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Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第四話更新! コメ求む! ( No.20 )
日時: 2011/03/05 22:21
名前: 風 (ID: L0.s5zak)

夢へ
年取ったんだよぉ(苦笑
結構美味しいですかぁ?
是から夢にとってもっともっと美味しくなっていくかもしれないですね!
花太郎含めた四番隊は近い内に活躍あるかも★
はいはい,タイミング見計らってたんでしょう?


BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第二節
第一話「巨大なる暗雲」


幕は切って落された____
幾つもの感情の渦が巻き上がり交錯する。
力が有るのなら剣を取れ……意思があるのなら刃を振え



               _____「声ガ聴こえル—————


戦いえ誘う慟哭の様な…嗚咽の様な叫びが____聞こえ続けるんだ。


===============


榛原翔兵は自らの自室の和室の畳の上……光の差し込む窓口に手を置き黄昏て居た。
その表情は何処と無く空ろで井上織姫を失った喪失感の強さを物語る。

コンコン…


「_______」

ズザァ…
「お邪魔するね?」


ノックする音が静寂の間に響き渡る。
外は,瓦礫の山…井上織姫の死,如何に死神達が後始末や内部工作をしていても大騒ぎだ。
炎上した家々…壊れた車体,器物損壊…住処の喪失…生き残った者達は絶望と怒りに声を荒蹴る。
然し,此処は静寂だ。
そんな中にノックの音が響いても彼は少しも反応しない。

ノックの主は相手の了承を受ける気は無く襖を開ける。
其の先に居たのは夕焼け色の瞳の淡い黒髪のポニーテルの可愛らしい顔立ちの少女。
無論,彼女もまた彼が力を使い手駒とした存在。
思念樹と呼ばれた断崖と呼ばれる世界に存在するはずの本来人ではない筈の物。
それが彼女の肩書き____


「____茜雫……美津浦茜雫で御座います」

ペコリと自己紹介して彼女は女性らしい居綺麗な所作で部屋に入る。
翔兵は気にすることも無く肌蹴た和服で外を見詰める。
燃え上がる街を見ているわけじゃない。唯,遠く彼方を…
彼女の存在に気付いているのに彼は何も応えようとはしない。

そんな翔兵に焦れた茜雫は口を吊り上げ嫌そうな顔で声を荒けて言う。


「な〜にぃ!?あたし達の主なんだからもっと泰然自若としててよぉ!!
確かに付き合ってた女性失ったのは辛いだろうけど悲しんだって何したって…」

「分ってる————
俺の力でも戻ってこなかった______
分ってるんだ,分ってる……分ってるから今は少し落ち着かせてくれ」

「………仲良かったんだね?」
「良かった……多分,アメリカに行ってた時付き合った女と同じ位」
「___ゴメン」


彼女の言う事は的を射ていた。
悔いた所で生き返りもしないし魂すら消えた死人が応えるはずも無い。
だが,所詮人間には感情を整える時間と言うのが必要な物だ。
過去を懐かしむように思い出しながら心を落ち着かせる翔兵に茜雫は反省したように小さく言った。




                     ゴメン____と…………



そう言って部屋を退室する茜雫の元に二つの影が有った。
二人とも草冠ではない。1人は紅い瞳の鋭い目付きの何処か空虚な遠くを見た様な男。
もう1人は,如何にも闊達そうなモスグリーンの大きな目の女だ。
二人に共通して言えるのは色白で服装はボロボロ,そして髪の色は淡い紫がかった黒だと言うこと。
詰り,共通点が多いのだこの二人___茜雫は訝り二人に問う。


「あんた等,誰?」

「あたしは嵐でラン…コイツは弟の焔でエンって言うの♪
愛したお姉さんの付けた名前とは違うんだけど…」
「姉さん…彼女戸惑ってる…色々余計な事を言いすぎ」


「悪かったわね!」
「何で,姉から貰った名前を?」


「気にしないでくれ……僕達の今の状況にあって当然の問題なんだ」
「貴方達の名付け親って死神?」

沈黙が走る。
彼女,茜雫はその何も考えて居なさそうな表情の割りに慮りの感情が濃く
女性らしい細やかな対応と勘の鋭さが有る。
彼女は彼等の問題の深い部分に足を踏み入れてしまったことを理解する。
彼等の名付け親は朽木ルキア……そう,死神なのだ。
彼等は流魂街時代,ルキアが恋次達に会う前にルキアと寝食を共にした仲だったのだ。
二人は口を紡ぐ。

