二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: <  脱線 ! >【銀魂】5うp! ( No.39 )
日時: 2010/06/28 19:59
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: MDpJUEHb)
参照:                ────もう暴れまくれ!!





< 六 ! >


「だからずっと言ってんだろうが!!」
吸っていた煙草をジュッと携帯灰皿に押し付け、土方はそう呆れたように怒鳴った。

「あんな小娘に真選組の用心棒任すなんざァ荷が重すぎんだよ!! つか屯所は女人禁制だって何回言ったら分かるんだアンタは!!」

「だってェ、あの子超超超ちょーう強かったじゃん!?」
近藤は遠い目をして、うっとりと空を仰いだ。
「お妙さんの様な儚げで可愛らしい外見とは裏腹に、悪には正義の鉄槌を下すという強さ! しかも目からビームが出る!!」
「出ねェよ」

土方は重苦しいため息をついた。

空は快晴のかぶき町。青く輝く夏空が心地よい。
〝 用心棒なら、ファミレスで見たあの子がいい。あの子を探しに行く 〟 と聞かない近藤。
土方は仕方なく、探しに行こうとする近藤に着いてきたが、道中何度も説得した。
が、聞かないのがこのゴリラであって。

「……なあ、近藤さん」
新しい煙草に火をつけると同時に、土方は近藤に問う。

「何で、あの小娘にこだわるんだよ」
代わりはいくらでも居るだろ、と土方は言いたかった。

土方の意見は正論であった。
いくら真選組局長で、ゴリラで、ストーカーであっても、一目見ただけの少女に危険な重荷を背負わせるなんて事は絶対にしない。
それが近藤である。少なくとも、土方や真選組の隊士達が信じているものは。

それに、いたいけな少女を用心棒にした、なんて事が世間にバレたら非難轟々なのは目に見えているはずだ。
何を思ってあの少女なのだろう。

近藤は少しうーむと考えてから、ニカッと笑った。

「運命だよ、トシ」

「は?」と土方は首を傾げる。

「たまたま入ったファミレスで、たまたま入った強盗を、たまたま居ただけの女の子がぶっ倒して皆の平和を守った。そして帰ってみればたまたまとっつぁんが居て、たまたま用心棒の件を頼まれた。どうだ、すげェ偶然だろう?」
近藤は続ける。
「俺だってあんなまだか弱い少女に真選組の用心棒が務まるなんて思っていない。危険な目に合わせる事も絶対出来ない。だが、強盗をぶっ飛ばした時のあの娘を見たとき、俺ァこの子はすげェ奴になると思ったんだ」

その言葉を聞いた時、土方はもう一度考え起こしてみた。
ファミレスで少女を見た時、土方も隠しきれぬ興奮と感動が胸にあったのを覚えている。
全て偶然の連鎖なのだ。これはもう奇跡に等しいのだ。

近藤は前を見据えて、むんと胸をはった。

「たまには運命を信じてみるのも、悪かねーだろ?」



< 第六訓 偶然を計算する事は出来ない >


ザーッ、ザザーッと、土方の制服に入っている通信機が鳴った。
そして数秒後、砂嵐のような音の中から、ある人物の声がした。

≪こちら沖田でさァ、土方さん聞こえますかー≫

沖田であった。
気だるそうな声は、少し土方をイラつかせた。

「あ? どうした総悟、何かあったのか」
≪いやーちょっとー、ムグ、あのへふねーモシャモシャ、ひょっとひまびょうひんにモキュ、いへへふねーモグモグ≫
「テメェ何か食ってるだろ」
≪へ? ゴッキュン、まさかァ、勤務中にドラ焼きなんざ食べてませんよ≫
「嘘が丸見えなんだよこのサボリ魔。……ったく、用件は何だ」
≪あー、ちょっと今俺病院に居てですね、万事屋の旦那が差し入れてくれたドラ焼き食べながらゆったりしてた所なんですがねィ≫
「エスケープ報告か? つか何で病院に居んだよ、つか万事屋が何で居んだよ」
≪あーもしもし大串君? あの金魚どうなった?≫
「だから大串じゃねェっつってんだろうがァァァァ!! 金魚って何だ!! テメェがどうしてここに居る!?」
≪怪我した嬢ちゃんを沖田君と送りに来たんですー。働かないテメーの部下と違って? 俺は皆のヒーロですから? まぁこれくらいの事はしねェとなー、ガッハッハッハ!!≫
「テメェそこで正座して待ってやがれ切り刻んでやる」
≪ハッ!! テメェに切り刻まれるくらいならオウムの餌になった方がマシだね!!≫

ぎゃーぎゃーわーわーと果てしなく続く論争。
近藤はそれを笑って見ていた。

そして。

≪あんコルァこのマヨネーズ星人g、いい加減にしてくださいよ!! ここは病院です!!、え、あ、すんまっせん……≫

どうやら看護師に怒られたらしく、そこから五月蝿い銀時の声は聞こえなくなった。

≪……とりあえず土方さん、病院に来てくだせェ。こういう面倒くさい事、俺分からねェでさァ≫

この沖田の言葉を境に、そこでプツンと連絡は途切れた。

「ったく……、帰ったら始末書だな、あの野郎」

土方はそう不機嫌に言う。

「まあまあ」と近藤は土方を宥める。

「とりあえず病院に行こうぜ。あの女の子探すのは後でもいいからさ」


< つづく ! >