二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第九話執筆中 ( No.37 )
日時: 2011/03/21 02:35
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: oq/GQDEH)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

BLEACH 刹那の時間【葵】
小休止:死亡キャラ台詞集 井上織姫編

BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第一節
第三話「榛原翔兵 Part2」

「はい♪」

「もう,四年に成りますね?」

「凄い!其処まで覚えてるんですか!?」

「あっ,ははっ♪じゃぁ,クールな感じの奴頼むよ?」

「くーくー」

「___榛原君」

「____大好キ♪」

「____黒崎君ハ太陽で榛原君は…オアシスかな…」

「______詰リどっチモ一番何だよぉ♪黒崎君はあたシを照ラシてくれる明るイ存在で
榛原君はアタしに新しい風を与エてクれる生キル為の潤いで————結婚すルンなら……やっパり」

「おかえり…今日も一緒して良い?」

「榛原君!?」

「待ってよ!?死神さんの霊圧だよ……雛森ちゃんのだ………なんでそんなに過敏なの!?」

「____何で?え…?」


BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第一節
第四話「榛原翔兵 Part3(嘘吐き」

「あっ,榛……原く…ん?」

「凄い辛そう…あたしが死にそうなのがそんなに悲しい?」

「もう良いよ…有難う……是が榛原君の本心なんだね」

「大丈夫だよ,君には草冠君が居る………あたしね,翔兵君が昔から嘘付いてたの知ってた。」

「「榛原君は優しいからね…いっつも辛い事や大変な事が有ると大丈夫だとか嘘付くの…
でも,分ってたよ…何かを強く憎んでること…そして,確信した。
大きな存在に復讐することを誓っていたんだね…」

「復讐を攻めはしないよ…榛原君の事ちょっと浦原さんから聞いたんだ…
一族を皆殺しにされたのに運良く生き延びたんだって…
あたしだってきっとそんな目にあったら復讐をする…でも,勝てる見込みのない復讐で死んで」

「そう………あたし…死神の人達好きなんだ。そして,大切だって思ってる。
でも,榛原君のことはもっと大切で………だからお願い」

「 ありがとう アリガトウ サヨウナラ_____」


〜あとがき〜
あっさり過ぎて感情移入も出来ない…様な気がする。
もう少し真面目に書くべきだったかなぁ(汗


BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第二節
最終話「全てを蹴散らせ!!」


虚圏___
ラス・ノーチェスは中央の巨大な円柱状の塔を中心に十刃の手持ちである宮が
等間隔に並んでいる以外と整った造りの城塞だ。
そのラス・ノーチェスの中央塔の地下,翔兵により培養液の入った幾つかの水槽が設置されていた。
死んだ魂の断片を収集し再構築する翔兵の一族の持つ禁忌の力「死狂」を翔兵が応用させた物だ。
幾つかの水槽は硝子が割られ既に何人かの新たなる同士が翔兵の軍門にあることが分る。

そんな中,一人の細面で勝気そうな瞳に妖艶さの漂う容姿端麗な男が顕現していた。
男は見慣れない風景に暫し逡巡するも自由の王たる自分を外界と遮断する鬱陶しい壁の存在に
心底を腹を立て薄い硝子をそれ程の力は必要無いと思えるほどの力で破砕させた。

「ここは———」

地獄で戦いの日々に明け暮れていた性で記憶も薄れているが
見慣れていないだけで確かに見た事は有る風景だった。
彼の居た地獄では魂の大きい者
詰りは霊亜圧が大きい者の慟哭が形となって空に映し出されることが有るのだ。

「虚圏」


男は記憶を手繰り寄せ数秒,黙考しその答えに辿り付く。
詰りは未来永劫の地獄から自らが逃れられたのだと理解する。
瞬間,地獄との永久の契約の証である鎖の有無を確認する。
それらしき物は存在しない。そもそも存在したら彼は直ぐにまた地獄に送られているのだ。
未だに存在できているのが何よりの証拠だ。男は顔を手で覆い
目をギラつかせ残虐な笑みを浮かべながら甘美なる開放感に悶えた。


___地獄
現世でもない戸魂界でもない虚圏でもない…深遠の闇成る者達の強制収容所。
一見,其処は空が灰色で荒涼とした所々意図的に隆起したような丘があるだけの
別段恐ろしい場所に見える要素は無かった。

然し,日夜其処では現世で戸魂界で罪を背負った者達が永劫の苦痛を強いられている。
苦痛と恐怖に怨嗟の喚きを揚げながら生きる気力を失う多くの者達。
クシャナーダという地獄に堕ちた住人達では絶対に勝利できぬ番犬共に日々追われ
完全なる死叶わぬ地獄で死と同等の苦悶を重ね続け続け
気力も体力も疲弊し殆どの者達は動く事も無い。然し中には絶対に勝てぬと分っていても
力が在ればと言う一寸の望みに賭けクシャナーダに体を砕かれる毎に
自らの霊子をより戦闘向けへと特化させて行く者が居る。


