二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: <  脱線 ! >【銀魂】 ( No.13 )
日時: 2010/06/01 19:43
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:                ────もう暴れまくれ!!

< 二 ! >


「いやあトシ!! 俺感動しちゃったよ! 江戸にもしっかりした強い女の子がまだ居るモンなんだなァ!!」
「あーあーそうだな、つかこれ何回聞くんだよ! もう耳にタコが出来るくれェ聞いたっつの!」

屯所の廊下を歩きながら、土方と近藤はそんな会話を繰り広げていた。
ファミレスからの帰り道でも、寄り道したコンビニでも、屯所の中でも、近藤はよっぽど感動したのか、そう嬉しそうに話すのであった。

「そういや、近藤さん」
ある一室へと繋がる襖の引き手に近藤が手を掛けた時、土方が思い出す様に言った。

「ん? 何だ?」
「今日、とっつぁんが何か頼みがあるって言って屯所に来るんじゃ……」

襖をバッと開けると、そこには胡坐を掻いたもの凄い威圧感を醸し出す松平片栗虎が居た。

「遅いわァァァァア!!!」
「「すんまっせーん!! ホントすんまっせーん!!」」


< 第二訓 上司の言う事はきちんと聞け >


「まったく…しっかり待ってると聞いて安心して来てみりゃこのザマだ・・・、上司として情けねェや…」

松平は煙草の煙をプカァと吐き出すと、そう皮肉っぽく言った。

松平の前に座った土方と近藤は、気まずそうに顔を顰めた。

「ちょっ、それは言い過ぎじゃね? 俺達だって貴重な休み時間を無駄にはしたくない訳だし…」
近藤がそう少しだけ反論するが、その威圧感に参ってしまい、渋々口を閉ざす。

「そんな事ァどうでもいい、とっつぁん。頼みって何だよ」
「ん? あァそうだったな…、面倒臭ェな」
「いやアンタが最初に言ったんだからね!?」

松平の身勝手な言動に、2人共大きなため息を吐く。
煙草を挟んだ指近くまで焦げが来ると、松平はグジュッと灰皿に潰した。

暫し沈黙が流れる。
近藤と土方は、「え、何、そんな重要な事なの!?」と冷や汗が出そうになる。

「頼みっつーか、命令な」

松平は左右の膝の上に両手を乗せ、そう呟いた。

近藤と土方は生唾を飲み込む。


「…お前等、町のどっかから強ェ奴探して用心棒にしろ。異論は認めん。んじゃ、おじさん帰るから」
「待ってェェェェェ!! 聞きたい事が山ほどあるゥゥ!!」

そうさっぱりと言い切り、スッと立ち上がる松平の足を、近藤がそう叫びながら掴んだ。

「えー何? おじさん今日可愛い娘とご飯食べに行くんだけど」
と松平は怪訝そうな顔をした。

土方は訳の分からない顔で松平に言う。
「何で用心棒なんか雇うんだよ、人手はもう足りてるっつーのに」
近藤も続けて、
「そうだぜとっつぁん! つか何で今更? 今まで必要だった事もねーしさ!!」
と疑問をぶつける。

松平は面倒臭いと言わんばかりの顔でまたため息を吐き、ドカッとまた座り込んだ。

「お前等知らねーのか? 最近のニュース」
「え、何それ」と、近藤は首を傾げる。

しかし土方は、やっと見当がついた様だ。
「ああ、そういう事か…。近藤さん、最近江戸の各地に置かれている幕府の施設に攘夷党の奴等が侵入したらしい」
「侵入しただけなら良かったんだが…、何でも過激派の様でな。その場に居た奴等は全員1人残らず殺された。もうここまで来たら言いたい事は分かるな?」

淡々と喋る2人に、近藤は思わず驚く。
そして、何とか近藤なりに理解したらしい。

「じゃあ、その用心棒の件は…」

近藤がここまで言うと、松平は大きい声で

「そう!! もしかしたらこの屯所にもソイツ等が来るかもしんねーから、お前等が選りすぐった強ェ奴を味方につけとけって事だよこの糞ゴリラァァァァア!!」
と近藤を指差しながら叫んだ。

「分かった! それは分かったけど何で最後悪口?」
近藤はちょっと涙目だった。

「別にィ、おじさんお前等の事を信用してないって訳じゃねェよ? お前等の手にかかればあんな馬鹿らしい集団、ちょちょいのちょいだろうよ。だがな、万が一っていう事があるだろ? 
施設に置かれてた奴等だって兵ばっかりだった。用心棒は言うなれば保健だよ保健。得策は使うに越した事ねェしな」

松平の言う事に間違いは無かった。
近藤も土方も、うんうんと首を縦に振った。

しかし、そんな用心棒の人材が簡単に見つかるだろうか。
土方は腕を組み、少し考えた。


江戸の各地に置かれた施設。関係者以外立ち入り禁止区域。
江戸の機密情報などがどっさりあり、その施設から新たな情報を幕府に届ける働きを持つ。
そこに殴りこんできた過激派攘夷集団。関係者は全員殺戮された。
情報は何とか死守出来たものの、次に矛先が向くのは真選組だろうと松平は考えたのだ。
用心棒を雇うというのは良い考えだと土方は思う。だが。
兵の関係者を簡単に殺戮できる集団に、用心棒を雇ったところで対抗できるのか?
自分等も自分等の意思で動き、自分自身を守らねばならない訳であるのだし、もしかしたらその用心棒自身が足手纏いになったりしないだろうか。
我々の軽率な判断で使えない用心棒を雇ってしまっても意味が無い。

「…とっつぁん、ちょっと考えs」

土方のその不安そうな声を、

 「そうだなとっつぁん、よし、分かった! トシ! 今から用心棒の人材を探して来ようじゃないか!!」

と、近藤が遮った。

「……おい近藤さん」

土方の言い分も途中で遮り、近藤はもうやる気満々であった。
近藤は土方の意図を察したのか、土方にフッと笑いかけた。

「お前の考えは俺にも分かるぞトシ。だがな、とっつぁんの言う通り、得策は使うに越した事ねェんだ。
 というか俺等はもう、強そうで頑丈な子を見ているじゃないか!!!」

土方は6秒くらい考えてから、やっと近藤の言いたい事が分かった。

「…アンタ、アイツは女だz」
「じゃあとっつぁん!! 俺等ちょっくら行って来るわ!!」 
「人の話を聞けェェェェエエ!!」

土方と近藤がぎゃあぎゃあ言い合っている間、松平は携帯で会話をしていた。

「ああもしもし栗子? 今日のご飯はフレンチにしような」

「アンタも人の話しを聞けェェェェェ!!」

土方の怒号が、悲しく屯所内に響いた。

< 続く ! >