二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: VOCALOID! 【 リクエスト募集中 】 ( No.32 )
- 日時: 2010/05/31 18:51
- 名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: xYJBB/ey)
木と木の間を通り抜ける、不気味な風。
その風に乗って音を奏でる、緑の木。
こんな森に一人で行ったら、大人も子供も関係なく泣いてる姿が想像できる。が。
カイトを探すメイコは泣いていられない。恐怖に震えて、冷や汗を掻く。が、それでも泣かない。
理由は簡単。自分より年下に泣き顔を見られたくない。見せたくない。心配は私がする。たった、それだけ。
「しかし……本当に不気味だわ」
メイコは、声を震わせて言う。
進んでも闇、闇、闇。音だって木と風の怖い音だけ。たまに、鳥やリスの鳴き声がするが、それもまた怖い。風と木以外の音が鳴っては、剣を構えるメイコ。
それでも、気付いたら、動物。だから、斬れない。
動物と分かった時には、緊張感を解き、溜息をして、また緊張を張り巡らせる。それの繰り返し。
誰かがメイコに襲い掛かる。驚愕と恐怖でメイコは思い切り叫ぶ。そして、思い切り剣を振り回す。目を瞑りながら。誰かを殺す姿なんて見ないように。誰かが切り裂かれる痛いものを見ないように。
でも、大きい悲鳴が痛々しい。
剣を止めて、静かに目を開く。
そこには赤く染まり、痛々しい姿の、野生の熊。
「こ、ろした……生きもの、なの、に……」
倒れている熊を見て、涙を堪えきれないメイコ。
ついには大声で泣き出し、そのあとに森の最初で会った“夢”の声が聞こえた。
「どんなに泣いても、どんなに足掻いても、選んだのは君だよ? それくらい、覚悟してなかっただけでしょ?」
可愛らしい声なのに、歪んだ、歪んだ笑みの声。
その声に気付いたメイコは、大声を抑えて、夢の言葉を呑み込んだ。
「人のことを助けるだなんて、自分のことはどうなのさ? 自分が強いとでも?」
「——そうね。結局! 皆、自分だけ。自分が恋しいのよ、私も、カイトも!」
夢の言うことに同感して、自己中心的人間を語るメイコ。怒りながら、真剣に。夢は、適当に頷いている。
「そして、あなたも結局そうなんでしょ!?」
怒ったメイコはそう言って夢を斬った。