その者達の代表格たる黒い先端に凹凸の有る変った形の長刀を使う長身痩躯の男。
今日も自らの進化の限界を感じながら地獄からの脱出を遂げる事の出来ない無念を
半端に力をつけた新参者相手に叩き付ける。新参者はその男の力を理解できず挑発する。
霊圧の大きさも彼の噂も地獄の深遠で肥大した物で表層部に居る小物共は理解する由も無いのだ。

「はっ!そこの美形のアンちゃんよ…」

挑発の台詞を言い終えるより速く男の体には剣戟の後と言うには
可笑しすぎる亀裂が入る。男の黒き刃がその挑発した男の体を一瞬にして真っ二つにした。
そして,真っ二つにされた男の体は見る見る間に腐朽して罅割れて行き男は喘ぐ間もなく砕けた。

「雑魚が」

そう,消え行く男を無感情な瞳で男が一瞥すると同時に圧倒的な力の男の体に異常が発生する。
男の体が少しずつ透けて行くのだ。遠目に見ても刻一刻と透明化して行くのが分る。
とうとう,自分の体も真の限界が来たのかと勘違いしたその白い布を纏った長身痩躯の男は
狂気に歪んだ笑みを見せ自嘲する様に高笑いした。
    

          —————地獄の者達にとって一つの脅威が消えた瞬間だった







数秒が立った。
何かが可笑しい事に男は気付く。自らは散開した霊子。詰りは意思無き存在と化した筈だ。
なのに何故だ。
確かに意識はあり確実に周りには景色が広がる。それも地獄の深遠まで踏破した彼の知らない風景。



『地獄じゃねぇ?』

怪訝そうに眉根を潜めると目の前に待っていたと言う風情で見慣れた男が颯爽と現れた。
自分の事を地獄の王だと心酔し実は自らに利用されていただけの男だ。
朱連と言う。
男は繁々と戸惑う自分を観察する朱連に腹を立て左手で水槽に思い切り拳を叩き付けた。
鈍い振動と共にピシリと巨大な堤防に小さな米粒ほどの穴が開く音がして
其処から少しずつ硝子は砕けて行き終には決壊する。


「君も…か」

繁々とした表情で朱連がコクトーに言う。
それは朱連にとって誰も知る顔の居ない場所で昔馴染みに会った時の様
な安堵感が有ったのかも知れない。
最も常に浮かべるその人を小馬鹿にした表情がそう思わせないのだが。

「どうやら,何かとご利益が有るらしいな」

コクトーはバツの悪い表情であえて朱連から視界を外して言う。


「コクトー,君とご利益が有るとは私達は地獄の王に相応しいと言う事だね?」
「どうだかな?てめぇは唯俺に利用されてただけだ…」

               
朱連はコクトーの言葉に目を見開き自分にも強者の素養が有ると言っているのかと色めき立つ。
元々自意識過剰で自分の強さに惚れている節の有る朱連は自らより上段者である彼を嫌う。
コクトーはと言うと余計な事を言ったという風情で反省しながらあの時の反目しあった日々を
追憶し拡大解釈をするなと言う風情で言い捨てる。
その言葉にやれやれと朱連は肩を竦めるのだった。
さして仲の良いわけでも二人は喋る事も無くなったし是からどうするかと思考しだす。
沈思黙考を繰り広げる二人の静寂の空間に一つの足音が響く。


「誰か居るのか!?」

コクトーは自らの強さに自信が有る故に悠然とし少し劣る朱連は自覚しているのか落ち着きを無くす。
其処に現れたのは朱連もコクトーも知る男だった。


「君か…地獄に始めて来た時の事を覚えているかい?」

「やれやれ,あの時は遠い過去の事だよ朱連?」


現れたのは桃色のウェーブ掛かった髪形の優男,ザエルアポロ・グランツだった。
朱連は自らより格下と見下す男の顔を見て楽しそうに指差し侮辱するのだった。
ザエルアポロはと言うと過去の事実は受け入れているらしく然程怒った様子も無く
唯,悠然と過去の自分とは違うのだと言ってのけた。


