二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】 黒猫闇幻想。 05up ( No.35 )
- 日時: 2010/06/13 17:14
- 名前: 煌謎 ◆vBOFA0jTOg (ID: eHFPH3xo)
- 参照: 心の器が強いだけでは意味がない
▼story06 「Silver」
本日は快晴。
暑いわけでもなく、寒いわけでもない。丁度良い気温の午後の事である。
此の前、沖田さんに観光に付き合って色々な事を詳しく教えて貰ったが、はっきり言うと未だ判らない事の方が多い。
だから今日は一人で、隅々まで江戸を観光し、少しでも早く此処の生活に慣れようと外に出ていた。
先ず何処に行っていいのか判らず、適当に歩いていると、僕は何時の間にか、雑木林の様な場所に居た。
「……何処? 此処」
自分ってこんなにも方向音痴だったのだろうか。
こんなにも、馬鹿だったのだろうか。
僕が混乱していると、遠くから何やら騒々しい声が聞こえてきた。
しかも其れはどんどん此方の方に近付いてくる。
「定春ー!!! 待つネー! 何処行くアルかー!?」
「ちょっ、神楽ちゃん! 待ってよー!!」
そんな声が聞こえた直後、僕の目の前に白い大きな犬が飛び出して来た。
「……!!? 何此れぇぇえぇっ!?」
僕が悲鳴を上げるのにもお構い無く、其の犬は嬉しそうに此方へ飛び掛かってくる。
いきなりの出来事に避ける事も出来ずに、僕が覚悟を決めた其の時、銀髪の男が僕と其の犬の間に立ちはだかった。
其の男は向かってくる犬を見据え、ニヒルな笑みを浮かべると、
「げはぁっ!!」
──吹き飛ばされた。
其の人は綺麗な弧を描いて低めの木々の向こうへ落ちて行った。
僕が其の光景に唖然としていると、チャイナ服の少女と眼鏡をかけた少年が現れた。
「定春ー! 勝手に行っちゃだめアルよー」
「いきなり走り出したから吃驚したよ。疲れた……」
僕は状況が掴めず只彼らを見つめていると、二人はようやく僕の存在に気が付いた。
「あれ、女の子がいるヨ。こんな所で何してるアルか?」
「そういえばさっき女の子の悲鳴が聞こえたよね……もしかして貴方の声だったんですか?」
「あ、はい……おっきな犬が、突然……」
其れだけ答えると、眼鏡の少年は申し訳なさそうに謝ってきた。
「そうだったんですか。驚かせてしまってすいません!」
「いえ、構いません」
そう言うとチャイナ服の少女が不思議そうに尋ねてきた。
「そういやお前どうやって定春を防いだアルか?」
「そういえばそうだね。見た処そんなに力があるわけでも無さそうだし……」
眼鏡の少年も不思議そうに見てくるので、答えようとすると、其れを遮って声が聞こえた。
「大丈夫か? 嬢ちゃん」
木々の間から先程の銀髪の男が、身体中に付いた葉っぱを払いながらのそのそと出てきた。
「あ、はい。有難う御座います」
「ん? 顔見知りアルか?」
僕がぺこりと頭を下げるとチャイナ服の少女が不思議そうに聞いてきた。眼鏡の少年も僕と銀髪の人を交互に見ている。
「さっき此の人が庇ってくれて」
「一般人が定春に飛び掛かられたら無事じゃ済まねーだろ? だから銀さん身を呈して守ってあげたってわけよ」
「決してかっこいい守り方ではありませんでしたけどね」
「新八の言う通りアル。かっこつけてんじゃねーよ天パ」
「あっ、神楽てめー馬鹿にしたな!!!」
二人は目の前で物凄い勢いで言い合いを始め、其の横で少年は呆れ返っている。
僕が其の光景を只呆然と見つめていると、眼鏡の少年が気を遣うかのように口を開いた。
「すみません、騒がしくて。あ、遅れましたが僕は志村新八と言います。新八って呼んで下さい」
座り込んだ侭だった僕に、新八君が手を差し伸べてくれた。
其の手に掴まって立つと彼と目が合い、なんだか照れ臭くて思わず笑い合う。すると其の様子を見てか二人が又騒ぎ出した。
「新八ぃー! 何お前だけ抜け駆けしてんだ!」
「私神楽言うアル!」
「あ、てめーもか! 俺坂田銀時って言いまーす! 銀さんとか銀ちゃんでいいから!」
「銀ちゃんなんて天然パーマネントで良いアルよ」
「黙れ酢昆布娘! あ、因みに新一はダメガネで良いから」
「なんで僕まで巻き込んでんだよ! 後新一じゃねーから! 新八だから!」
次は三人で言い合いを始めた彼らを見ながら、僕は小さく笑った。
すると又三人は此方を見てきて少し恥ずかしそうに頬を掻いた。
此れが、『万事屋ファミリー』との出会いだった。