二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Prologue ( No.3 )
- 日時: 2010/06/01 18:20
- 名前: 日向 (ID: zRIiH/oV)
天気は快晴。5月下旬の今は暑いのか寒いのかあやふやな時期。そんな中、あたし、中村リクは——。
「ゴォォォォォラァァァァァ!!待てぇぇいいっ、待たんかソコ、中村リク!!」
「待てませんっ」
只今鎌を片手に持つ風紀の先生に追いかけられ中です。
「そんなので追っかけられて待てるワケないですよっ」
「今日こそっ・・・・・・今日こそその風紀違反のペンダント!!外してもらいますっ」
「だからこれは絶対に外しちゃいけないって何度も——」
「だから無理矢理外してあげるのよっ」
「ひぃっ!それは御免蒙ります!!」
ギラリと黒く輝く鎌と先生の眼鏡の鋭い輝きであたしは悲鳴を上げてスピードを上げる。
先生の言うペンダントは、あたしが今首に提げている金色に光る平らのペンダントリング。
このペンダントは——・・・亡くなったお母さんが持っていた大事な形見だし、アイリ先生との約束があるから絶対外せないの!!
アイリ先生はあたしが8歳まで養護施設で働いていた女性。とても綺麗であたしのお母さん代わりで大好きだった先生。
何故ペンダントを外せないかは昔の約束があるからだ。
——それは、まだあたしが3歳だった頃。アイリ先生がつみきで遊んでいたあたしにあのペンダントを掛けてくれた。
『リク、これは貴女のお母さんのペンダントよ。これは、貴女を危険から守ってくれる大事な【お守り】よ』
『おまもり?』
『そう。絶対に寝る時とお風呂に入る時以外には外しちゃダメよ。外したら、大いなる力が貴女を潰してしまうから・・・・・・』
その時の記憶はアイリ先生と過ごした中でとても鮮明でリアルで何時思い出しても身震いしてしまう程だった。
好奇心で外そうと思ってもその時の言葉を思い出すので未遂。しかもその翌日にはプチ不幸が起きる。
その所為かどの学校に行っても風紀の先生に追いかけられるわ、ワルい生徒達に目をつけられる。何より——
「リクー、ファイト——!」
「がんばれー!予鈴鳴っちゃうよー?」
「毎朝頑張ってるねー!今日ジュース奢るねー!」
何より、目立つ!!目立つ事が嫌いなあたしにはとても嫌だ。入学して1カ月で既に毎朝恒例になった追いかけっこ。
それでクラスの女子に応援を受けられるがあんまり嬉しくない。だって、みんなあたしの逃げ足がどんなに速いか興味があるから!
あたしだって、好きでこんな事しているわけじゃないのに・・・・・・・・・。何で?
その後、風紀の先生を上手く逃げ切ったあたしは予鈴が鳴るギリギリで自分のクラスにたどり着いた。
「つ、疲れた・・・・・・」
机でうつ伏せになるあたしに同じ養護施設で暮す親友の撫子と希がよってくる。
「未来、お疲れ。毎朝大変だね〜」
「希〜・・・・・・あんた何でいつも早く学校に行くのよ〜・・・・・・」
「だって、あたしもあの追いかけっこの巻き沿いを喰らいたくないしね」
「うう〜・・・・・・薄情者〜・・・・・・」
隣で呑気にりんごジュースを飲む希を睨むあたしに撫子は笑いながらあたしの頭を撫でる。
「でも、未来はよく頑張ってるわ。文化祭も4,5週間しかないのに毎朝恒例の追いかけっこしてるもの。私には到底無理だわ」
「あ・・・・・・そうだ、文化祭・・・・・・」
撫子の言葉に6月に行われる文化祭のことを思い出した。それと同時に望みも何か思い出したような顔をする。
「そうだよ、文化祭!!我ら1年B組の出し物、演劇の主役が元気無くてどうするの!?」
その言葉が合図かのようにバシンッ!と希があたしの背中を叩く。
「痛い!!・・・・・・何であたしが劇の主役なの?主役なら撫子か希の方が適任だよ」
「私はお芝居と料理は苦手だから、無理よ」
「あたしも。すぐ緊張するから劇台無しにしちゃうし」
「・・・・・・確かに」
希は活発でスポーツ万能の女子の憧れの的。撫子は大和撫子の鑑といってもいいほどの美少女だが、芝居と料理は壊滅的。
希はすぐ緊張するから何をやってもダメ。撫子は演劇の練習で台詞を読む時全部棒読みと酷い有様。
料理も希は生死を彷徨わせる料理を作るわ、撫子はナスを千切りにしようとか奇抜な発想をさせる。
・・・・・・多分、みんな嫌な予感がしてあたしを選んだと思う。
「それに!リクは中学に何度も演劇部に駆り出されてたじゃん!」
「そうよ。リクが演劇で主役をやったのが十数回以上。とても凄い経歴だわ」
「イヤ、それは何でが知らないけど主役の人が本番数日前に病院送りされてるからでしょ」
同時演劇部で主役をやる人が何故か全員不幸体質で本番数日前には必ず病院送りにされている。
その度にあたしを主役の代役として駆り出されている。・・・・・・そうなる前に事前に台本を渡されるしね!
「ま、リクは頼られたら断れないタイプだしね〜。所謂姉御肌?」
「・・・・・・オイ」
「まあ、ともかく。文化祭も頑張りましょう」
「・・・・・・そうだね」
あたしの諦めた返事と同時に予鈴が鳴り、授業が始まった。