______________


一方,現世の浦原商店ではその頃戸魂界から派遣された隊長格達を交え話が展開されていた。
井上織姫の死亡と言う凶報にやちるとルキアは瞠目し
行き場の無い怒りをぶつけていた一護の気持ちも理解せず申し訳ないとルキアが謝る。
決別の悲しみを表には出さないものの白哉や剣八も何か含みの有る表情で思う所が有る様だった。


「許せぬ…翔兵が井上を!?」

「それは考えられねぇと思うぜ?流石に……あんな仲良かったのに…」

「世界はそんあ単純なもんでもねぇよ…俺ぁ,面倒くせぇそう言うのは大嫌いだがな」


暫しの沈黙が走る中ルキアが翔兵に対して怒りを顕にする。
まだ,翔兵が織姫を殺したのかどうかは分らないがそうだとすれば許し難いことだったからだ。
それに対して翔兵の肩を持つようにジン太が介入するがルキアも最初からそんな事は知っていた。
翔兵が織姫に手を掛ける可能性の低さも一護達の話の一部始終からも極めて低い。
そんな中,子供をあやすのは慣れていると言った様子で剣八はジン太に言うのだった。
普段,戦いに飢えた短絡的な狂人と認知されるその男が酷く理知的に見えた。


「剣八…」
「別に同情してる訳じゃねぇぞ?勘違いすんなよ一護…
俺が此処に居るのは現世にもゼッテェ強ぇ奴が来るって確信があるからだ」



何時もの剣八らしからぬ言動に怪訝な顔をして名前を呼ぶ一護。
それに対して面倒そうな態度ではぐらかし言い訳をする剣八が妙に面白かった。
無論,その言い訳が本心が大きく入った物であるのは分るが…
他人の心配をしてくれる様な人間なのだなと少し関心する一護だった。

「分ってるよ」


剣八とは付き合って長い一護だがまだ見た事が無い表情があるのだなという風情で少し笑顔を見せる。


「あ〜っ♪いっちー少し笑ったあぁぁ♪」
「うっうるせぇ!引っ付くな!!」


一方,闊達さの無い一護を何時までも心配そうに見ていたやちるは
その一護の一瞬の表情の変化を見逃さなかった。
空かさず元気付ける好機と一護に抱きつく。
それを一護は全力で振り解こうとするが存外に彼女は怪力で中々剥れてくれない。
先程までの暗い雰囲気が嘘だったように周りを転がり周る大乱闘となり部屋は少し和やかになった。


「全く,君はドタバタするのが性に有っているのか黒崎」
「うるせえぇぇ!助けろ石田あぁぁぁぁぁ!!」


それをニヤニヤと観察していた石田が眼鏡を指で持ち上げ嫌味を言い放つ。
そんな石田に一護は助けを要求するが石田は承諾した様子は無く続ける。

「やれやれ…クインシーが態々死神崩れを助ける義務があるのか?」

自分の宿敵である筈のお前を何故助けると…苦しんでいる姿を見ると気分が良いと。

「なっ!?何だよ…ツンデレか?分った…新手のツンデレだなこの野郎!!」
「………反吐が出る」

それに対して何だかんだ死神の敵だとか良いながら長年つるんだ情で
何時も一護の肩を盛ってくれる石田のツンデレ行為にしか見えないと一護は反論する。
それが余程癪に障ったのか石田は自らの獲物である銀嶺孤雀を冗談交じりに解放するのだった。

『あれ程親しんだ仲間の死っス…立上るには時間が掛かる事でしょう…
でも,この子達なら立上れると信じられるっスね』

そんな石田達の慣れ親しんだ者同士だから出来るコミカルな付き合いを
遠目から過去を懐かしむような瞳で見詰める浦原は彼らの是からの長い人生が
喜ばしい物になる様にと望むのだった。




_____________

___虚圏
中央に聳える一際大きな石造りの建築物の一角。
壮年に取り掛かろうとしている日本人離れした堀の深い顔立ちの気だるげな無精ひげの男が
壁に背を凭れて静かに瞑目していた。そんな男に忍び寄る影が有った。
其の影は気だるげな男の真上で止り自らの獲物である大斧を翳し男目掛けて降り立った。

強大な斧は巨漢である男の自重も加わり強烈な破壊力を見せ付ける。
気だるげな男の座っていた場所は既に陥没し壁も吹飛び外が見える。
しかし,男は其れを余裕で回避して目の前の恰幅の良い傷だらけの老獪を見詰めていた。

「影が丸見えだったぜ虚圏の王様?」
「何が言いたい小童」

「奇襲するならもう少し上手くしろ…」

後へと飛び退りながら男は老獪へ指摘する。
虚圏の追うと評された歴戦の勇と呼べる容姿の老獪は怒気の篭った声で何が言いたいのかと尋ねる。
其れに対し男は相手の琴線を狙うかのような発言をする。

