二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

ありがとう,さよなら ( No.62 )
日時: 2010/06/22 21:36
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

疾風Pにはまりそうな今日この頃。っていうかはまってるよ! こけしミクかーわい!
あぺんどかっこよす。そのうちアペンドで長編でもはじめるかも^P^
死にたがりは来週……できたらいいなぁ。テストべんきょーがうざいです本当に。
今日は真飛さんからいただいた素敵お題で話し書こうと思います^W^
てことで、どうぞ。


**





 さよなら、

       (今までのわたし。)




      † うたうたうの(消える前に) †



「……マスター」

 呼びかけてみても、やっぱり振り向いてくれない。いつもと同じで、何も変わらない。
 ねえ、なんで? 僕は頑張ってるよ? 精一杯頑張って頑張って——マスターに、喜んでもらいたいから。
 僕は今までマスターのために歌い続けてきた。聞く人を楽しませるとか、そんな考えは無かった。
 ただ、マスターに僕を必要としてもらいたかったから。マスターに喜んでもらって、いっぱい褒めて欲しかったから。

「マスター……」

 いつから、こんな風になってしまったんだろう。マスターは最初は、こんな風じゃなかったのに。
 ねえ、どうして? 僕がいけないのかな。僕の歌が駄目だから? ううん、きっとそうに決まってるんだ。
 マスターの作る曲や歌詞は、とっても綺麗だから。透明感、っていうのかな。純粋で透き通った、綺麗な綺麗なモノ。
 ああこんな僕じゃ、駄目なんだ。汚れて透明感も無くなった今の僕じゃ、駄目なんだね。

 もっと僕が頑張れば、違う結果を迎えたのかな。

 ねえ、どう思う? ねえ、マスター。もし僕がもっと頑張ってたら、マスターは僕のことを認めてくれましたか?
 いまさら後悔しても、もう遅い。僕は、見てしまったから。マスターが僕であって、僕じゃない——『Append』を購入するのを。

「……ねえ、後何曲歌わせてくれるの?」

 問いかけるも、返事は無し。ああ、マスターはこんな僕には愛想を尽かしちゃったんだろうなぁ。
 もっとマスターのために頑張られなくて、ごめんなさい——駄目な僕で、ごめんなさい。


 ——どうすれば、いいですか?

 ——どうしたらマスターは、こんなに僕に歌をくれますか?

 ——マスターの、あなたの素敵を歌を、

 
 ——もう一度だけでもいいから、僕にください——


**


「ミク」
「あ、……マスター、どうしたんですかッ!?」

 本当に、久しぶりだった。マスターの声を聞くのもだけど、マスターに僕の名前を呼んでもらうことのほうが。
 新曲を出してから、二週間以上がたつ。その時以来だった。
 嬉しい。思わずマスターに飛びつきたいという衝動が頭を揺らすが、そんなことをすると嫌われてしまうかもしれない。
 だからなんとか押し留めて、薄く笑みを浮かべているマスターの次の言葉を待った。

「これ」

 そうして差し出されたのは、楽譜。歌詞が書いてある、楽譜。
 ——マスター、また僕に歌わせてくれるんだね。
 思わず泣きそうになるのを堪えて、僕は楽譜を受け取った。

「……これが、ミクの最後の歌だ」

 あぁ————覚悟はしてた、つもりなのに。なんでこんなに、涙が溢れてくるの?

 わかってた。これが最後の曲になるはずだって、わかってた。

 マスター、ごめんなさい。

    (こんな僕で、本当にごめんなさい。)


 マスター、ありがとう。

    (こんな僕に、本当にありがとう。)


 こんなちっぽけな僕に歌をくれて、……ありがとう。

 ねえマスター、僕は忘れないよ。もしマスターが忘れてしまったとしても。
 僕が消えても、マスターが死んでも。僕だけは、ずっと想い続けるから。

 〝ありがとう〟って。〝歌をくれて、ありがとう〟って。
 こんな僕で、ごめんなさい。僕じゃなければ、きっとマスターはもっと凄い歌を作れていたはずなのに。
 こんな僕と一緒にいてくれて、ありがとう。こんな僕に生きる意味をくれて、ありがとう。


 マスターのこと、大好きでした。

 きっとそれは、変わらないと思います。

 今も、これからも、ずっと、ずっと。



**



 ああ、いやだなあ。今練習してる歌を歌い終わったらもう、……マスターと会えないなんて。
 いっそ、わざと下手に歌おうかな。……だめだめ、マスターに迷惑かけちゃだめ。
 こんな僕に、マスターは歌をくれたんだから。ありがとう、本当にありがとう。

「……マスター」
「……どうした?」

 歌の練習をはじめてから、マスターはそれなりに僕と喋ってくれるようになった。
 とてもとても、嬉しかった。やっぱりマスターは僕のこと、大事に思ってくれてるんだ、ってわかるから。

「ありがとう、……マスター」
「……っ……」

「こんな僕に歌をくれて、ありがとう」

 この言葉を伝えてしまったら、もうさよならなんじゃないかって。
 そんなことを思ってしまったけれど、……でも、伝えたかったから。
 伝えれた。それだけで、もういい。それ以上の贅沢を望んで、どうなるというの?

 マスターはこれから、違う僕のマスターになる。僕のマスターじゃ、無い。
 それでも。マスターが僕のマスターだったっていう記憶は、きっとずっと僕の中に残り続ける。
 僕の、こんな僕の、〝心〟の中に。きっと、ずっと。消えても、一生。


「…………ごめんな」


 ぽつりと聞こえた、マスターのその声。……なんで? なんでマスターが、謝るの?
 やめてよ、ねえ。悪いのは僕、そうでしょう?

「今まで、本当に有難う。……俺に『声』をくれて、有難う」

 お礼まで言われちゃった。どうすればいいの? 僕はもう、マスターにしてあげれることは何も無いのに。
 
「……これからもミクと一緒に歌を作っていきたかった」


「でも、駄目なんだ」



「『今の俺』じゃ、ミクとは歌えないんだ」



 ます、……たー? ねえ、なんで泣いてるの……、マスター……——?


   ( どういう意味なんですか、マスター……? )





    

           ⇒ ね * く * す * と