二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

ああ,もう笑うしかないじゃない。 ( No.30 )
日時: 2010/06/08 18:53
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

神様は意地悪だ。



      #03 - 紙飛行機とボク



「おはよー」

 いつもどおりに、僕は教室に入った。いつもは何人か挨拶してくれるのに、今日は誰の声も返ってこなかった。
 そんなことより、教室内の雰囲気が異常だった。黒い好奇心とか嘲笑ばかりが混ざってる、いつもと違うどこか不気味な雰囲気。
 そして——

 ——僕が教室に入った瞬間、みんなが僕をじっと見るんだ。

 今まで喋っていたはずなのに。笑って友達同士で騒いでたはずなのに。
 僕が教室に入ると、男子まで騒ぎをやめて僕を見る。見る、見る、見る、見る見る見る見る見る——。
 ただただじっと、気味悪いほどに好奇心で彩られた無邪気な瞳で。
 なんで? どうして? なにがあったの? 意味わからない。どういうこと? ねえ、なんでみんな僕を見るの?

 冷たい汗が、背中を伝う。なんだかとても嫌な予感がして、脚がここから逃げ出したいと叫び、体がガタガタと震える。
 何人かが、ひそひそと喋り始める。なにを喋っているのか、僕にはわからない。
 虐め? 一瞬そんな言葉が頭をよぎって、……その言葉は消えることなく頭にこびりついている。
 なに——僕がそういおうとした時、それなりによく話す男子が僕のほうへと歩み寄ってきた。

「……っ?」

 男子はそれから、僕の机を指さした。窓際の、一番後ろ。みんなから羨ましがられる席。
 そこには。僕の机の上には。真っ黒ななにかが、ぽつんと置いてあって。それは真っ黒で、ムラのある黒で。

 ——ああ、神様は意地悪だね。

 その真っ黒なモノは——僕の君への思いを詰め込んだ、紙飛行機だったんだ。


**


 にやにやと笑うみんな。ひゅーひゅーと小学生みたいに騒ぎ立てるみんな。僕に近寄ろうとしないみんな。
 どこか嫌なモノを見るような目のみんな。気持ち悪い、と目が言っているみんな。
 その目は、しっかりと僕に向けられていて。三十何人もの視線が僕に突き刺さる。

 そして、君への想い——『紙飛行機』が。

 僕を、僕の世界を。

 ひたすらに、内側から破壊していくんだ。

 机の前まで行った僕は、思わず紙飛行機を手に取った。そして、本当に昨日飛ばした紙飛行機かを確認した。
 ……それは、紛れもない僕の紙飛行機だった。

『レン君、今日もかっこよかった』
『いつか僕も、話しかけたいな』
『告白、できたらいいのにな』
『こんなところでしかいえないけど……レン君、大好きだよ』

 レ ン ク ン 、 ダ イ ス キ ダ ヨ 。
 
 びり。びり。びりっびりびりびりっびりびりびりびりびりびりびりびりびり————

 僕の紙飛行機おもいは、僕の手の中で潰れた。
 粉々になって、ただの紙切れになった。色んな方向に引き千切られて、引き千切られた紙切れは開け放たれた窓から外へと飛んでいく。
 僕の想いは、ただの紙切れとなって壊れて破れて千切れて舞って、どこかへ行ってしまったのです。


「——……初音」


 その声を聞き、僕の目には涙がこみ上げてきた。嫌、やめて。レン君、なにも言わないで!
 そこから先は、レン君はなにも言わなかった。代わりに、みんなの小さな嘲笑が耳に纏わりつく。
 思わず僕は、レン君のほうを見てしまった。なんだかとても怖くて、レン君がどんな表情をしているのか無性に気になって。


「————」


 レン君は、とても濁った目をして僕を見ていました。

 今の僕には、それだけわかれば十分。鞄を床に放り出し、教室から飛び出した。
 涙が、溢れてきた。


 ——世界が、消えていく。

 ——綺麗で、でも残酷な世界が。

 ——僕の涙によって、歪んでいく。

 ——ぐちゃぐちゃになって、何もかもが融け合わさっていく。

 ——昨日までの綺麗な綺麗な、僕の世界は。


 ——もう、消えた。





               #04へ続く*



ミクごめん。頭痛いです。頭痛いくせにパソコンすんなとか突っ込まないでくだs(