老獪は目の前の男が嫌いだった。
千年以上の長きに渡り虚圏全土を平定し掌握していた正に王だった。
しかし,その王たる自分が藍染の組織するアランカルの中では二番…
目の前の何の覇気も感じぬ男が一番。信じ難く許しがたい真実。
あの時からこの目の前の男が十刃のナンバーワンに選抜された時から
一度たりとも目の前の男より自分が劣るとは思った事は無かった。
其れは驕りでも見誤りでもないと本人は信じている。憤慨する老獪は斧を振り回す。
それを男は易々と回避しながら後へと回る。

「確かにアンタは強いよ尊敬してる」
「黙れ!」

後ろに回り老獪の首筋に手を当て尊敬の念を口にする男。
老獪は心にもない事をと斧を振い男を振り払おうとする。
男はその一撃も軽く往なし素知らぬ顔だ。
そんな男の反応についに堪忍袋の限界を突破したのか老人は渋面を造り,
斧に黒き霊圧を滾らせる。
その力を男は知っているが目の前の男が刀剣解放しない状態では出来ない能力の筈だ。
老いの力…
即ちは物や肉体・霊体に宿る魂の有する形を留められる猶予時間を過剰促進させ殺す力。

「レスピラの究極の強みは相手の霊圧に関わらず相手を蝕み確実に殺すことが出来る事だ」
「何じゃ…ワシの技の説明か…腹立たしい」

しかし,普段なら自分の体から噴出する様に使う其れを老獪は斧に纏わせるだけだった。
男はそれを元に一つの推測をする。
目の前の巨漢は死から復活する淵で本来老いの力の発生源である
王冠以外の自らの武器である斧からも老いの力を発する能力を身に着けた。
しかし,斧の有する老いの力は噴出させ遠距離攻撃を出来ぬではないかと。
技とらしく相手の力の解析をして豪胆で短気な老獪の攻撃意欲を掻き立てたのは
それを立証させる為だった。

老人は男の目測どおり怒髪天し床を蹴り男に急接近した。
確信した。目の前の巨漢はこの状態ではレスピラの力を遠隔操作できないと…
空振りした斧が轟音を上げて床を抉る。抉られた床は一瞬にして朽ち果てた。
朽ち逝く速度が以前より遥かに速い事に男は瞠目する。
詰り斧による老いの力は攻撃範囲こそ狭い物の触れれば相手を一瞬で朽ちさせることが出来るのだ。
以前のレスピラは当っても少しずつ当った場所から腐朽していくので
手や足に当ればその四肢を切断し逃げ延びる事ができた。
今回の斧の力は其れを許さない。圧倒的な老いの速度が目玉と言う事だろう。

「ふっふっふ…愉快愉快♪どうじゃ…幾らお主とて触れらば一瞬で灰燼と帰すぞスターク!!」

老人はスタークの額に少々滲む汗に気付き挑発する。
スタークは虚圏の王を持つめどうやったらこの不毛な争いを終了させれるか逡巡する。
そんなスタークにお構い無しに老人は斧の鎖の部分を持ち振り回し今度は遠距離から
スタークを狙いだす。
スタークはその飛来する斧を悠々と回避し鎖の部分には老いの力が宿っていない事を確認する。


『好機』


激突した柱を一瞬で消し去り巻き上がる粉塵すら消し去る巨大な斧。
巨漢は忌々しげに舌打ちし次の一撃の備え鎖を手繰り寄せる。
スタークは「来いよ」と挑発する。老人はスターク目掛けて斧を放る。
回避し伸び切った鎖を自らの剣で断ち切る。変な力が入った性で斧は有らぬ方向へと飛び
老いの力を失い床を回転するように滑りながら壁に激突した。


「是で刀剣解放も出来ないな?」

巨漢の斬魄刀の様子を繁々と見てスタークは言う。
刀剣解放は有る程度以上所有の武器が原形を留めていなければ出来ない。
詰りは武器が両断されたり欠損すると出来なくなるのだ。
怖い技は封じた。詰り是で勝負は付いたという事だ。


「くっ…何故じゃ?何故勝てぬ!?」
「………知らないね。別に俺は勝ちたくは無いしアンタが弱いとは思ってないが…」
「黙れ小童あぁぁぁ!!」

目を丸くし虚圏の王と称された男は嘆く。
床に膝を付き茫然自失として…其れに対しスタークは忌憚無い言葉を言う。
彼は強くなど成りたくは無かった。弱くさえなりたいと思った。
目の前の男なら自分を殺してくれるんじゃないか…
こんな孤独で詰らない男の性を終焉に迎えてくれるんじゃないかそんな期待さえしていた。
巨漢は尚も怒りを剥き出しにする。
スタークは目をツイと細めて過去でも見るかのような儚い瞳で言う。


