二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ家の毎日【VOCALOID】 ( No.232 )
日時: 2010/06/04 13:16
名前: *yuki* ◆R61No/hCwo (ID: yjS9W/Zh)

「レン!」

…二人がいってから少したち。
入れ替わりのようにリンがやってきた。

にこにこと笑っている。

「…あのさあ、何をたくらんでるわけ?お前が手伝うとか。ありえないじゃん。
お礼になんかおごれとか言うつもりか?」

そう軽く言うと、

「………………なにそれ。」

「えっ。」

「そんなに、私を、疑ってるの…?」

…かすかにふるえた声が、かえってきた。
そ、そんな泣くようなこと…言ったか?俺。

「リン?おい、リン…。」

返事はない。
でも、そのかわり肩の震えは大きくなっていく。

「…わ、悪い。
ほら、だから…泣くなよ…」

よくわけもわからないままとりあえず謝ると、リンは少し顔をあげた。

さっきの笑顔とは全く違う、赤い眼。

…そういえばリンの涙って、久しぶりに…見たな…

いつもふざけてて、迷惑ばっかかけるリン。
でも、彼女だって、…泣きたくなるような時が、あるのだろうか。

とまどっていて、目の前の情報を、完全に処理できていない思考回路。
その行き詰まった思考のなかで、俺は、ぼんやりとそんなことを考えていた。







…今、何時だろう…。

暗くなってしまった空には、リンの泣き声だけが、静かに響く。

俺はなにも言わずに。いや、なにも言えずに。
ずっとリンの隣に座っていた。


何歳のときだったかな、前もこんなふうになった気がする。



『レン!ね、ね、聞いて!』

『?おいちょっと、ころ……ああ、もう。』

5歳のときだ。

なにをあんなに喜んでたんだろう、それは記憶には残ってないけど。
とにかく…笑っていたリンが、転んでしまって、大声で泣き叫んでいたのは、覚えている。

なかなか静まらなかったリンは、泣きじゃくりながら、俺の袖をひっぱり、
『ここにいて。』
と言った。
そう、確かにそう言ったんだ。

どうすればいいのかわからなかった。
まだ幼い俺は、なにもわからなかった。

だから、なにも言わなかった。

ただ、そばにいるだけ。

『それでも、いいの?』

口から流れ出た言葉に、リンは少し驚き…



「…レンが一緒にいてくれたら、私は嬉しいよ。」

って、言ったんだ……
え?

「リン?」

顔をあげると、そこには、ぐしゃぐしゃになりながらも、わずかに微笑んでいるリンがいた。

「……もう、平気なの?」

うなずくリン。
そして、ゆっくりと眼をとじた。

「ゴメンね、いきなり泣いちゃって。
…わかってるんだよ、冗談だって。」

少しずつ、リンの口が、言葉を紡ぎだしていく。

「でも、レンに嫌われちゃったんじゃないかって、
不安になるの。
そんなの、私、嫌だから…」

「え…?」

リンの言葉に、とまどう俺。
そして、それを見て…

「あはは!」

!?

いきなり笑ったリン。えええ?

「ハハ、からかっただけだよ!レン。
大丈夫、本気では泣いてないから。」

「…ちょ、どういうことだよ、それ…」

クスクスと笑う。いや、マジでどういうことだよ。

「…べつにね、ちょっと…試しただけ。」

「試した…?」

なにを?

「な・い・しょ!」

そう言うと、リンは勢いよく立ちあがり、頬をぬぐった。

………まったく…まったく状況がつかめない…。

「おい、待てよっ!」

俺をおいて中に入ろうとするリン。
慌てて声をかけると、こっちにふりむいて。

「あ…じゃあ、やっぱ…うん。」

リンは考え込むようなそぶりをし。

「罪滅ぼしで、私が残りはやっとくから!レンは休んでて!」

元気よくそう言った。