二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボーカロイド】×【イナズマイレブン】 ( No.10 )
日時: 2010/06/11 20:49
名前: *yuki* ◆R61No/hCwo (ID: yjS9W/Zh)

「いやああああ!!!」

「助けて!!」

「やめてくれぇええ」

さまざまな悲鳴が飛び交い、そしてまた、真っ赤な血も飛び散る。
そんな地獄のような光景の中、ただ一人として、笑っている人。佐久間がいました。

その瞳は、すでに光を失っていて。
たくさんの、枯れ果てた死体が映っているだけでした。

「アハハ、アハハハハ。
楽しいよ。こんな、使い方があったなんてさ。知らなかった。」

蹴られたボールは、また、“生き物”にまっすぐ飛んでいき。
すぐに、その命を失くしていきました。

それが、いったいどれだけ続いたことでしょう。

もう彼には、ひとかけらも、“願い”など、ありませんでした。
あるのは、破壊衝動、それだけなのです。

すると———

「ナニをしているのですか。」

佐久間は、ゆっくりと振り向きました。
後ろから突然声がしたことなど、気にもせずに。

「ああ……お前か。
ハハハ、ありがとうな、ここに招待してくれて。」

ずっと前に見たきりの、“夢”がいることにも、驚かずに。

「また会えて、嬉しい……
よ!!」

佐久間はいつもどおりにボールを蹴りました。

この世に自分より強い者がいるはずがないと。
そう思ってた……いや、深く信じていたからです。

しかし。

いつもなら、“的”ははじけ飛んだのに、夢は微動だにもしませんでした。
ボールがすりぬけてしまったのです。

「な、なん、で……」

驚愕を隠せない佐久間に、夢は重い声で問いかけました。

「……アナタの目的はナンデスカ?
破壊活動なのですか?ちがうでしょう。

願いは、希望はどこにいってしまったんですか?」

夢の言葉に、佐久間はビクッとして。

「アリスなのですよ、アナタは。
もしや忘れてしまったのですか?」

「ち……ちがう、そんなこと。
俺は、帝国のために……帝国の……」

佐久間は首を横に振り続けました。
それはまるで、自分に言い聞かせているようでした。

「ウソは嫌いデス。
アナタは合格できなかった。
不合格の、ゴミ。」

けれど、夢はわずかに見える口元をにいっと歪ませて。

「ゴミは、存在していたってしょうがない。」

夢が淡々とそう言うと、急に佐久間に茨が襲いかかってきました。

「?!」

茨は、どんどん佐久間を覆い尽くしていき、
そしてあっという間に……

佐久間の姿は見えなくなりました。

「やめろ!なにすんだ!!ここから出せ!!」

佐久間の悲痛の叫びにも、夢は答えずに、歩きだしながら呟きました。

「アリスには、“希望”が、絶対に必要なのに。
“力”だけでは、なんの意味もない。

アリスでは、ナイ。」

そして、しばらく歩くと、夢は佐久間の方に振りかえり、笑いながら言いました。

「さようなら、一番目アリス。
そこでアナタがやったことの罪を、思い知りなさい。」


出してくれっ———

やっと手に入れた佐久間のこの“願い”は、
もう夢には、

届かない。