「敢えて言うなら…アンタは直ぐ熱くなって周りが見えなくなる性質だって事だなバラガン陛下?」


自分を殺すことが出来ないのはその傲慢さと直情的な性格ゆえだ。
だから実力が有るのに自分を殺すことも出来ないのだと…
バラガンは敵わないと舌打し憧憬にも似た目でスタークを見詰ていた。
其処に一つの足音が響き渡る。


「やれやれ随分暴れた物だな」

「ハリベル」
「榛原翔兵から呼び出しだ…攻め込むらしい」

「ふん…」

周りの凄惨な光景を見て足音の主は冷静な口調で良くもやったものだと
ことの主犯二人を睥睨し溜息を漏らす。
凛々しい褐色の肌のスタイルの良い美女だ。
スタークはその女の名を呼び何が有ったのかと言外に促す。
ハリベルと呼ばれた女は翔兵が招集を掛けたと短い言葉で説明する。
それに対して榛原翔兵が気に入らないバラガンは鼻を鳴らすのだった。


一方,同じラス・ノーチェスの中央搭,此方は久々の再開に含む所が有る様だった。
隻眼の蟷螂の様なという表現がしっくり来る様な顔立ちの
シャネルのマークの様な奇抜な武器を掲げた大男と
片方もまた隻眼ながら此方は清楚かつ穏やかな佇まいの美男子。
かつて十刃と従属官と言う主従関係だった二人だ。

「何だ…てめぇも復活しやがったのか?」

隻眼の巨漢が嬉しくも無さそうに言う。
其れに対して照れ隠しだと理解している清楚な佇まいの男は余り気にした様子も無く言う。


「えぇ,ノイトラ様一人では心配でして…」
「あぁ?てめえより俺の方が強ぃ,弱っちぃてめぇなんざ邪魔なだけだテスラ」

「相変らずの様で安心しました…」
「てめぇのその従者振りも相変らずだ…」


ノイトラはテスラの心配性な言葉に満更でも無さそうな反応をしながら憎まれ口を叩く。
過去の残像が脳裏を過る。
後,数瞬警告が早かったらテスラはあの修羅の攻撃を回避しノイトラが其れを助けられていた。
憂鬱な表情でテスラを見詰ると
テスラは一旦死んで悟りの境地にでも居たって居なくて安心したと微笑んだ。
ノイトラもまた,目の前の男が相変らずで安心したと嘆息しながらも笑みを見せた。


「行きましょう…榛原様がお呼びの様ですし」
「あんな奴に様とかつける必要はねぇ!」

「私の勝手ですよ…」

テスラが榛原に様等と言う敬称を付けている事に
何か腹立たし気な感情を覚えてノイトラは説教する。
其れに対してあくまで自分の勝手ですと
変な所でプライドのある彼らしい言い分をテスラは返すのだった。
そう言えばこんな奴だとノイトラは歩きながらボンヤリ思うのだった。


榛原翔兵の居,其処には既に粗全ての同胞が集っていた。
ラス・ノーチェスに入るまでは存在しなかった筈の物も何人か居る。
どうやら,翔兵の力によって十人以上新しく復活した様だ。
スタークはそう状況を把握する。翔兵の演説も最後の方で翔兵の語気に熱を感じる。


「熱いな…」
「お前が冷血過ぎるからそう感じるんだろ?」

「かもな…」

周りの熱気に当てられてついふら付くスタークを優しく抱えてハリベルが愚痴る。
そのハリベルの愚痴に嘆息しながら首肯するスタークだった。


「お前等は自由に殺したい奴等を殺せば良い!!圧倒的な戦力で害獣どもを蹴散らせ…」






                   ____死神共,全てを蹴散らせ!!!




「復讐の刃達よ!!」


何一つ縛りなど無い。
自らの組織したこの集団と死神達とでは圧倒的な戦力の開きが有る。
誰を殺すも自由だ。恨みをぶつけるのも因縁を晴らすのも…
唯,弱い癖にのうのうと生きている屑どもを弾圧するのも…
敵に情等要らない。
その容赦するなと言う言葉は多くが破面,即ち虚であり死神に恨みが有る者達には
魅力的過ぎる言葉だった————




その演説の終わりの瞬間に脚を踏み入れたノイトラの脳裏には剣八の姿。
沸々と復讐の炎が沸き上がっていた。




                          ∞END∞


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