二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】 黒猫闇幻想。 12up ( No.113 )
日時: 2010/06/13 17:29
名前: 煌謎 ◆vBOFA0jTOg (ID: eHFPH3xo)
参照: 一度ある事は二度もある

▼story12 「Asura」

今日も僕は銀さんに逢う為に、万事屋に向かう。
しかし、残念な事に今回も彼等は不在であった。
仕方無く、僕は銀さんが帰ってくるまで、玄関前で待つ事にした。

夕方に為って頃だろうか。
流石の僕も待つ事に飽きて、今では万事屋の近くの公園のベンチで腰掛けていた。
少しずつ日が落ちてきて、人も少なくなってきている。

そ ん な 時

「あれ。雅焔?」

前方から僕の名前を呼ぶ声がして 顔を上げると、其処には銀さん達が、夕陽を背にして並んでいた。
何故か皆はボロボロで、特に銀さんはボロボロな上、お腹を摩りながら僕に向合っている。

僕が事情を訊くと、今までお妙さんの処に居たと言う。
彼等のボロボロさと、銀さんのお腹の事で訊いてみたが、皆は身震いを起し目を逸らした為、僕は其れ以上を訊かなかった。


「で、雅焔は何してんだ? もう日が暮れるぞ」

其の時、何故か一瞬銀さんが見せた、辛そうな顔。
僕は見逃さなかった。

「銀さんに、訊きたい事が有るんだ。『嘉神 雅焔』の事で」

僕が彼女の名前を出すと、又一瞬、銀さんの表情が険しくなる。
勿論僕が其れを見逃す筈が無い。

「あれ? 『嘉神 雅焔』って自分の事ですか?」

新八が僕の台詞に首を傾げながら、問う。
違うよ、僕は首を横に振った。

「銀さんなら判るでしょ? 共に闘った戦友の事」

僕が問質すと、銀さんは更に黙り込む。
銀さんは少しの沈黙を置いて、重い口を開こうとするが銀さんの言葉を遮って誰かが又僕の名前を呼んだ。
 
「雅焔、みーつけた♪」

此の声に聞き覚えがあって、僕は急いで振り向く。
彼が、神威が僕の直ぐ後ろに立っていた。
神威は僕と目が合うなり、僕の手を掴んでくる。

「おぉ神威じゃねーか。久しぶりだなァ……ってなんでてめェが此処にいんだァァァ!!!!」

銀さんは神威を見るなりいきなり叫んだ。隣にいる二人も目を見開いている。
神威は何も気にしていないのか、「お久しぶりーお侍さん」と言いながら尚ニコニコしている。
するといきなり神楽が神威に飛びかかろうとした。

「こンのバカ兄貴ィ!!!!」

「か、神楽ちゃん!!」

其れを新八が必死に止めようと羽交い締めにして踏ん張っている。其れでも神楽はジタバタともがき、新八から逃れようとしていた。
其の表情は今まで見てきた神楽からは想像もつかない程の形相だった。

「何しに来たアルかァ!!」

「落ち着いて神楽ちゃん!!」

「つか何してんだてめェ」

銀さんは此方に歩いて来ると、僕をいきなり抱き寄せた。突然の事に対応出来ない僕はされるが侭に銀さんの胸板に頬を寄せる形になる。
彼の顔を見上げればじとりと神威を睨んでいた。

「気安く手なんか握ってんじゃねェよ」

「ねぇ、俺雅焔の事気に入っちゃった。だから頂戴?」

「絶対やだね。雅焔はやらねェよ」

「雅焔は絶対連れてなんて行かせないネ!!」

皆好き勝手に言っているが、取り敢えず僕について言い争っているのは判った。
というか何故神威が僕を気に入ったのかが判らない。何か特別な事をしたわけではないのだが。

まぁ僕は神威に着いて行く気はさらさらないし、此れ以上事態がごたごたになるのはご免被りたかったので、僕は彼にはっきり言おうと口を開いた。

「ねぇ。神威」

「ん? 何?」

「気に入ってくれたのは嬉しいけそ、僕当分此処を離れる気はないから」

そう僕が言うと、神威は少しの間黙り込み、「そう」と言ってにこりと笑った。

「雅焔がそう言うなら今回は諦めるヨ。でも、次は連れて行くからネ」

神威はそう言い銀さんに抱き寄せられていた僕を引っ張ると、ちゅっという音を立てて僕の頬にキスをした。
今日は突然な事が多い日だ。

「てんめェ!! 何してんだァァ!!」

其の侭神威は笑いながら傘を差し、姿を消した。
残されたのは呆然とする僕と新八、そして怒り狂う銀さんと神楽だった。


其の後、話の腰はかなりずれ、其の侭僕は迎えに来た土方さんと共に屯所に戻った。

此の日も又、銀さんの話を訊けなかった。