二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: VOCALOID!  【 うっち〜様リク終了! 】 ( No.69 )
日時: 2010/06/15 17:18
名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?351687

 彼女は自分に溺れた。美しすぎる故に、溺れた。
 溺れた彼女は、もう一人の彼女に消された。

 緑の少女——ミクは、幼い頃から可愛く、よく誘拐されたものだ。
 最初は三歳。天然なミクは、黒ずくめの服を着ている誘拐犯でも、怪しまず、話す。
「——おじさん、今日、おそうしきだったの?」
無邪気な質問。夜空に似ている黒の服を着ていた誘拐犯は、何も言えない。
 「……それより、嬢ちゃん。欲しい物なんか、あるかい? おじさんが何でも買ってあげるよ」
騙されない、台詞。でも、そんな誘拐犯の陰謀に気付かないミクは、顔を輝くように喜ばせてから「ほんと!?」と言う。
 誘拐犯は、笑う。誰かを見つけたような、不気味な笑顔で。

 これから四年後だろうか、ミクが人を惑わすようになったのは。
 その時のミクは本が好きだった。煌びやかな世界の本が大好きだった。
いつしか、この世界が本の世界のようになって欲しい、と願うようになった。
 皆、自分の言うことをきいてくれる。本当の世界の中心は、自分なんじゃないか。 
 人に尋ねられるごとに可愛く見せる。知り合いの大人の人が居れば、ねだる。ミクの思惑通りに、人は動いていった。

 「りんご、あげるよ」
「あら、頂くわ。ありがとう」 
子供に貰ったこのりんご。
食べたら仮面が出る。仮面は、顔から離れずに、離れずに貼り付いている。
だが見えるのはミクだけ。触れるのもミクだけ。
 侵食していくの、仮面が。
 そんな苦しいミクの叫びは遠く、誰にも伝わらない。