二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: VOCALOID!  【 うっち〜様リク終了! 】 ( No.70 )
日時: 2010/06/21 18:39
名前: 真飛 ◆v9jt8.IUtE (ID: SG7XrUxP)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?351687

 「いや、いや、やめてよッ……!」
悲痛の叫び。夢の恐怖で出せる声と言えば、これくらい。それ以上になると、悲鳴。
 顔を抑えて、泣きながら、苦しそうに寝言を言うミク。
ミクの小さな、小さな叫びに、誰も気付かない。その叫びが終わったのは、朝、だった。

 十二歳の頃に子供に貰ったりんごを食べて以来。恐ろしい夢を、毎日見るようになったミク。そのせいで、目の下にクマと、毎日の疲労が顔にまで出ている。 
「女王様……今日は庭園でパーティが」
「ああ……そうね。そう言えば、歌う人を用意してないわね……」
とミクが少し考えていると、ミクの周りに居た使用人が、「それでは、町に出かけましょうか」と言う。
 ミクは使用人の言葉に、無言で頷いた。
 
 ——そして、二十分後。
ミクは濃い緑のリボンがある、ミント色のドレスを着て、鏡の前に立っていた。
 「っ!? 何でッ、こんなに……」
鏡に映る自分の顔を見て驚くミク。りんごを食べて、数日後くらいから、鏡を見なくなったから。
見てると、仮面に呑み込まれそうで怖いから。
 だが、今のミクの顔だって、仮面に呑み込まれそうなのだ。
顔は、左目の周辺しか鏡には映らない。いや、仮面で隠れているのだ。
 ミクが涙目になりながら、『何で? 何で?』とか細く、少しの音でも消えそうな声で呟いているその時。
「お嬢さん、大丈夫。生き残れる術なら、あるよ」
小さくて、可愛らしい声。だけど、可愛らしい故に、怖い声。そんな闇に包まれた声がミクの後ろから聞こえる。
「ははは、驚いた? 僕は夢だよ。君の体、少し貸してくれるなら、君を生き残らせてあげる」
「本当なら、貸してあげようじゃないの。私の体」
黒い物体——夢の言葉に、顔が自然に歪んだ笑顔になるミク。その笑顔のまま、ミクは夢との取引を成立させた。
 夢は、笑いながら、「取引成立だね。じゃあ、入るよ」と言って、ミクの体に入っていった。
 
 「生きるために心を失くすなんて馬鹿な奴」
ミク——もとい夢は、睨んだようなその目つきで言う。誰も居ない、一人の部屋で。