ気づき、相手の間合いに入らぬようにと後退してゆく。

「君さぁ、俺と殺らない?」

「は? 何言って……」

「まぁ答えは聞いてないけど」

そう言うが早いか、神威は屋根の瓦を割る勢いで蹴り、一瞬で僕に寄ったかと思えば足を振り上げていた。

「まじでか」

瞬間、蹴りを避けなければと思った僕は咄嗟にしゃがみ込み、

「えっ……!!」

神威の後ろの回り込み、其の侭隙だらけの背中を思いっきし蹴り跳ばした。
男は其の体勢の侭屋根に叩きつけられた。

「悪いけど、僕は君の事なんて知らないから!!」

神威が気絶したと思った僕は急いで屋根から屋根に飛び移り、屯所へ急ぎ帰った。

(仕方が無い。明日にしよう)

一度も振り返る事もしないで、只走り続けた。




「やっぱり雅焔だった。あーあ。益々気に入っちゃった」

彼は眩しく輝く太陽の下で、微笑を浮かべて呟いた───