『やばっ!あたし,地雷踏んだ…』

トン___

二人の神妙かつ尋常ではない顔に茜雫はタジタジする。
其処に茜雫の後から1人の男の手が差し伸べられる。

「茜雫___君が気に病む事でもない。
誰だって,地雷の一つや二つは踏まれることが有る物だ。
今後気をつければ良い…」

「アンタ…」

嵐が睨みつけるようにして現れた草冠に言う。
草冠は務めて冷静に言う。


「俺達は生き返りたいと彷徨い一箇所に集合した同志だ」
「それはそうだ……」

草冠の言葉に嵐を諌めるようにして焔が言う。
草冠は続ける。


「俺達の…彼女は違うかもしれないが……目的は恐らく同じだ。
調和を乱し態々敵に隙を造るような真似はやめよう」


思惑は違うし共通の目的か否かも疑問符が実は残るが,
護廷強いては死神に復讐を望む者として三人は一蓮托生で来た。
其の中,唯一多少なりとも死神に好意を抱いていた茜雫は戸惑う。
そんな茜雫の様に無論その草冠の言葉に熱を感じる嵐は気付くはずも無い。
気付いたのは勘の鋭い草冠のみだった。


彼女等が去った後,草冠は茜雫を追う。

「何処へ行くんだい?」
「織姫って子の所に行くの…どんな表情であの人の下から消えたんだろうって…」
「_____さっきの話だが君は少し違うみたいだな」


「うん,死神には助けられた—————会話はしなかったけどね?皆,世界の為に頑張ってた」
「あぁ,多くの死神は世界を本気で思ってる」

「分ってるなら……」
「だが,俺達はこの憎悪を止める術を知らないんだ……」




                           ____悲しいヨ



草冠の感極まった声の言葉,悲しいと茜雫は海に沈んだように言う。
歩は止めない。彼女の遺体を安置してある場所に強い意思を持って進む。
恐らくは彼等も一度決めて歯止めが効かなくなったのだろうか……
逆恨みだと言う可能性も理解しているのだろう……でも,争う事しか出来ない。
思わず口を付いて出る…



「あぁ……悲しいな,だから俺達は世界の膿として滅びる運命なのさ」
「分らない…全然分らない」


「_____そうだろうな。実は俺も分らない」


不思議と茜雫はその言葉に付け入る気にはならなかった。
何が分らにと言っているのか分らなかったから…聡明な彼の考えが読めなかったから。
地下へと進む階段を抜けた先に服を着たままの女性の遺体が有った。


「あれが織姫…」

「そうだ…翔兵が愛した女の亡骸だ」
「とても幸せそうなお顔………あたしあんな顔で死ねたのかな?」

「俺は苦痛に呻き俺を一度殺した屑老人共を鈍いながら逝った」


織姫は彼の本心を知り傷心しながらも最後に本当のことを知れて喜んでいた。
草冠は唯,氷輪丸の使い手が二人居るというだけで親友と戦わされ,
敗北し最後には四十六室専属の暗殺部隊に複数の刀傷をつけられ断末魔の叫びを上げて死んだ。
死様は天と地ほども違う。
抱いた感情も……
沈黙が走る。其処に,寒暖を降りる音が響き渡る。


カツン

カツンカツン_____「誰!?」


茜雫が後を振り返る。


「お前等こんな所にいたのか?」
「ゴメン___」


「いや,何時までも囚われてちゃ行けねぇな…本当」
「だったら………」


「この場所とは彼女事盛大に別れようと思うんだ」
「え?」


「お前等,外に出ろ。時限爆弾の発動までには十分間だ」


「えっ?それって……」
「————旅立ちに重荷は邪魔だ」


現れたのは翔兵だった。
恐らくは既に嵐と焔は退避させてあるのだろう。
そして,彼もまた人間の体を脱ぎ捨て逃れる準備をする。
全ての過去を清算する為にこの場所を焼き払う覚悟を彼はした。
茜雫にとって悲しい決断だが否定する気にはなれなかった。


「行こう茜雫____何時まで此処に居ても答は見付らない」
「貴方の…私の?」
「皆の…」


草冠は立ち尽くす彼女に静かに諭す。
彼女は目を見張り草冠を見詰め彼の後を辿った。
途中何度か榛原の方を振り向きながら…



「さよならだ……本当に」



                   
                           安ラかニ眠レ———————————




カチッ…



秒針が動き始める。
彼がこの屋敷から肉体を脱ぎ捨て脱出するのに掛かる時間は凡そ三分。
七分もの余裕が残る。
其の間彼は長い時間織姫の顔を見詰めた。十分後には原形も留めなくなる死体。


「もう,振り返らないと決めた……」


彼は一筋の涙を流してそう言った…




                          ∞END∞



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